1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(591)梅の花のひみつ
「うわあー。これは梅林ですね。」
「これはね,
東京都国立市にある
谷保天満宮の
梅だよ。谷保天満宮は
関東三大天神様として,
亀戸天神,
湯島天神と
共にとても
有名な天神様なんだ。天神様と梅とはとても
縁が
深いんだよ。(梅と
菅原道真については,てくてく
自然散歩No.
510・
511を
参照してください。)」
「梅の花というと,梅干しを思い出します。すっぱくとってもおいしいですね。今日は,梅干しのお話ですか。」
「梅干しについては,またそのうちいつかね。今日は,梅そのものについて考えよう。おっとその前に,花ちゃんに梅について説明してもらおう。」
「梅はもともと日本にあったものではなく,7世紀ごろ,中国から伝わったといわれています。ほとんどの植物が薬として入ってきたといわれています。」
「そのとおりだね。梅は種類がたくさんあって,1月ころから咲き始め,早春の花でもあるね。」
「梅には,蜜もたくさんあるんですね。」
「そうだね。鳥や虫がやってきては,受粉が行われ実ができるんだね。ところで,下の2枚の写真を見て何か気がつかないかな。」
「梅の花と,ツバキの花ですね。」
「どっちとも花が咲いているけど,花の数がぜんぜんちがいますね。」
「そうだろう。そのとおりだろう。今日のポイントはそこなんだ。」
「つまり,梅はものすごくたくさんの花を咲かせるということですね。そうすれば,華やかに見えるし,たくさんの人が見に来てくれるんだ。」
「もし,オー君が虫であったとしてだよ。オー君はどっちの花に来るかな。」
「そうですね。たくさんの花があれば,遠くからでもよく目立つし,蜜も多いと思うので,梅に行きますね。でも,梅ってけっこう苦労しているんですね。」
「苦労している? おもしろいことを言うね。どういうことかな?」
「苦労と言っていいかどうか分からないけど,花を咲かせるということは,それだけたくさんのエネルギーを使うでしょ。だからたいへんかなと思ってね。」
「すばらしい考えだね。つまり,梅は花を咲かせ,実をならせるために,蜜をためて虫や鳥を呼ぶ工夫をする。そして,たくさんの鳥や虫が来てほしいので,花をいっぱいつけるようにする。すると,木に負担がかかるということだね。」
「何か秘密があるような気がするんですが・・・。」
「そのヒントになることが,下の写真を見るとよく分かるよ。」
「普通の梅の花のようですが・・・。」
「もっとよく見てごらん。虫めがねも使うといいよ。」
「虫めがねで,じいっと,じっくりと,しっかりと,ていねいに観察すると・・・あれ? この花・・・(1)と(2)の花は何か変だよ。おかしいよ。」
「何がおかしいの。」
「花はふつう,がく,花びら,おしべ,めしべとあるだろう。でも,この花にはめしべがないよ。」
「え! ほんと。そんなことあるの・・・。あ! 本当だ。めしべのない花がありますね。これはどうしてですか?」
「花ちゃんもよく見つけたね。つまりね,梅の花にはにせものがいっぱいあるということなんだよ。」
「にせものの花? でも,なんでそんなことをするのですか。」
「考えてごらん。梅の花がそのまま全部が実になったら,どうなるだろう。」
「梅の木が梅の実でいっぱいになりすぎますね。」
「でも,梅の実が多くなれば,それだけ梅干しがたくさん食べられるけど。」
「そういうことではなくて,つまり,どれもこれも本当の花だったら,すべてが実になり,それだけ母体である梅の木に負担がかかってしまうのですね。」
「つまり,木が生きていくためのエネルギーと種を作るエネルギーをうまくコントロールしているということですか。」
「それって,すごいことですね。梅はただ咲いているだけではないんですね。」
「梅の木って,すごいんですね。とても勉強になりました。」
「そうだね。ふだん見慣れている梅の木でも,いろいろな工夫をしているということだ。植物の世界には不思議な事,分からない事がいっぱいなんだね。さあ! また,みんなでてくてくして,自然の世界のおどろきを発見しに行こう。」
実梅と花梅
梅には,実を採るための「実梅」と花を鑑賞するための「花梅」があるといわれている。「実梅」の条件は,樹勢強健で病害虫に強く栽培しやすく土質に対する適応性に富み,完全花が多くて豊産,隔年結果が少なく,品質優良で果肉歩合が高く,かつ結実期が早くてしかも経済的樹齢期間の長いことが要求される。これに対し,「花梅」は結実には無関係であるから,不完全花でも美しく香り高い花を年々豊富に開花すれば事足りるので,不結実の品種が多い。上記のてくてく自然散歩の記事は,花梅を中心に記したものであることをご承知願いたい。