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(3)季節と生物
2.植物の世界
(11)おいしい植物の世界
(651)春の山菜採り、てくてく・その1 ヤブカンゾウ
「暖かくなりましたね。うれしいです。春ですね。」
「啓蟄も過ぎて、虫たちの出番ですね。楽しいです。春ですね。」
「さあ! いよいよ『てくてく散歩』の季節だね。みんなであちこち歩こう!」
「あっ! あそこに緑のとんがりがいっぱい見えますね。」
「そうだね。みんなでもっと近くで見てみよう。」
「あっ! これは、ヤブカンゾウの春の芽ですね。たしか、食べられるんですね。」
「えっ! 食べられるって、本当なの。」
「そうだよ。ヤブカンゾウは、春の命のみなぎりをギューッとつめこんだようだね。花ちゃんとオー君は、食べたことあるのかな。」
「植物図鑑には食べられると書いてありますが、正直に言うと、わたし、実際には食べたことがないんです。」
「そうか、それなら、今日はみんなで『ヤブカンゾウの酢味噌あえ』を食べようよ。」
「どうやって食べるのですか。レシピとかあるんですか。」
「お湯をわかして、ヤブカンゾウをゆでて⋯⋯。あっ! そうだ。ゆでる前に、生で採りたてを食べてみようよ。」
「生でもだいじょうぶですか。えぐい味とかしないんですか。」
「そんなに心配することはないよ。モンタ博士の経験からすると、ちょうど今くらい、つまり10cm未満くらいの芽なら、生でもけっこう???な味がするよ。」
「生でもけっこう???な味って、どんな味なんですか。ちょっとこわいのですが⋯⋯。」
「だいじょうぶ、植物研究、山菜採り経験40年のモンタ博士にまかせてごらん。さあ、いっしょに採りたてヤブカンゾウを食べよう。」
「それでは、いただきましょう。どこから採ればいいのかな。」
「そうだね。地面をほんの少しだけほる感じかな。緑色の芽の下が白っぽくなっているね。そのあたりから採ればいいんだ。手でもいいけど、ハサミがあるとベストだね。」
「それでは、採ります。エイっと! 次に、ポイっと! お口の中へ! あっ! うっ! おっ!」
「どうしたのオー君。おいしい? わたしも続けて、エイっと! 次に、ポイっと! お口の中へ! うわあああああああああ! あまーい。」
「そうだろう、そうだろう。あまいだろう。ヤブカンゾウのカンゾウとは、甘い草と書いて、カンゾウと読むんだよ。」
「たくさん採って、さっきお話ししてくれた『ヤブカンゾウの酢味噌あえ』を作ろうよ。」
「酢味噌あえ! おいしそうですね。採りましょう。採りましょう。」
「そうだね。春の命をみんなでいただこう。でも、採りすぎてはいけないよ。ほんのちょっとだけ、春の雰囲気、春の味を楽しむだけだよ。また、来年のため全部を採っちゃだめ、自然のめぐみは大事にしようね。」
「分かりました。そのとおりですね。食べられるだけにしますね。」
「そうだね。では、今からモンタLABOに帰って作ろう!」(※LABO=研究室)
⋯⋯ということで、モンタ博士のおうちのキッチンで、作り始めたとさ⋯⋯。
「モンタ博士は今から、料理の鉄人モンタに変身します。まず、ヤブカンゾウをきれいに水であらい(下写真)、塩を少し入れたお湯で少しゆでます。」
「料理の鉄人=モンタ博士! きちんとできるのですか?」
「料理は愛です。だいじょうぶ。次に、味噌、砂糖、酢、みりんを1:1:1:1でまぜまぜして、酢味噌を作る。」
「それからどうするのですか。」
「もうおしまい。さっきゆでたヤブカンゾウの水気をとって、酢味噌を入れれば、ハイ! できあがり!」
「もうできあがりですか。何かポイントとかないのですか?」
「そうだね。ゆでる時には熱を加えすぎないようにね、それから、酢味噌であえる前に冷たい水でよく冷やすとおいしいね。」
「いただきまーす。うわああああああ! おいしいです。酢味噌最高!」
「わたしもいただきまーす。うわああああああ! 甘くておいしくて、笑顔になっちゃいます。」
「そうだね。酢味噌がきらいな人はね、おかかとおしょうゆで『おひたし』でもいいよ。ともかく、春の大地のめぐみなんだ。ありがとう!」
「よーし! さらにおいしい植物探しをしましょう。ぼくたちは、山菜ハンタートリオです。今後もよろしく。」
毒草とまちがえないで!
スイセン、ヒガンバナ、キツネノカミソリなど、細くて長くて緑色でよく似ている毒草が多いので十分に注意しましょう。特に口に入れるものなので、植物や山菜にくわしい人といっしょに行きましょう。間違えて大変な事故になる場合もあり、テレビやニュース新聞などでも報道されています。
日本には三大毒草として、ドクウツギ、ドクゼリ、トリカブトがありますが、どこにでもあるものではなく、個体数も少ないので、あまり心配はいりません。しかし、以下に記す毒草は、よく見かけるものなので、注意が必要です。よく似た種との比較を書きますので、参考にしてください。
①ノビルとスイセン
ノビルは葉をちぎるとネギの匂いがしますが、スイセンは全く匂いがしません。また、ノビルは球根が丸い形ですが、スイセンはフラスコのような形です。なお、スイセンは全草が有毒であり、特に球根の毒性は強いのです。
②ヤブカンゾウとキツネノカミソリ
開花の時期が違います。ヤブカンゾウは6~7月頃、キツネノカミソリは8月を過ぎてから花が咲きます。ヤブカンゾウは田んぼのあぜ道や川の土手などに生えています。
③ニリンソウとトリカブト
見分ける方法としては、花に注目しましょう。ニリンソウは春先に白い花を咲かせ、トリカブトは秋頃に紫色の花が咲きます。また、ニリンソウは茎が高くなりませんが、トリカブトは成長すると茎が立ち上がり、1mほどになります。