ミノムシの不思議
「モンタ博士,ミノムシというのは, 『ガ』の仲間というのは分かったわ。 それから,『みの』というのが,わら などで作った昔の雨具,つまりカッパ みたいなものというのも分かったわ。」 | |
「それは,それはよかったね。それで,まだまだ,質問があるのかな。」 | |
「ミノムシの『みの』は,とってもじょうぶそうですね。いったい,あの『みの』はなんでできているんですか。」 | |
「とってもいい質問だね。オー君は知っているかな。」 | |
「たしか,何かの本で読んだけど,ミノムシは,かれ草やかれ枝を集めてるんだよね。」 | |
「そうだね。それから,それから。」 | |
「その集めたものを,自分で糸を出しながらおうちにしていくんでしょ。」 | |
「よく知ってるね。さすがは,オー君。昆虫(こんちゅう)博士だね。」 | |
「すっごいじょうぶな,がんじょうなおうちなんだ。手で切ろうとしてもなかなか切れないよ。」 | |
「何でそんなにがんじょうに作るんだろうね。花ちゃん考えてごらん。」 | |
「それは,風や水やかんそうを,このミノで守るということですか。」 | |
「そのとおりだね。いろいろと工夫しているんだね。『みの』をやぶいて,その後,色紙や色つきの毛糸などをおいとくと,きれいなカラフルな『みの』になるよ。ぜひ,実験してごらん。ところでさ,ミノムシというは,とっても有名な昆虫だけど,不思議なことが,まだまだいっぱいあるんだよ。」 | |
「それは,どういうことですか。」 | |
「ミノムシ,つまりミノガというのはね,メスがとっても変わり者でね,成虫になっても羽もないし,しょっかくもないんだ。」 | |
「それじゃ,空も飛べないな。」 | |
「そうだよ。みのの中から一生死ぬまで一歩も外に出ないんだよ。」 | |
「へえー,変わった虫ですね。」 | |
「幼虫から成虫になっても羽がなくて,しょっかくもなければウジムシみたいなの。オスはちゃんとしているの。」 | |
「オスには羽もしょっかくもあって,ガの形をしているんだよ。」 | |
「ちょいと待ってくれ。ということは,交尾(こうび)はどうするんだろう。メスがずうっとみのの中に入っていたら,どうやって交尾するの。」 | |
「それが,ミノムシのまたまた変わっているところなんだ。上の絵を見てごらん。メスは木にぶら下がっていて,ウジムシみたいだろう。頭は下にあって,そこから,におい(フェロモン)を出してオスをよぶのさ。」 | |
「なるほど,なるほど。羽のあるオスはオシリから何か出しているよ。」 | |
「それは,交尾器というものさ。メスの交尾器は奥にあるから,オスは交尾器をずうっとのばさなくちゃいけないのさ。」 | |
「ふーん,なるほどね。ミノムシもいろいろと苦労しているんですね。」 | |
「だから,虫の世界,自然の世界というのは,おもしろいんだね。」 |
▼ミノムシ哀歌
昔,ミノムシは親の知れない「鬼の子」とよばれた。平安時代の才女,清少納言は『枕草子』に,「みのむしいとあはれなり,鬼の生みたりければ…」「風の音を聞き知りて八月ばかりになれば,『ちちよちちよ』とはかなげに鳴く,いみじうあはれなり」と書いている。今風に言えば,ミノムシ哀歌であろうか。