2.植物の世界
(11)おいしい植物の世界
(12)野菜・果物も植物だ! おどろきの世界
(554)カフェインとは
「ねえねえ,オー君。上にツバキの葉とチャノキの葉の2枚の写真があるけど,何か気がつくことはない?」
「そうだね。左は,春になると花を咲かすツバキでしょ。ツバキという漢字は,木へんに春なんだよね。これは,モンタ博士に教えてもらったもん。それから,右はお茶の葉か。お茶はよく飲むけど,こういう葉っぱだったんだ。」
「いつも飲んでいるのに,知らないこともあるわね。」
「ぼくは,おいしい緑茶が大好きだな。日本人はお茶と長く付き合ってきたんだよね。」
「ところがそうでもないみたいなのよ。もともとは中国の木であったらしいの。それから,日本に入ってきたといわれているのよ。」
「へえー。そうなんだ。」
「ところで,オー君。世界の三大飲み物といえば,何だか分かる。」
「それはね・・・うーん。よく分かんないなあ。」
「それは,紅茶,コーヒー,ココアよ。」
「へえー。そうなんだ。紅茶はお茶の葉から作るけど,他のものはどうやって作るの。」
「コーヒーは,アカネ科のコーヒーの木から,ココアは,アオイ科のカカオの種から作るのよ。」
コーヒーの木 カカオの実
「へえー。花ちゃんは何でも知っているんだね。物知り博士だね。感心しちゃうね。ところで,どうして人間はお茶を飲むのかな。」
「それはね,おいしいから飲むのよ。オー君は,のどがかわいたときにジュースを飲むでしょう。それと同じだと思うけど,ちょっと自信ないなあ,そんなときには,モンタ博士に聞きましょう。」
「そうしよう。そうしよう。」
「モンタ博士,どうして人間はお茶を飲むのですか。」
「いい質問だね。人はどうしてお茶を飲むのか,それには,ちゃんとした理由があるんだよ。」
「理由って,何ですか。」
「それはね,コーヒーも,紅茶も,ココアも,みんな『カフェイン』というものをふくんでいてね,それを体に取り入れるために飲んでいるのさ。」
「カフェインは体にいいの。」
「カフェインというものはね,人間の体によい効果をもたらすものなんだよ。もともと,カフェインとは,植物が昆虫などに食べられないように,自分の身を守るために作り出した化学物質なんだよ。」
「化学物質? 何だかむずかしそうなお話になってきたな。」
「まあ,そうでもないよ。つまりね,くわしく言うとね,カフェインというものは,アルカロイドという毒性の物質を持っているんだよ。」
「え! 毒なの? カフェインという毒を飲んでいるということですか。」
「しかしね,毒といっても弱い毒,少しの毒は薬になることがあるんだよ。」
「え! 薬になるの。」
「そうなんだ。ハーブティーとか香辛料,薬草などにふくまれる成分の多くはね,もともと植物にとっては身を守るための毒性物質だったんだよ。みんながよく食べるアイスクリームにバニラアイスってあるだろう。あれはね,バニリンという毒性物質なんだよ。」
「毒っていうと,何だかこわい感じですね。」
「もっとくわしくいうと,カフェインは人間の神経をしずめる作用も持っているんだ。」
「どういうことですか。」
「つまり,人間の神経を高めたり,興奮させたり,活性化してくれる,つまり,人間の心も体もリフレッシュさせて,元気にしてくれるというわけなんだ。」
「すごいですね。カフェイン」
「それからね,カフェインというものはね,家庭用の薬として,一般的な頭痛薬や総合感冒薬などにもふくまれているんだよ。」
「へえー。すごいんですね。カフェイン!」
「ミルクチョコレートってあるだろう。あれにもカフェインがふくまれているし,さらに,コーラっていう清涼飲料水があるだろう。それにもカフェインが入っているんだよ。」
「山登りなどで,チョコレートを食べると元気が出るし,運動の後にコーラを飲むと,すっきりするのは,カフェインのおかげなんですね。」
「あ!
思い
出したよ。モンタ
博士が『チョコレート』について,『てくてく
自然散歩』に
書いていてくれたものがあったんだ。ちょっと,
待ってね。スマホをスイッチオンして,それから,『モンタ博士』と
入力し,
『タイトル番号順の索引』を
見ればいいんだ・・・あった! あったぞ。
No.450~452に書いてある。
花ちゃん,
二人で見てまた
勉強しよう。」
「『てくてく自然散歩』をそうやって利用してくれて,もうモンタ博士は感激だね。とってもうれしいよ。なみだが出ちゃうね。」
カフェインの効用
カフェインには大脳皮質に作用して,知覚機能や精神機能を刺激し,思考力や集中力を増す効果がある。また,カフェインは,人間の脳内で疲労感や眠気を感じさせる役割を持つアデノシンと似た分子構造を持ち,カフェインを摂取すると,アデノシンの代わりにカフェインがアデノシン受容体と結合するといわれ,このことにより,アデノシンが働かなくなり,疲労感や眠気を感じなくなるという報告がある。さらに,カフェインは腎臓に作用し,利尿効果を高め,胃液分泌を促し消化も助ける効果があり,飲酒後のアルコールの分解も高め,肝臓の働きを促進し,二日酔いの軽減にも効果ある。なお,運動前にコーヒーを飲むと筋肉痛が緩和されるし,学習前に摂取すると記憶力が向上するともいわれている。コーヒー習慣がアルツハイマー病,パーキンソン病のリスクを低減する可能性があり,適切な摂取によりがんを抑えるなど死亡リスクが減少する効果があるとの科学的データも知られている。