2.植物の世界
(7)菌類のなかま
(314)シイタケ物語 その3
「うわあー! なんだこれ?」
「なんでしょうね。ドーナツかな?」
「ちがうよちがう。この前,お話ししたキノコの種だよ。」
「え! これがキノコの種? どういうことですか。」
「これは,シイタケの種,つまりシイタケの胞子だね。」
「胞子? このドーナツのようなものが,その胞子というものなんですか。」
「ちがうよちがう。胞子というのはね,とても小さいもので,顕微鏡で見ないと見えないものなんだ。このドーナツみたいなものは,その胞子のたくさん集まったものなんだ。白っぽいものは全部胞子だね。」
「へえー。そうなんですか。ぼくも見てみたいな。」
「一つ一つの胞子を見るのは顕微鏡が必要だけど,上の写真のようなものなら,だれでも簡単に作ることができるから,やってみるとおもしろいよ」
「どうやるのですか。教えてください。」
「とても簡単さ。スーパーなどで買ってきたシイタケの軸をとってかさの部分を黒っぽい紙の上に置けばいいのさ。数日すると,紙の上にびっしりと落ちた胞子を見ることができるよ。」
「よーし! やってみるぞ! チャレンジしてみるぞ!」
「何でも実験してみると,新しい発見があるよ。植物が花を咲かせて種を作るように,キノコは,胞子を飛ばすためだけに笠のついた,いわゆるキノコを作るというわけなんだ。」
「ところで,またまた疑問に思ったことがあるんだけど,どうして,キノコって,上が丸く帽子みたいになっているのに,下は平らになっているのかな?」
「ほほー。さすが,オー君。おもしろいところ,いいところに気がついたね。」
「そうですね。ほとんどのキノコがそういう形をしていますね。考えてみると不思議ですね。」
「その不思議に思うことが,どうしてかなと考えることこそ,『科学のはじめの一歩』だね。」
「いろいろな自然界のものの形には,それぞれ意味があるということですね。」
「ちょっとむずかしいお話になってしまうけど,つまりこうなんだ。森の中を吹く風は,かさの下は平らなのでまっすぐだけど,かさの上は丸みがありカーブしているので,風は遠回りしてスピードが速くなる。するとかさの上と下では気圧の差ができ,気圧の低い上に向かって『揚力』というものが発生する。この揚力によって胞子が舞い上がり,あちこちに胞子が散らばるということなんだ。これはね,飛行機が飛ぶのと同じ原理なんだけど,分かるかな?」