NO.87

ヒガンバナのひみつA

「モンタ博士。てくてく自然散歩86の右下の大人向けの文章をいっしょうけんめいに読んで、その後、お父さんにも聞いたんだけど、三倍体とか、げんすうぶんれつとか、わけが分からなくて、こまっちゃった。」
「まあ、しかたないさ。高校生くらいになると、お勉強する内容(ないよう)だからね。今は、種(たね)がなくてもふえる植物もあるということが分かればいいよ。」
「そうね。ヒガンバナって、本当に変わってるわね。ほかにも、種がなくてもふえる植物ってあるんですか。」
「それが、いっぱいあるんだよ。みんなのよく知っている、スイセン、チューリップ、バナナ、オニユリ、それに、シャガイモもそうだよ。」
「へーえ。バナナも種ができないんだ。」
「ところで、オー君。ヒガンバナって、ほかの名前がついてるの知ってる?」
「もちろん……。おいら、分からん。」
「マンジュシャゲともいうのよ。」
「何! まんじゅうがどうしたの?」
「あーいやだ。食べ物のことばかり考えているからよ。まんじゅうじゃなくて、マンジュシャゲというのよ。漢字で『曼珠沙華』と書くのよ。」
「何でも知っているんだな。花ちゃんは……。パチパチパチ!」
「マンジュシャゲというのはね、古いインドの言葉からきているんだ。天上の花(神様の花)という意味があるんだよ。」
「モンタ博士、そんなにステキな花なのに、どうして日本では、ハカバナとか、ソウシキバナとか、ユウレイバナとかいうんですか。」
「それは、お彼岸(ひがん)の時に、お墓(はか)参りに行くと、必ず、この花がさいているからじゃないかなと思うよ。それに、昔の人は、葉がないのに花がさいて変な植物と思ったからじゃないかな。本当は、色もあざやかだし、花の形もほかの花とちがっていて、ステキなお花だと思うんだけどな。」
「そうですよね。ヒガンバナをとったら、死んじゃうなんてうそですね。めいしんですね。こんなにきれいなお花は、みんなでよく見てあげなくちゃ。」
「そのとおりだね。ヒガンバナよ、バンザイという気分だね。」
「ねえ、オー君。さっきから何してるの。人の話聞いているの。」
「こうやって、ポキ。続けて、ポキ。ヤッター! かんせいだ。ヒガンバナのネックレス。大好きな花ちゃんに心からプレゼント!」
花ちゃん

種のないヒガンバナがどうして日本にあるの?

 球根(ヒガンバナの場合はりん茎という)の部分に有毒のリコリンという物質があり(アルカロイド系)、壁を塗るときに土の中にりん茎をすりこむと、ネズミの害をまぬがれたということから、交易渡来説が主流であるが、また、米食民族が漂流時に救荒植物として持参し、ききんのときに食料としたともいわれている。なお、ヒガンバナは、田んぼのあぜなどにもよく見られるが、それは、稲作に害を及ぼす土中動物などの侵入を防ぐためであったともいわれている。また、お墓の周辺に多いのは、お供えの花として植えられたり、球根が毒を持っているため、埋葬した遺体を守る意図もあったのではないかといわれている。同じヒガンバナ科のキツネノカミソリは、花の色がオレンジ色で、ヒガンバナより約1か月早く花が咲く。


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