NO.232

ウキクサが水にうかぶひみつ

「あれあれ? なんだ。葉っぱだぞ。」
「ねえねえ,オー君! よーく見て。葉っぱがどうなっているか分かる?」
「水にうかんでいるんだ。こりゃ,おどろいたね。」
「これはね,5年生が育てている水田のところで見つけたの。葉っぱがういているから,ウキクサ(浮き草)というのよ。」
「ちょっと待って,葉っぱがあるのは分かったけど,それだけなの。」
「葉っぱのうらには,根っこがついているわよ。」
「ちょっと待って,葉っぱに根っこがついているって,変(へん)じゃない。ふつう,植物は茎(くき)があって,茎から根や葉っぱが出るんじゃない。」
「そういえば,ウキクサって,ちょっと変だわ。」
「二人ともいいところに気がついたね。ウキクサはね,葉っぱのように見えるものは,本当は茎なんだよ。」
「え! それって,どういうことですか。」
「ウキクサは,体の構造(こうぞう)をなるべく簡単(かんたん)にしてしまったのさ。むずかしい言葉で『葉状体』(ようじょうたい)というのさ。」
「ふーん,そうなんだ。ところで,ウキクサって,どうして水にうくのかな。」
「水にうくから,ウキクサでしょ。でも,どうしてなのかな。ふつうの葉っぱとはどうちがうのかな。」
「どうしてなのかな?と考えることが大切だね。オー君と花ちゃんはどうしてだと思う。」
「うくというのは,魚みたいなうきぶくろがあるのかな。」
「うきやすいように,何かしかけがあるんじゃないかしら。」
「さすが,二人ともいいところに気がついたね。ウキクサの葉(葉状体)の中には,うきぶくろのように空気をためる細かい部屋,つまり気室(きしつ)というものがあるんだ。」
「おいらの思ったとおり,やっぱりうきぶくろがあるんだ。」
「それから,ウキクサの葉(葉状体)の表面には,とても細かい毛がたくさん生えていてね,それで水をはじくんだよ。さらに,裏側(うらがわ)は水にすいつきやすいようなつくりになっているんだ。」
「わたしの思ったとおり,やっぱりしかけがあるんですね。」
「そのとおりだね。さらに,根っこにもひみつがあるんだ。」
「え! 根っこにも・・・・・・,どんなつくりをしているんですか。」
「ウキクサは小さい体なのに,とても長い根で,船のいかりのような役割(やくわり)をしているんだ。さらに,根の先には,『根帽(こんぼう)』とよばれる少しふくらんだおもりまでついているんだよ。」
「へえー。小さなウキクサにも,いろいろなおどろきがいっぱいなんだね。」

ウキクサは害草?

  こんな小さなウキクサですが,ものすごい繁殖力で水田を覆いつくしてしまうことがあります。夏は特に増殖のスピードがアップされ,ある研究者の計算によると100日間で400万倍にも増えるそうです。田んぼ一面を埋めつくしたウキクサは,太陽光を遮断してしまい,米作りに大切な水の温度を下げてしまうということがあります。また,さらに植物プランクトンの光合成を抑えてしまい,水中の酸素量を激減させ,稲作りに大きな被害を与えることがあるそうです。


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