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フクジュソウの秘密と実験結果

フクジュソウ
「お! きれいなお花だね。まるで、お日さまの光を受けて、笑顔(えがお)をかがやかせている感じの花だね。」
「フクジュソウというのよ。学校のあちこちにさいているのよ。」
「え! どこにあるのさ。」
「校舎(こうしゃ)のシダレザクラの根元にもあるし、校舎の東の温室の近くにもあるわよ。それに学校の近くのおうちの庭にもたくさんさいているわよ。」
「そういえば、この前、お出かけした時にあちこちで見たっけ。思い出したよ。」
「フクジュソウは漢字で、『福寿草』と書いて、とても縁起(えんぎ)がよい植物と言われているのよ。お正月の床の間(とこのま)にかざったりするのよ。」
「え! お正月? そんなに早くさくの。」
「ちがうわよ。お正月に見られるものは、促成栽培(そくせいさいばい)といって、人工的(じんこうてき)に温度をあたたかくして育てるのよ。ふつうは、2月〜3月にさくのよ。」
「ふーん。そうなんだ。ところでさ、なぜ、この寒いのに花をさかせるのかな。虫だって、あまりいないようだけど……。」
「うーん。そうかな。虫は本当にいないのかな。」
「まあ、今の季節(きせつ)、いるとしたら、ハナアブくらいかな……。あ! 思い出したぞ。モンタ博士、アブの仲間は黄色い花が好きなんだよね。あ! そうか、フクジュソウはまっきっき(真っ黄っ黄)色の花だ!」
「そうだね。でもさ、ハナアブたちは、北風の中、寒くないのかなあ。どうなんだろうね。」
「そうだわね。そう言えば、不思議(ふしぎ)ですね。」
「ひょっとして、フクジュソウの花に何かひみつがあるのかな。」
「虫が花に集まるのは、そこに蜜(みつ)や花粉(かふん)があり、それを食べるためにやってくるんだったよね。だから、ひみつは花にありそうだね。」
「こごえるように寒くても、花の中って、けっこうあたたかいのかもしれないわね。」
「そうだ。花の中の温度をはかってみないか。1時間ごとにはかってみよう。」
「そうだね。花の中と外、それに、もう少し地面の高いところもはかってみるといいかもしれないね。」
「フクジュソウの花って、パラボラアンテナみたいな形をしているね。」
「そうだね。それは、何か、あたたかさをたもつのと関係あるのかな。」
「二人ともいいところに気がついたね。フクジュソウの花は、朝、太陽の光を受けて開くよね。この時、光っている花びらは、光をよく反射(はんしゃ)するんだよ。」
「反射してどうなるんですか。」
「反射して、花の中心のおしべやめしべのあるところに光を集めるんだよ。」
「光が集まるとどうなるんですか。」
「どうなると思う。考えてごらんよ。」
「光が集まれば、明るくなると思います。」
「それだけかな。明るくなるだけかな。」
「光が集まれば、あたたかくなると思います。」
「そうだね。それを今から実験(じっけん)してたしかめようね。」
「温度計で温度をはかればいいんですね。」
「それから、支柱(しちゅう)を使って固定(こてい)したほうがいいね。」
「そうだね。朝9時ころから1時間おきに記録(きろく)をとることにしょう。」
「これは、楽しみですね。温度を折(お)れ線グラフにしたら分かりやすいわね。」
  ……ということで、実験結果(けっか)は次のようになりました。
「うわあー! すごい。午後1時の花の中の温度って23度もあるわ。」
「外は、13度だ。花の中は10度もあたたかいんだ。こりゃ、おどろきだ!」
「フクジュソウの花の中で、ハナアブたちはひなたぼっこしているのね。」
「おやつの花粉をちびちびなめながら、日光浴(にっこうよく)を楽しんでいるんだ。」
「そうだろうね。10度もあたたかいなんて、モンタ博士もおどろいたね。」
「あれ? 地上5cmと50cmでも少し温度がちがうみたいだけど、これは、何か意味があるのかな。」
「うーん。そうだね。考えてみようよ。どうしてだろうね。」
「地面から高いと、風に当たるから少し温度が低(ひく)いのかしら……。」
「うーん。フクジュソウって、地面すれすれにさいているね……。あ! そうか。今の季節に花をさかせる花って、どれも背(せ)の低いものばかりなんだ。背が低いほうが、冷たい北風が当たらないからなんだ。」

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