2.植物の世界
(2)葉・茎・根のつくりとはたらき
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(669)雨男の光合成実験(砂ちゃん先生とコラボ)
「花ちゃん、オー君。今日はぼくのお友達を紹介するね。」
「初めまして、私は砂ちゃん先生です。本名は『砂川俊輔』といいます。小学校の先生です。」
「初めまして、わたしは花ちゃんと言います。」
「こんにちは、ぼくはオー君です。よろしくお願いします。」
「花ちゃんもオー君も、理科や自然・植物・昆虫が大好きなんだってね。ぼくもそうだよ。子供たちに理科の楽しさや自然のすばらしさをどうやって教えようか、伝えようかと、いつも考えているんだよ。」
「砂ちゃん先生はね、いつもアイデアいっぱいで、おもしろい実験や楽しい観察方法を生み出す天才なんだよ。」
「うわあー、すごいな。ぼく尊敬しちゃいます。」
「わたしたちにも、いろいろ教えてください。」
「実は、今日も楽しくてためになり、だれにでもできる実験方法を考えてくれたのさ。そうだよね、砂ちゃん先生!」
「はい。それは、『雨男の理科教員が、本気で悩んで考えた光合成実験』というものなんです。」
「砂ちゃん先生は雨男なんですか。」
「そうなんだよ。観察や太陽が関係する内容など、野外に出なくてはならない授業となると、いつも雨になるんだ。ひどいときには、授業が始まる数分前に雨が降ってくることもあるし、学校行事や家族行事も雨が多いんだよ。」
「それは、はんぱなく超雨男なんですね。」
「それから、奥さんには、『砂漠に行ったら神様になれる』なんて言われるほどなんだよ。」
「ところで、花ちゃん・オー君は、『光合成の実験』というのは、聞いたことがあるかな。」
「小学校6年生になったら学習する内容ですね。」
「光合成って、何かな。」
「まず、人間など、動物は他のいろいろな物を食べて栄養としているね。植物も同じく栄養がなくては生きていけない。そこで、植物には光を利用して栄養を作りだすシステムを持っていて、それを『光合成』というんだ。」
「そして、その光合成というのは、おもに植物の葉で行われてね、葉の表面に光が当たると、そこでデンプンという栄養ができるんだよ。小学校では、『葉に光が当たるとデンプンが作られる』ということを学習するんだ。」
「ところが、砂ちゃん先生は雨男なので、いつも光合成の実験がうまくいかないそうなんだ。」
「そこで、雨男が真剣に悩んでまじめに考えたということなんだ。」
「砂ちゃん先生は、具体的にどうしたのですか。」
「ふつうの先生なら、光合成のためのセットをして、その後に見ればいいんだけど、ぼくの場合には、いつも暗くくもってしまったり、大雨が降ったり、ある時なんか、とつぜん雹が降ったりしたこともあるよ。」
「さすが、ウルトラ超雨男ですね。雨に好かれているんですね。」
「そこで、ぼくは悩んで考えたんだ。葉をその日ではなく、何とか数日前にやったものを見せられないかと考えたんだ。」
「何かすごいですね。時間をコントロールしちゃうんですか。」
「ドラえもんみたいに、自由に時間を行き来しちゃうのですか。」
「花ちゃんもオー君も興味をもったみたいだね。この先をもう少しくわしく話してもらえるかな。」
「葉というのはね、茎についている時は光合成をしているけど、取ってしまうと、デンプンというものを無くしてしまうんだ。そこで、ひみつの方法を考えたというわけなんだ。」
「どうやるのですか。」
「光合成ができた葉っぱをビニール袋に入れて、きっちりと閉めて空気をぜんぶぬいてしまうんだ。」
「それだけなんですか。」
「そのあと、冷蔵庫に入れるんだ。空気をぬいたり冷やしたりすることで、デンプンをそのまま残すことができるということさ。」
「空気を抜くことで酸素を少なくし、呼吸量を低くし、冷蔵庫に入れれば鮮度を保つことができるからなんだね。」
「酸素とか、呼吸量とか、ちょいとむずかしいけど、まあいいか。」
「つまり、そうすれば、次の日でもデンプンがあることが確かめられるのですね。」
「それって、すごいことですね。砂ちゃん先生はドラえもんみたいだ。」
「それがね、次の日(1日後)だけじゃないんだ。次の次の日(2日後)も、さらに、次の次の次の日(3日後)くらいまでもたしかめられるんだよ。」
「砂ちゃん先生、実験大成功、おめでとうございます。」
「光合成とか、デンプンとかちょっとむずかしいところも少しあったけど、よかったですね。砂ちゃん先生! ありがとうございました。」
「花ちゃんやオー君にほめられて、うれしいなあ。もっと研究をして、さらに良い方法や素材がないか、調べていくつもりだよ。」
「砂ちゃん先生、きょうはとても楽しいお話をどうもありがとうございました。砂ちゃん先生! 最高! 心から尊敬しちゃいます。」
「もう終わりなの。もっとお話を聞かせてください。」
「砂ちゃん先生はね、他にもあれこれと楽しい観察法や実験をいっぱい知っているんだよ。また今度、お話を聞かせてもらおう。」
「今日はどうもありがとうございました。必ずまた来てください。」
砂ちゃんの実験観察後記(2022.10―理科教室より抜粋)
光合成の実験は、継続して晴天が見込める時期に行えれば、ほとんどの場合、明確に結果が出る。しかし、ジャガイモの生育状況やカリキュラムの関係上、どうしても梅雨時に当たってしまう。また、私のようになぜか雨を降らせてしまう場合もある。そのような場合は、梅雨の合間の晴天を天気予報で確認し、今回の研究結果を参考にしていただければ幸いである。
理科の授業では、天候に左右されてうまくいかない実験があるので、今後も「雨天でもできる理科実験授業案」を研究していきたい。また、今回の発表を機に、同じ悩みを抱え、研究されている先生方と情報交換ができればと願っている。