NO.125

タケノコの不思議(ふしぎ)

「あれ? これは,学校のうら山の竹林ね。」
「竹の子がぐんぐんとのびているね。」
「こんなに大きくなっては,もうおいしくないのよね。」
「ほんのちょっとだけ頭を出したくらいの竹の子がおいしいらしいよ。あれ! 向こうからモンタ博士が来るよ。手に何か持っているよ。」
「また,竹の子ほりをするのかしら……? 手に持っているのは,クワでなくて,定規(じょうぎ)みたいよ。何をするのかしら?」
「やあ! 花ちゃん・オー君,元気。モンタ博士は今,自由研究をしているんだよ。」
「自由研究? 何を調べているんですか。」
「どんな竹の子がうまいかという研究ですか。」
「いやいや,ちがうよ。前から疑問(ぎもん)に思っていたんだけどね,竹の子って,すごいいきおいでのびるだろう。それで,どのくらいかを記録(きろく)して,何か分かるかなと思ってね。」
「え! 毎日,はかったんですか。」
「そうだよ。毎日見ていて,あー,のびたな,と思っているだけじゃつまらないけど,記録をとってグラフなどにすれは,それは,もう『科学』するってことだからね。いろいろ分かって,楽しかったね。」
「それで,それで,どんなことになったの。」
「ジャーン! 発表します。次のようなグラフになりました。」
「へえー,定規ではかるだけですね。けっこうかんたんにできる観察ですね。」
「実験(じっけん)をする前に,ある本に,『竹の子の先に上着をかけて昼寝(ひるね)をしていたら,目がさめた時には,とどかない高さまでのびていた』というお話や『一日に1〜2メートルのびた』という記録があるとか,いろいろ言われているけど,まんざらうそでもなさそうだということが分かったよ。」
「へえー,おもしろい実験ですね。わたしにもできるわ。今度やってみよう。」
「今回は,2本だけだったし,時期や場所などをかえたり,たくさん調べればいろいろ分かるね。天気もいっしょに調べるともっといいかもね。」

竹の子のつぶやき

わしが,なぜそんなに成長するか,その秘密を教えてあげよう。まず,植物は茎の先端に成長点というものがあって,そこで細胞分裂(さいぼうぶんれつ)させながら少しずつ伸びるものなのだ。つまり,成長点は一つだな。ところが,竹の子の場合は,この成長点をいくつも持っているのだ。竹の子を縦に切ると,たくさんの節が詰まっているじゃろう。この節に無数の成長点が密集した成長帯があって,一気に,細胞分裂をして節と節の間を伸ばすのじゃな。成長点を一つしか持たない普通の植物が1センチ伸びたとすると,数十個の成長点を持つ竹の子は,単純計算でも数センチは伸びるというわけなのだ。まだまだ秘密があってな,竹の子の体内に「ジベレリン」という成長促進ホルモンを多く含んでいるのさ。このジベレリンが細胞を刺激(しげき)して成長を速めているんじゃ。さらに,竹の子は周りの竹の子と地下茎でつながっているんだな。竹の子は正しくは,竹の子ではなく,竹の新しい芽だ。地下茎を通じて豊富な栄養分をじゃんじゃんもらえることができる。これも一気に伸びることができる竹の子の秘密じゃよ。


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