マムシグサ
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「ねえねえ，見て見て！ オー君。かわったお花でしょ。」 |
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「ぎょ！ なんだ，こりゃ？ これ，お花なの？」 |
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「そうよ，お花なんですよ。ちょっとかわった形をしているけどね。」 |
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「おいら，はじめて見たぜ。」 |
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「そんなことないわよ。春の雑木林（ぞうきばやし）に入れば，あちこちでさいているわよ。」 |
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「それにしても，へんなお花だな。なんだかヘビが頭を上げた感じだよ。」 |
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「さすがはオー君。よいところに気がついたね。ところで，二人は，どんなヘビを知っているかな。」 |
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「えーっと，ヤマカガシ，アオダイショウ。それから，シマヘビなんていうのもよく見るヘビだね。」 |
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「それと，もう一種類（しゅるい）いるでしょ。毒（どく）を持っているヘビよ。」 |
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「毒のあるヘビ？ ……あ！ 分かった。ハブだ！」 |
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「おしい！ もう少しよ。まだいるでしょ。モンタ博士が去年つかまえたって言ってたでしょ。」 |
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「あ！ 分かった。マムシだ。」 |
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「そうです，そのとおり！ このお花の名前はね，マムシグサというのよ。」 |
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「え！ マムシグサ？ ヘビの名前がそのまま植物の名前になっているの？」 |
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「そうなのよ。ね！ モンタ博士。」 |
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「花のようなものが，ヘビの頭みたいだろう。それに，茎（くき）を見てごらん。」 |
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「茎？ ジロジロジローリ。あ！ まだらもようがあるぞ。」 |
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「分かったね。茎のまだらもようを，マムシというヘビに見立てて名前をつけたというわけさ。」 |
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マムシグサのつぶやき
ヘビの鎌首（かまくび）と見えるのは花序を包む葉が変形したもので，仏炎苞（ぶつれんぽう）というものなんだ。この仏炎苞が白くてきれいに見えるものが，尾瀬などでも有名で，人気抜群のミズバショウというわけさ。つまり，ミズバショウもおいらも同じ仲間で，サトイモ科の植物ということだ。ところが，おいらは，その形といい，色といいあまり好まれないようなんだな。なかにはグロテスクだなんていうやつもいるし，まいっちゃうよな。ちなみにコンニャクもおいらと同じ仲間さ。ところで，おいらは，雄の株と雌の株に分かれているんだ。もちろん，雌株に実ができるんだけど，雄株の花粉を運ぶのはキノコバエなどで，花には蜜も何もないのさ。独特なにおいで呼ぶんだな。その時，世にも恐ろしい計画を秘めているんだ。まず，キノコバエが仏炎苞の中に入ると，体のあちこちに花粉をつける。しかし，その中は，つるつるで上がれず，おまけに「ネズミ返し」のようなものまで用意してあるので上に上がれない。でも，雄株に落ち込んだキノコバエはまだいい方さ。なぜかというと，雄株の仏炎苞の合わせ目には小さなすき間があり，そこから脱出できるんだ。でも，雌株に入ると・
