3.動物の世界
(11)その他の無脊椎動物のなかま
(678)変温動物のインスタント温度実験
「へんおん(変温)動物か。それから、こうおん(恒温)動物か。へんおんにしても、こうおんにしても、ふだんはあまり使わない言葉だな。こういうのを覚えなきゃいけないのは、何だかとてもめんどうだな。」
「オー君。さっきから、何をブツブツ言ってるの。」
「へんおんとか、こうおんとか⋯⋯意味は分かるんだけどな⋯⋯。」
「あれあれ? オー君。何か困っているようだけど、どうしたの。」
「あまりふだん使わない言葉なので、困っているんです。」
「そうか。でも、言葉というのは、とても便利な面もあってね。その言葉を使えば、説明しなくてもよく分かることがあるんだよ。覚えるために覚えるのではなく、都合がよくなるために役に立つために必要なんだね。」
「それはそうなんですが、覚えるのは正直言って大変です。」
「そうだね。そういう時には、漢字の意味をしっかりと考えると分かるよ。」
「『へんおん』は、変な温度、『こうおん』は、温度が高いということかな。」
「ちょっと待って! 変な温度ではなくて、温度が変わるということだよ。それから、温度が高いではなくて、この場合はこうとは、『恒』という漢字を使うんだ。『恒』とはいつも変わらないという意味なんだよ。」
「つまり、どういうことですか。」
「『変温動物』というのは、その生き物の外側というか、周りの温度によって、体の温度が変化する動物のことだよ。」
「例えば、どんな動物のことですか。」
「昆虫や爬虫類、それから魚類や両生類などだね。」
「冬になって、外の温度が寒くなると、自分も冷えて動きが悪くなる生き物ですね。カブトムシやトカゲなどは、変温動物なんですね。」
「そのとおりだよ。では、恒温動物はどういうのだろうね。」
「分かりました。いつも体の温度が同じで、周りの温度が暑くてなっも寒くなっても体温に変化がない生き物ですね。」
「例えば、ぼくたち人間ですね。ほ乳類はほとんど恒温動物ですね。」
「いつも温かい体温をもっていると言えば、鳥類も恒温動物ですね。」
「そのとおりだよ。変温動物は冷血動物とも言うけど、つまり、体の温度が変わるか、変わらないか、ということなんだよ。」
「漢字の『変』と『恒』の意味が分かればいいのですね。」
「そうだね。そうやって覚えてごらん。すぐに納得して頭の中に入りやすいよ。」
「ぼくたちは、いつも体温が36度とかで、体温が変わらないことは、体温計を使えば分かるけど、変温動物が周りの気温で変化するというのは、どうも分かりにくいですね。」
「そうね、春になれば温かくなって、虫とかが動き始めるのは分かるし、冬になると、動かないで静かになってしまうのも分かるけど、どうも今いちピンとこない感じです⋯⋯。」
「よし! それでは今から実験で確かめてみよう!」
「えっ! そんなことできるのですか。」
「冬のように寒くしたり、夏のように温かくしたりできるのですか。どうするのですか。」
「かんたんにできるよ。下の写真のようなものを用意すればいいのさ。そして、『どこでもかんたん夏・冬づくり』と言えば、ドラえもんの『どこでもドア』みたいにできあがりだよ。下の写真を見てごらん。」
「チョウやトンボなどの虫と温度計と氷がありますね。」
「この後、どうするのですか。」
「(1)の写真を見て、何か気がつくことはないかな。」
「温度計は22度くらいですね。つまり、初夏のような気温ですね。」
「(2)の写真を見て、何か気がつくことはないかな。」
「温度計はちょっと見にくいけど、5度ですね。うわあー! これは寒いですね。分かった! 氷を使って周りを冷たくすれば、気温が低くなり冬のようになり、虫たちは動けないのですね。」
「分かった! 温かければ、虫たちは自分の体も温かくなり、動くことができるんですね。」
「つまり、虫たち変温動物は、周りの温度によって動いたり、動けなくなったりと、変化するということですね。」
「そうだね。上の実験の続きだけど、氷の入れ物から出して元の温度にしたら、チョウもトンボも飛んでいったよ。つまりね、大切なことはね、実際に自分の目で確かめることなんだよ。そうすれば、きちんと覚えられるものだよ。これからも体験重視だね。」
恒温動物・変温動物について
変温動物を冷血動物というのに対し、恒温動物は温血動物とか、定温動物とかいう場合もある。恒温動物は自ら種の体温を持っていて、人間では35.6度であるが、犬は38.9度、ネズミは37.8度、猫は39度で、最も高いと言われるニワトリなどは42度もある。その反対にカンガルーなどの有袋類は35度とやや低めである。ところで、魚類は変温動物であるが、イルカはどうだろうか。ヒントはイルカは哺乳類であるということで、恒温動物で、35~37度くらいが平熱であるらしい。ということは、クジラも同じであろう。詳細はご自分で調べてみてください。
なお、変温動物たちが動き始める温度の目安としては、気温15度くらいだと言われている。春先にもっとも早く動き始めるアブ類などは、その温度になると、もそもそと動くのである。