風散布(さんぷ)で飛ぶ植物たちいろいろ
「オー君,この前の『ひっつき虫』のお話はとっても楽しかったわね。」 | |
「そうだったね。植物は自分では,体を動かすことができないから,いろいろな方法で,自分の子どもたちを遠くへ遠くへと移動させるんだね。」 | |
「ところでさ,オー君。植物はほかの方法でも種を遠くへ移動させているよね。」 | |
「ひっつき虫は,くっついて遠くへ行くでしょ。そのほかといったら,どんな方法があるかな。くっつく以外といったら,ほかには,風をたよりにするしかないかな。あ,そうか。風だ。」 | |
「そうよ。タンポポの綿毛って,風に吹かれて飛んでいくでしょ。」 | |
「そうだった。綿毛を思い切りフーと吹いたら,落下傘(らっかさん)みたいだったな。」 | |
「下に種がついているけど,上にはとっても細い毛がついていて,フワフワ飛ぶのね。」 | |
「ねえねえ,花ちゃんは植物博士だよね。同じように綿毛がついていて,空をフワフワと飛ぶものにどんな植物があるかな。」 | |
「そうね,いっぱいあるわ。例えば,同じキク科のノゲシなどもあるし,ススキも風によく飛ぶでしょ。それから,ガガイモやキンポウゲの仲間にも多いわ。」 | |
「さすがは,花ちゃんだね。よく知ってるね。尊敬しちゃうな。綿毛で飛ぶものってけっこうあるんだね。ところでさ,綿毛以外に風に飛ぶようなものってないのかな。例えば,飛行機の羽とかプロペラのようなものとかさ……。」 | |
「そうね。綿毛のようにふわふわでなくて,羽をもってひらひらと飛ぶようなものね。うーん。ちょっと,待ってね。考え中ね……。あ! あった。」 | |
「え! 何かあるの。花ちゃん。」 | |
「思い出したわ。この前,校庭のカエデの木で遊んだでしょ。カエデよ。」 | |
「そうか。カエデにはおもりみたいなところがあって,それに,うすいところはプロペラの羽みたいになっていたぞ。」 | |
「それで,くるくると回転しながら舞うようにひらひらと落ちていったわよね。これも飛ぶということじゃないかな。」 | |
「カエデだけじゃないよね。ほかの植物でも羽やプロペラみたいになっているのが必ずあるはずだよ。」 | |
「マツやモミ,それからヤマユリなどのユリの仲間,アキニレやギシギシなどにも種の周りにつばさのようなものがついているわ。」 | |
「なーるほど。植物だって仲間を増やしたいんですね。いろいろな方法で動いているんですね。あれ? モンタ博士,さっきからお話に参加しないで,一人で何をこそこそと作っているの。」 | |
「ジャンジャカジャーン。ジャジャジャジャンジャカジャーン。」 | |
「モンタ博士,どうしちゃったんですか。」 | |
「ついに,ついに,できあがり。完成だ。モンタ博士特製のカエデの実の実験模型だ。ハサミで切り抜いて,クリップをつけて飛ばしてみよう。どんな動きをするかな。色エンピツで色をつけても楽しいかもね。」 | |
▼種子散布タイプいろいろ
植物はさまざまな方法で種子や果実を散布している。風散布型のものは,果実や種子に翼(つばさ)や羽毛を持ち,風に飛ばされやすくなっている。付着型のものは毛やとげ,あるいは逆針(さかとげ)を持っていたり粘液(ねんえき)を分泌したりして動物の体に付着して運ばれる。被食型(ひしょくがた)のものは,目立つ色の果実をつけ,それが鳥などに食べられることによって種子を散布する。重力散布型のものは,球形で重い果実や種子をつくり落下したときに地面に転がりやすい。水散布型のものは,果実や種子が水に流されて散布し,海水に運ばれるものもある。自力散布型のものは,果実にいろいろな物理的仕組みがあって機械的に自力で種子を散布する。