NO.78

ミノムシの不思議

ガ
花ちゃん 「モンタ博士,ミノムシというのは, 『ガ』の仲間というのは分かったわ。 それから,『みの』というのが,わら などで作った昔の雨具,つまりカッパ みたいなものというのも分かったわ。」
モンタ博士 「それは,それはよかったね。それで,まだまだ,質問があるのかな。」
花ちゃん 「ミノムシの『みの』は,とってもじょうぶそうですね。いったい,あの『みの』はなんでできているんですか。」
モンタ博士 「とってもいい質問だね。オー君は知っているかな。」
オー君 「たしか,何かの本で読んだけど,ミノムシは,かれ草やかれ枝を集めてるんだよね。」
モンタ博士 「そうだね。それから,それから。」
オー君 「その集めたものを,自分で糸を出しながらおうちにしていくんでしょ。」
モンタ博士 「よく知ってるね。さすがは,オー君。昆虫(こんちゅう)博士だね。」
オー君 「すっごいじょうぶな,がんじょうなおうちなんだ。手で切ろうとしてもなかなか切れないよ。」
モンタ博士 「何でそんなにがんじょうに作るんだろうね。花ちゃん考えてごらん。」
花ちゃん 「それは,風や水やかんそうを,このミノで守るということですか。」
モンタ博士 「そのとおりだね。いろいろと工夫しているんだね。『みの』をやぶいて,その後,色紙や色つきの毛糸などをおいとくと,きれいなカラフルな『みの』になるよ。ぜひ,実験してごらん。ところでさ,ミノムシというは,とっても有名な昆虫だけど,不思議なことが,まだまだいっぱいあるんだよ。」
花ちゃん 「それは,どういうことですか。」
モンタ博士 「ミノムシ,つまりミノガというのはね,メスがとっても変わり者でね,成虫になっても羽もないし,しょっかくもないんだ。」
ミノムシ
オー君 「それじゃ,空も飛べないな。」
モンタ博士 「そうだよ。みのの中から一生死ぬまで一歩も外に出ないんだよ。」
花ちゃん 「へえー,変わった虫ですね。」
オー君 「幼虫から成虫になっても羽がなくて,しょっかくもなければウジムシみたいなの。オスはちゃんとしているの。」
モンタ博士 「オスには羽もしょっかくもあって,ガの形をしているんだよ。」
オー君 「ちょいと待ってくれ。ということは,交尾(こうび)はどうするんだろう。メスがずうっとみのの中に入っていたら,どうやって交尾するの。」
モンタ博士 「それが,ミノムシのまたまた変わっているところなんだ。上の絵を見てごらん。メスは木にぶら下がっていて,ウジムシみたいだろう。頭は下にあって,そこから,におい(フェロモン)を出してオスをよぶのさ。」
オー君 「なるほど,なるほど。羽のあるオスはオシリから何か出しているよ。」
モンタ博士 「それは,交尾器というものさ。メスの交尾器は奥にあるから,オスは交尾器をずうっとのばさなくちゃいけないのさ。」
花ちゃん 「ふーん,なるほどね。ミノムシもいろいろと苦労しているんですね。」
モンタ博士 「だから,虫の世界,自然の世界というのは,おもしろいんだね。」

▼ミノムシ哀歌

 昔,ミノムシは親の知れない「鬼の子」とよばれた。平安時代の才女,清少納言は『枕草子』に,「みのむしいとあはれなり,鬼の生みたりければ…」「風の音を聞き知りて八月ばかりになれば,『ちちよちちよ』とはかなげに鳴く,いみじうあはれなり」と書いている。今風に言えば,ミノムシ哀歌であろうか。

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