東書キッズ

１．身近（みぢか）な自然（しぜん）の観察（かんさつ）
　（3）季節（きせつ）と生物（せいぶつ）
２．植物（しょくぶつ）の世界（せかい）
　（3）被子植物（ひししょくぶつ）（双子葉類（そうしようるい））のなかま
　（11）おいしい植物（しょくぶつ）の世界（せかい）

（666）春（はる）の雑草（ざっそう）採（と）り・その２　カキドオシ

「花（はな）ちゃん！春（はる）は楽（たの）しいね。あちこちにいろいろな花がいっぱいだ。あっ！あそこにも、うすいむらさき色（いろ）の花があるよ。もう少（すこ）し近（ちか）くでよく見（み）てみよう。」

「そうね。そうしましょう。虫（むし）メガネも使（つか）ってみよう。」

「そうだね。虫（むし）メガネは、大切（たいせつ）なツールだね。今（いま）まで気（き）がつかなかったことを教（おし）えてくれるもんね。あれ、むらさき色（いろ）と思（おも）ったけど、少（すこ）し赤（あか）っぽい感（かん）じのところもあるね。」

「それから、花（はな）の形（かたち）もおもしろいね。花の中（なか）には細（こま）かい毛（け）があるし、こいむらさき色（いろ）の点々（てんてん）もあって、とてもおしゃれな感（かん）じだね。」

「ていねいにじっくりと見（み）ると、いろいろと発見（はっけん）がいっぱいなんだね。このお花（はな）の名前（なまえ）はなんていうの。花ちゃんなら知（し）ってるよね。」

「これは、シソ科（か）の『カキドオシ』という名前（なまえ）だったと思（おも）うわ。でも、こんなにくわしく見（み）たのは初（はじ）めてかもしれないわ。名前を知（し）っているからといって、それで終（お）わりにしてはだめね。もっと、よく見ないといけないね。」

「そのとおりだね。名前（なまえ）を知（し）ることは、友達（ともだち）になる『初（はじ）めの一歩（いっぽ）』だね。でも、それで終（お）わりにしないで、よりくわしく知るために虫（むし）メガネで見（み）たり、さわったり、においをかいだりすることが大事（だいじ）だね。そして、時（とき）には食（た）べることもいいんだよ。」

「でも、毒草（どくそう）だったら大変（たいへん）ですね。」

「そうだね。口（くち）に入（い）れるものは慎重（しんちょう）にしないといけないね。でも、このカキドオシなら、ぜったいだいじょうぶだよ。」

「どうして、だいじょうぶなのですか。」

「カキドオシというのはね、昔（むかし）から薬（くすり）として使（つか）われていたんだよ。名前（なまえ）を『カントリソウ』といってね、小（ちい）さな子供（こども）の『疳（かん）』を取（と）るのによかったそうだよ。」

「えっ！カリントウソウ？ですか。」

「いやいやカントリソウだよ。昔（むかし）から赤（あか）ちゃんがギャーギャーと泣（な）いて、どんなに手（て）をつくしても泣きやまないことを、『疳（かん）の虫（むし）』とか、『疳が強（つよ）い』とか言（い）ってね、体（からだ）の中（なか）にいる虫が悪（わる）さをしているとか言うんだよ。それによく効（き）くということで、カントリソウ『疳取草』になったんだよ。」

「そうなんですか。小（ちい）さなお花（はな）にもそれなりに、いろいろと歴史（れきし）があったんですね。それから、カキドオシという名前（なまえ）にも意味（いみ）があるのですか。」

「そうだね。この植物（しょくぶつ）はね、花（はな）が終（お）わった後（あと）に、茎（くき）がどんどんと地面（じめん）を伸（の）びてね、かきねをくぐりぬけるように伸び、地面を通（とお）るので、それで、『かきねどおし』が『カキドオシ』になったというわけさ。」

「なるほど、そういうことですか。名前（なまえ）にもきちんとわけがあるんですね。ところで、カキドオシは食（た）べられると、さっき教（おし）えてくれましたが、何（なん）だかぼくは食べてみたくなりました。」

「そうね。どんな味（あじ）なんでしょう。食（た）べてみよう！オー君（くん）！」

　⋯⋯ということで、みんなでおひたしを作（つく）ったとさ⋯⋯。

「花（はな）ちゃん。とってもおいしいね。」

「そうね。歯（は）ごたえや香（かお）りもあっていいね。」

「それはよかったね。あっ！そうだ。今（いま）、カキドオシを湯（ゆ）がいたお湯はどうした。」

「まだ、片（かた）づけは終（お）わっていませんが⋯⋯。」

「まだ、キッチンにありますが⋯⋯。それがどうかしましたか。」

「そのお湯（ゆ）を捨（す）てちゃだめだよ。それこそ、和製（わせい）ハーブティだ！みんなでお茶（ちゃ）として飲（の）んで香（かお）りも楽（たの）しもう！」

和製（わせい）ハーブティーを召（め）し上（あ）がれ！

　ハーブの定義（ていぎ）は、植物（しょくぶつ）で香（かお）りがあり、人間（にんげん）生活（せいかつ）に役立（やくだ）つという意味（いみ）です。和製（わせい）ハーブとして有名（ゆうめい）なものでは、ミツバ、サンショウ、シソ、ショウガ、セリなどがあります。これらは香草（こうそう）としても価値（かち）のあるものですが、普通（ふつう）の野原（のはら）に生（は）えている野外（やがい）植物（しょくぶつ）でも、ハーブしてその香りのよいものがありますが、その筆頭（ひっとう）としてカキドオシもその仲間（なかま）に入（い）れて欲（ほ）しいと思（おも）います。生（なま）のままでもよいし、また少（すこ）し陰干（かげぼ）ししてからお茶（ちゃ）のようにして飲（の）むのもよいでしょう。いずれにしても様（さま）々（ざま）な植物が和製ハーブティーとして利用（りよう）されています。
　また、モンタ博士（はかせ）がぜひ皆（みな）さんに試（ため）してほしい、と思（おも）うものにクロモジという植物（しょくぶつ）があります。やや乾（かわ）いた尾根沿（おねぞ）いなどに多（おお）く繁茂（はんも）する植物で、楊枝（ようじ）としての利用（りよう）などでもその名（な）は有名で知（し）れ渡（わた）っていますが、お茶にすると大変（たいへん）上品（じょうひん）な香（かお）りで是（ぜ）非（ひ）お薦（すす）めです。また、和製ではありませんが、レモングラスもお庭（にわ）に一株（ひとかぶ）植（う）えておくと、香りを楽（たの）しめるもので、シトラスな芳香（ほうこう）が最高（さいこう）の逸品（いっぴん）です。