2.植物の世界
(11)おいしい植物の世界
(700)砂糖と塩
「あれあれ? 何か大きな機械が動いているよ。」
「そうね。右の写真は、何かをかり取ってますね。ススキのようなイネ科の植物が見えますが、何だろうなあ。」
「ヒントはね、この写真は沖縄で撮ったものだよ。沖縄と言えば⋯⋯。」
「あっ! 分かった。これは、サトウキビの写真ですね。」
「サトウキビというのは、黒砂糖のもとですね。甘くて大好きです。」
「そうだよ。今日は砂糖のお話をしようと思ってね、それで、サトウキビの写真を見てもらったんだよ。次にある写真は、サトウキビそのものなんだ。かじるととても甘いね。」
(サトウキビ)
「ぼくは、本物が見たいし、味見もしたいです。」
「また、沖縄に植物採集に行った時には、必ずお土産で持ってきてあげるね。」
「ところで、サトウキビから砂糖はどうやって作るのですか。」
「まずね、サトウキビの茎からしぼり出した液に、石灰を加えて加熱し、不純物を石灰にくっつけて取り除くんだ。これを煮て糖分をこくしてから、真空結晶缶で煮つめると、結晶ができるんだ。それから遠心分離機にかけてできたのが、原料糖とか粗糖とか呼ばれるんだよ。」
「へえー。いろいろなことをしないと、砂糖ってできないんですね。」
「まだ終わりではないんだ。その後にいろいろな物を入れて、精製糖にするんだよ。」
「ものすごく大変なんですね。サトウキビの他にサトウダイコンというのを聞いたことがありますが、それはどうやるのですか。」
(サトウダイコン)
「サトウダイコンは、ビートとか、テンサイとも呼ばれるけどね、ダイコンと同じような根の部分をうすく切り、同じようにいろいろな工程があって砂糖を作るんだよ。」
「サトウダイコンって、八百屋さんとかでは見たことがありませんが⋯⋯。」
「そうだね。サトウキビは南の土地だけど、サトウダイコンは、おもに気温の低い土地で栽培されるんだ。日本では北海道がおもな産地だから、あまり見たことがないのは当然だね。」
「砂糖については、よく分かりましたが、塩はどうやって作るのですか。」
「ぼく、知っているよ。塩は、海の水から作るんですよね。モンタ博士。」
「そのとおりだね。海水をくみ上げて塩田や塩のプールで、太陽熱と風力で水分を蒸発させるんだね。下の写真が、塩田のようすだよ。」
(塩田のようす)
「塩って、人間の体にとても大切な物だそうですが、みんな塩田という所で作っているのですか。」
「塩田などで作られる塩は、『ブランド塩』と言って、とても高価なものなんだ。ふだん使っている塩は、イオン交換膜というのを使って作るんだよ。」
「イオン交換膜? なんですか。それは?」
「ちょっとむずかしくなるけど、海水を入れた容器に、陽イオン(ナトリウムイオン)だけを通す膜と、陰イオン(塩素イオンなど)だけを通す膜をたがいちがいに並べ、直流の電気を通し、こい塩水とうすい塩水に分けて、こい塩水の方をにつめて取り出すんだよ。」
「へえー。塩を作るのも大変なんですね。」
「そうなんだよ。この方法はね、日本で開発されたものなんだよ。」
「へえー。そうなんですか。世界中のみんなが日本のやり方をやっているのですね。」
「ところがね、そうでもないんだよ。」
「えっ! それはどういうことですか。たくさんある海水をどんどん使えばいいと思いますが⋯⋯。」
「世界の塩はね、下の写真から作られるんだ。世界の6~7割は岩塩というものから作るんだよ。」
(いろいろな岩塩)
「岩塩? 聞いたことがありませんが⋯⋯。」
「岩塩は日本にはないけど、地面の中から掘り出す方法なんだよ。」
「岩塩って、どういうものなんですか。」
「岩塩は大昔に海の一部が切り離され、水分が蒸発して塩の層ができたものなんだ。岩塩のとり方には、写真のように、かたまりのままに掘り出す方法と、水を流して、こい塩水としてくみ上げる方法があるんだよ。」
「へえー。いろいろな方法があるんですね。」
「今日は砂糖と塩という、とても大切なものについて勉強できてよかったです。」
原料糖から精製糖へ
原料糖を溶かし、二酸化炭素・リン酸・石灰・骨炭(動物の骨から作った活性炭)・イオン交換樹脂などを使って、不純物や色を取り除いてから、再び結晶を取り出したものが精製糖である。精製糖は、結晶が目に見える大きさ以上のものをザラメ糖、結晶が見えにくいものを車糖という。一般に「白砂糖」と呼ばれている上白糖は車糖の一種であり、グラニュー糖はザラメ糖の一種である。