ひっつき虫で遊ぼう(センダングサ・オナモミなど)
「上のゴミのように見えるものは何だと思う。」 | |
「何だか,本当にゴミのようですが。」 | |
「これは,マジックテープさ。そして,オナモミ(正しくはオオオナモミ)だよ。どちらも,とげとげの部分をはさみやカッターで切ったものなんだ。」 | |
「なーるほど。どちらもよくくっつくように,とげの先が少し曲がっているのがよく分かりますね。」 | |
「マジックテープというのは,今ではいろいろなものに使われているけど,このマジックテープの発明は,このオナモミの実のとげがヒントになったといわれているんだよ。」 | |
「なーるほど。よく考えたものですね。感心してしまいますね。」 | |
「本当だね。オナモミの実で遊ぶのもいいけど,どうしてオナモミにはとげとげがあるのかを考えることも楽しいよ。」 | |
「それでは,今からオナモミの秘密をさぐろう。」 | |
▼オオオナモミ(キク科)
オナモミというのは,日本に昔からあるもので,今ではあまりその姿を見ることができない。このオオオナモミは今から70年くらい前に帰化植物として報告されてから,一気に日本中に広まったといわれている。オオオナモミの方が実が大きくて遊ぶのにはいいかも。この仲間はキク科であるが,オオブタクサと同じく風媒花(ふうばいか)である。だから,あまりきれいな花はつけない。
「オナモミの秘密を探るのも楽しいけど,やっぱりオナモミ飛ばしの方が楽しいよ。エイッ!」 | |
「やったわね,オー君。仕返しよ。エイッ! モンタ博士にもエイッ!」 | |
「今度はモンタ博士の逆襲(ぎゃくしゅう)だ。エイッ! モンタ博士特製のみんなまとめてオナモミだんごだ。いくぞ! エイッ!」 | |
「モンタ博士は上手ですね。」 | |
「モンタ博士も小学生のころに,オナモミを女の子にぶつけて遊んだんでしょ。」 | |
「もちろんさ。心ひそかに思っている大好きな○○ちゃんっていうかわいい女の子がいたっけな。遠い遠い昔の話だね……。」 | |
「ところで,モンタ博士。オナモミで遊んだらおなかがへったね。おやつタイムにしませんか。」 | |
「賛成,賛成。」 | |
「そうだね。それじゃ,お菓子(かし)を食べながら,オナモミの秘密を考えよう。ところで,花ちゃんは植物が好きで,オー君は動物,特に昆虫(こんちゅう)が好きだよね。モンタ博士は,植物も昆虫も星も鳥も好きだけど,オー君に質問するね。」 | |
「モグモグ。何でも聞いてちょうだい。おいら昆虫博士だもんね。」 | |
「どうして,オー君は昆虫が好きなの。動物が好きなの。」 | |
「そんなの決まってるよ。動くのがおもしろいんだ。カマキリでもクワガタでも,動いているのを見ているだけでおいらは楽しくなるんだ。」 | |
「そうか,動くからおもしろいのか。なるほど。」 | |
「そうね。植物はきれいだけど,動くことはしないわね。」 | |
「ふーん,そうか。植物は動かないか……。でも,本当かな。」 | |
「え! それってどういう意味ですか。」 | |
「よく考えてみようよ。ある地点をA地点として,ある地点をB地点とする。A地点からB地点に移動することを動くというんだよね。」 | |
「なんだか難しくなってきた感じだけど,動物はA地点からB地点に動いたりするんだ。だから動物。」 | |
「植物は動かない……。でも,植物は運ばれることはあるわ。足はないけど,何かによって動いたりすることはあるわ。」 | |
「ここで大切なことは,動物も植物も子孫を残すために,いろいろと苦労しているということも考えてほしいね。」 | |
「それって,どういうことですか。」 | |
「つまりね。植物の根や茎や葉はてくてくは動かないけど,実はどうだろうとか,種はどうだろうとか,もう一度考え直すことも大切なんだよ。」 | |
「はい。モンタ博士,わかりました。ところで,この植物はあちこちによく見られるセンダングサですね。」 | |
「そうだね,よく知ってるね。さすがは,花ちゃんだね。ところで,絵の真ん中にある花火のように見えるのが実(種子でもある)の集まりだけど,ゆっくりと見てみよう。」 | |
「センダングサには,逆さまのとげみたいのがあるんですよね。あ! そういえば,この前のオナモミも同じだ。とげによって,何かにくっついて運ばれるんだ。」 | |
「そのとおりだね。とげによってくっつくんだね。とげでつく植物にはセンダングサやオナモミのほかに,イノコズチ,キンミズヒキ,ヌスビトハギなどがあるんだ。自分で図鑑で調べておくといいよ。それじゃ,ここで問題だ。とげ以外の方法で,何かにくっつくものはないかな。」 | |
「くっつく? くっつくといえば,のりやセメダインみたいなものでつくのかな。」 | |
「でもね,のりやセメダインのある植物なんてないわよね。」 | |
「本当にないかな。」 | |
「何かあるんですか。」 | |
「あるんだよ,だから自然の世界は不思議なんだね。のりやセメダインではないけどね,それによく似たものがあるんだよ。」 | |
「そんな植物があるんだ。おどろきだな。それじゃまるで納豆(なっとう)みたいにべたべたとくっついちゃうの。」 | |
「なるほど,納豆草(なっとうぐさ)と呼んでもいいかもね。その植物というのはね,メナモミ(キク科),ノブキ(キク科),チヂミザサ(イネ科)などだよ。どんな植物か,自分で植物図鑑などを使って調べてごらん。」 |
▼センダングサ(キク科)
正しくはコセンダングサという種である。センダングサ属には分類では,ほかにアメリカセンダングサ,シロノセンダングサなど6種がある。ここでは,花から実(種子)への変化に注目してほしい。Aはつぼみから開花まで,Bは実はできたが熟(じゅく)す前の状態,そして,Cは実が熟し散布される段階のものである。