NO.127

スナヤツメ

「あれ! 何ですか?」
「ドジョウのようだけど……。そうじゃないみたいですね……。」
「うなぎのようだけど……。ちょっとちがうみたいですね。」
「モンタ博士! いったい何者ですか。こいつは……。」
「こいつは,『スナヤツメ』といって,ヤツメウナギの仲間(なかま)なのさ。」
「ヤツメウナギって……ウナギの仲間でしょ。」
「ヤツメウナギとウナギって,名前はよくにているけど,だいぶちがう生き物なんだよ。」
「ちがうって,どうちがうんですか。」
「そうだね。それじゃ,みんなお魚を食べるときのことを思い出してごらん。」
「お魚,といえば,お寿司(すし)だな。おいら,中トロがいいや!」
「そうじゃなくて,お魚1本丸ごとを思い出すんだよ。お魚には口があって,パクパクとあごを動かすだろう。そのあごがスナヤツメなど,ヤツメウナギの仲間にはないのさ。」
「あごがないというのは,お口がないということ?」
「お口はあるけど,ほかの魚にすいついて,ヤスリのような歯で,魚のひふをけずって血をすうんだよ。」
「ドラキュラみたいなやつだな。」
「それから,ふつうの魚のように,むなびれやはらびれがないんだ。」
「ずいぶんとかわった魚なんですね。」
「原始的(げんしてき)な魚で,くわしく言うと,魚ではないんだ。」
「ふーむ。なるほど,かわったやつもいるんだね。ところで,このスナヤツメはどこにいたんですか。」
「学校の前の川だよ。水のすんだ流れのしずかなきれいな川にしかいないんだよ。」
「ということは,ぼくたちの学校の前の川はとてもきれいな川というわけね。」
「うん。まあ,すぐにそうだと決めなくてもいいけどね。スナヤツメは水のよごれに弱いそうなんだ。それに,スナという名前がついているように,幼生(ようせい…昆虫(こんちゅう)でいえば幼虫)のころは,すなの中にもぐって生活しているそうだから,そういう環境(かんきょう)が,今でものこされているということだね。」

スナヤツメのつぶやき

えーっと。私,スナヤツメはですね,日本全国に生息しておるんですが,水の澄んだ流れのゆるやかな浅いきれいな流れの中におるんですよ。幼生はどろの中にもぐって有機物やけい藻類を食べて大きくなるんですね。ガキのころは,目がなくて,どろの中で暮らしているというわけですよ。4年目の秋に大人ではなく,成魚といいますが,このころは目がちゃんとあるんですよ。変態後は消化管が退化してしまい,えさを取らずに春まで過ごすんですね。春から初夏にかけて産卵し,一生を終えます。詳しく言いますと,私の仲間は円口類というものに属しましてね,系統分類的に他の魚類とは大きくちがっているんですね。 脊椎(せきつい)動物の中では最も原始的で,古生代に繁栄した仲間の生き残りで,まさに生きた化石であり,生物学的にも非常に貴重なんですよ。環境庁レッドリストで,絶滅危惧U類というものになるんだそうですよ。まあ,そんなわけですから,私を見つけたときは優しくしてくださいよ。バイバイ!


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