2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(676)タマノカンアオイ
「今日はちょっと変()わった植物()を見()てみよう。タマノカンアオイという植物さ。」
「緑色()の葉()っぱは分()かりますが、どこに花()があるのですか。」
「むらさき色()の変()な形()をしたものがありますが、これがひょっとして花()ですか。」
「そうだよ、花()なんだ。あまり見()たことがないだろう。」
「えっ! 花()って、ふつうはきれいな色()をしているでしょ。」
「そうだね。虫()たちに来()てもらって、花粉()を運()んでもらうためにきれいな花()を咲()かせるものが多()いね。」
「そういうのを虫媒花()と言()うんですね。それから、風()によって花粉()を飛()ばす風媒花()というものもありますね。」
「ほほー。さすがは花()ちゃんだね。いろいろとくわしいね。感心()だね。」
「きれいな花()でもないし、こんなに地面()すれすれでは、風()も運()んでくれないね。」
「虫媒花()でも風媒花()でもない、さらに、ツバキのような鳥媒花()でもないんだ。」
「それでは、だれが花粉()を運()ぶのですか。」
「それがね、はっきりとしていないんだよ。カタツムリ、ナメクジ、ワラジムシ、ヤスデ、キノコムシ、アリとか、いろいろな説()があるんだ。」
「それじゃ、自分()でポロンと種()を落()としたりするのかなあ。」
「この仲間()はね、種()の実()りがあまりよくないし、種ができても自分()の近()くに落()とすだけなので、分布()が広()がらないので有名()なんだよ。」
「分布()が広()がらないというのは、どういうことですか。」
「例()えば、タンポポは風()に乗()り、オナモミなどは動物()にくっつき、実()のおいしいものは、鳥()や動物に食()べられて種()を遠()くに飛()ばすけど、この仲間()はちがうんだ。」
「どうやって広()がるのですか。」
「このタマノカンアオイの花()は春()だけど、この仲間()は、冬()から春に花()が咲()くのが多()いので、虫()たちも少()なく、どうしても自分()の力()で広()がるしかないんだよ。」
「自分()でポロンと種()を落()とすと、すぐ近()くに落ちて、遠()くに行()けないですね。」
「条件()が良()くても、10年()で1m()しか広()がらないから、おどろきだね。」
「ということは、100年()で10m()。1000年で100mですね。」
「ということは、10000年()で1km()ですね。」
「だからね、この仲間()は、分布()が広()がらず、日本()のあちこちにたくさんの種類()があるんだよ。タマノカンアオイのタマノって、何()だと思()う。」
「ひょっとして、『タマノ』とは、多摩()地方()という意味()ですか。」
「そうだよ。このタマノカンアオイは、多摩()丘陵()、登戸()のあたりで最初()に発見()されて、昭和()6年()に牧野()富()太郎()博士()によって新種()として発表()されたもので、多摩()地方()でもある一部()だけにあり、大変()めずらしい植物()なんだ。」
「そんなにめずらしく貴重()な植物()なら、もう少()しくわしく拡大()して見()てみましょう。」
「うわあー。この花()って、ハンコみたいですね。」
「八王子市()のある地域()では、そのままハンコノキと呼()ぶそうだよ。それでは、最後()に、カントウカンアオイという種類()の植物()もお見()せしよう。これも関()東()地()方()だけにあるものだよ。」
![写真3](newpic/676-3.jpg)
【カントウカンアオイ】 【タマカンアオイのように花弁()がうねっていない】
全国()に60~70種()以上()あるカンアオイの仲間()
カントウカンアオイは、タマノカンアオイに
比()べれば、
関東()地方()南部()から
静岡()などの
東海()地方()にも
分布()している。その
他()に
八王子()、
多摩()地方()にはランヨウアオイという
種()も
見()られる。なお、
上記()のように、この
仲間()は
分布()速度()が
著()しく
遅()く、地方それぞれにカンアオイが
存在()する。
そのいくつかを
次()に
紹介()する。トサノアオイ、ナンゴクアオイ、ミチノクサイシン、フジノカンアオイ、オクエゾサイシン、ユキグニカンアオイ、ツクシアオイ、コウヤカンアオイ、コシノカンアオイ、ミクニサイシン、アソサイシン、フクエジマカンアオイ、アマギカンアオイ、ナンカイアオイ、スズカカンアオイ、アツミカンアオイ、サツマアオイ、イセノカンアオイ、トクノシマカンアオイ、キソジノカンアオイ、トウゴクサイシン、トカラカンアオイ、カケロマカンアオイ、ウンゼンカンアオイ、ヤエヤマカンアオイ、ヤクシマカンアオイ、ヒゴカンアオイ、クロヒメカンアオイ、オキノシマカンアオイ、シモダカンアオイ、ジンダイジカンアオイ、
等々()は
地名()を
冠()するものだけであるが、その他にもまだまだいろいろと存在する。
なお、
先日()ある
友人()から、
庭()のタマノカンアオイの
花()が
終()わり、
種子()が
採()れそうだということで、
出()かけて
行()き、
大変()貴重()なタマノカンアオイの種子を
分()けてもらった。
果実()は
液果状()で
熟()しており、種子の
様子()を
観()察()することができた。種子には
多肉()の
種沈()(エライオソーム)が
付()いていて、アリの
好物()とのことである。そのうち、いつか、アリが種子を
運()ぶ
姿()を
見()たいものである。
【タマノカンアオイの種子()】