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(653)春の山菜採り、てくてく・その3 タチシオデ
「モンタ博士! この前のヤブカンゾウやコゴミは、とてもおいしかったですね。」
「そうだね。本当にうまかったね。ヤブカンゾウは甘みがあるし、コゴミは、マヨネーズがよく合うね。でも、山菜採りって、ちょっとね⋯⋯。」
「ちょっとって、何か問題でもあるのかな。」
「そうじゃないよ。ヤブカンゾウを採るには同じしせいをするでしょ。ぼくみたいに子供はいいけど、お年寄りや腰の悪い人には、ちょっと大変ではないかなと思うんだよね。」
「そうね。わたしもあまり気にしないけど、コゴミやノビルを採るときに、手がよごれていやがる人がいるかもしれないね。」
「そうだね。でも、おいしいものが食べられるんだから、少しぐらいは、がまんしなくてはならないのかな。」
「まあまあ、そういうこともあるだろうけどね。山のアスパラガスと呼ばれる山菜ならば、腰もいたくならないし、手もよごれる心配はないよ。ともかく、立ったままで、かんたんに採れて、その上、味もバツグンにうまいんだよ。『良いとこづくめの山菜』だよ。」
「えっ! そんな山菜があるんですか。」
「山のアスパラガスって、何ですか。」
「それはね、幻の山菜とも呼ばれるものなんだ。」
「幻の山菜ですか。ますます気になりますね。どんな植物なんですか。」
「正式な名前は、タチシオデという植物なんだ。とても栄養価が高くてね、ビタミンCや食物繊維が多く、美肌効果や疲労回復にもいいんだ。」
「そんな山菜があるのですか。」
「一か所にたくさんないので、幻の山菜と言われているけど、モンタ博士のおうちの近くには、かなりあるんだよ。つる性の植物で、ほかの植物にまきつきながら、2mぐらいまで成長する植物でね。新芽が伸びる所(上の写真の矢印の部分)を採るんだよ。芽が伸びる様子や食感がアスパラガスに似ているので『山アスパラ』とも言うんだよ。」
「『良いとこづくめの山菜』というのは、どうしてですか。」
「てくてく歩きながら採ればいいんだ。新芽はまっすぐに伸びるから、立ったままで手を出せばいいんだ。腰もいたくならない、手もよごれない、一度にたくさん採れる、味も最高と4拍子そろった山菜だね。」
「良いとこづくめとか、山アスパラとか、4拍子そろったとか、幻の山菜とか、今すぐにでも採りに行きたいです。」
「ぼくも採りに行きたいです。」
「それでは、今からみんなで行こう!」
⋯⋯というわけで、タチシオデを採りに近くの山に行き、たくさん採集できたとさ。
「いつものように水あらいをしてから、お湯でゆがいて⋯⋯。」
「それから、お湯をこぼしてから、冷たい水で冷やして、できあがり!」
「さあ! おしょうゆとおかかをパラパラとやって、いただきまーす。あっ! そうだ。コゴミも少し残っていたから、いっしょに食べよう。」
「うわあー。タチシオデって、とてもおいしいです。アスパラガスに似ている感じがします。」
「ほんとうにうまくて、うれしいです。幻の山菜! 良いとこづくめの4拍子そろった山菜だ! タチシオデ! 最高!」
健康や美容を気にしている人にお薦め!
食物繊維には便秘改善効果があり、漢方でも血行促進、通経、関節炎に用いられている。細かく刻み自然乾燥させた根や茎を水で煎じて使うこともある。上記ではタチシオデについて記してあるが、同じ属のシオデという植物も同様にお薦めである。両種とも花は小さく緑色であまり目立たないが、花弁が反り返って球状の形をしているのが特徴的である。花の時期はタチシオデが梅雨の頃で、シオデは夏に開花する。なお、葉での分類のポイントは、葉裏に光沢があるのがシオデで、無いのがタチシオデである。なお、どちらも美味である。