2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(10)あら、不思議? 植物マジックの世界
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(656)アブラチャンの新芽は燃えるのか?
「あれ? いろいろな葉っぱがいっぱいあるな。何でだろう。」
「どれも小枝のようで、新芽のようですね。」
「新芽って、なあに、花ちゃん。」
「新芽というのはね、春になって芽ぶいたものよ。何でこんなにあるのかな。」
「やあ! 花ちゃん、オー君。こんにちは! これはね、モンタ博士が近くの雑木林やおうちの近くを歩きながら採集した、いろいろな新芽なんだよ。」
「たくさんあるみたいですが、いくつあるのですか。みんなちがう種類のように見えますが。」
「よく気がついたね。いろいろあるだろう。上の写真にあるものはね、エゴノキ、ヤマザクラ、ニガイチゴ、ヤマツツジ、フジ、アオハダ、カマツカ、ウリカエデ、ウグイスカグラ、イヌザクラ、ウワミズザクラ、クマシデ、ツリバナ、マルバアオダモ、モミジイチゴ、ヤブムラサキ、ミズキ、ヤマウルシ、リョウブ、オトコヨウゾメ、コゴメウツギ、サンショウ、イロハモミジ、ケヤキ、ツクバネウツギ、コクサギ、カキノキ、アケビ、タチヤナギ、スイカズラ、コブシ、エノキ、クサギ、ヌルデ、ナツハゼ、ムラサキシキブ、ミツバアケビ、コナラ、ナワシロイチゴ、アカメガシワ、ガマズミ、コバノガバズミ、エンコウカエデ、マルバウツギ、アカシデ、イヌシデ、ゴマギ、アカメヤナギ、トウカエデ、オニグルミ、クワ、ノイバラ、ムクノキ、イチョウ、クスノキ、クロモジ、アブラチャンの合計57種類の木だよ。」
「こんなにたくさんの新芽をどうするのですか。」
「ローソク実験をするんだよ。」
「ローソク実験? 聞いたことないですね。何をどうするのですか。」
「いろいろな枝があるけど、それを1本ずつローソクの火であぶる実験さ。」
「なぜ、そんなことをするのですか。」
「この枝の中に、アブラチャンという名前の植物があってね、油をたくさんふくんでいる木なんだ。アブラは日本語の油で、チャンというのは中国語で同じく油を意味するんだ。そこでね、油であれば火に燃えやすいよね。それで、他のいろいろな植物とくらべて、本当に燃えやすいのかどうかを実験したんだよ。」
「へえー。おもしろそうな実験ですね。」
「それで、結果はどうだったのですか。」
「結果の前に、同じような実験をした人はいないかなと思ってね、ネットや植物図鑑で調べたけど、一人もいなかったね。結果はね、下の写真だよ。」
「わあー。勢いよく燃えていますね。」
「パチパチという音もしていたくらい、よく燃えていてびっくりしたね。」
「炎がしっかりと見えますね。」
「でも、この実験は火を使うので、子供だけではぜったいにダメだよ。」
「このくらいよく燃えれば、いろいろと利用できますね。」
「そうだよ。果実や材、樹皮には油が多く、灯火用や薪としても使ったらしいよ。熊を捕るマタギという猟師の人は、たき火にも使ったと記録があるんだよ。」
「すごいですね。アブラチャンパワーですね。」
「キャンプに行った時に、この木が分かれば火をおこしやすいですね。」
「この木は川沿いなどに多いんだ。それから、少しくらい湿っていても、とてもよく燃えるというからおどろきだね。」
「すごいんですね。自然の野山は宝物がいっぱいですね。」
「そうだね。里山・雑木林など、その利用価値が低くなっているけど、昔の人たちは、いろいろな木の特性を生かして生活していたんだね。」
「そのとおりですね。持続可能な社会を目指し、これからも自然環境を大切にしていきたいですね。」
「そのとおり。花ちゃんも大きくなって、言うことが立派になったね。感心・感心だよ。」
アブラチャンのひとり言
わたしは、アブラチャン(油瀝青)という名前です。アブラは油で、チャンとは、瀝青(石油や天然ガス)ということで、炭化水素を主成分とする化合物で、松脂と同じように粘着性のある油状の物質なんです。最近は、合成樹脂や金属などで作られたものが主流のようでしょ。でも、そんなのはここ数十年なんですよ。自然界に存在するものを応用して作る技術というのは、これからも大切であり、とても価値のあるものだと思うわ。これからも、里山・雑木林の有難みを忘れないでね。よろしくね。
あっ! そうだ。モンタ博士は、新芽で実験したというけど、わたしの実が成る頃にもう一度同じような実験をしたらいいんじゃないかしら。同じような結果が出ると思うけど、モンタ博士、どうかお願いね!
あっ! それから言い忘れましたが、モンタ博士がなぜ、この実験で、ろうそくの火を使ったかというと、それは、ガスバーナーなどでは、火力が強すぎてしまい、激しく燃え過ぎてしまうからだそうですよ。