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(4)実験・観察・調査から
(638)植物の香り・ききめ実験その2 カビ実験
「この前のニンニクやネギなどを使って、セイヨウミツバチの動きについての実験は、とてもおもしろかったね。」
「そうね。前から聞いたことはあったけど、実際に試してみるといろいろなことが分かったね。」
「香りやにおいのする物って、生き物にとっても影響があって、ダメージが強いんだね。それを人間はいろいろと利用してきたというのもすごいよね。」
「それでね、わたし思ったんだけど、食べ物には賞味期限とかあるでしょ。それを過ぎると腐って食べられないね。それはなぜかな。」
「なぜかな? 深く考えたことはないけどね。バイキンとかが増えて食べられなくなるのかな。」
「ふつうはそうでしょ。よくカビが生えて食べられなくなるとか聞いたことあるもんね。」
「そうだ。そのカビってやつのため、捨てることあるよね。」
「バイキンとかカビとかも生き物でしょ、それでね、考えてみたの。この前のミツバチの実験と同じように、いろいろなにおいのある物は、カビやバイキンなどの発生を止めてくれるそうだけど、どんなものが一番よくききめがあるのかなと思ったのね。」
「分かった。つまり、この前のようにビンの中にニンニクやワサビ、それにネギの仲間と食べ物をいっしょに入れて、どんな変化があったかを調べたいということだね。」
「ピンポーン。そのとおり。それで、オー君! いっしょにやってくれるかな。」
「もちろんさ。これはおもしろくなってきたね。さあ! やろう。でも、どんな食べ物がいいのかな。」
「いろいろとあるけど、パンとかでやってみようよ。」
「いいね。いいね。花ちゃんとオー君の共同研究ということだね。」
「そうね。そのとおりね。モンタ博士にも参加してもらおうか。」
「ふーむ。いつもモンタ博士には、あれこれ教えてもらっているけど、今回は、ぼくたちだけでやってみようよ。そして、モンタ博士をアッとおどろかせちゃおう。」
「そうね。前回の実験をもとに、失敗してもそれも勉強だもんね。」
「では、さっそく、用意しよう。パンはすぐに用意できるね、ビンも必要だな。」
「だいじょうぶ。もう用意してあるもん。ビンの代わりにいいものがあるわ。」
「すごいね。花ちゃん。ブラボーだね。それじゃ、パンを切ろうか。」
「ちょっとまって、ただ入れるだけではだめよ。モンタ博士が言っていたでしょ。条件を同じにすることが大切だって。」
「そうか。定規で測って切ろう。」
「次に、前回と同じように6つのビンに、ニンニク、ショウガ、タマネギ、ノビル、ワサビ、長ネギを入れよう。」
「ミツバチの実験のように、すぐに結果がでるといいけどなあ。」
「そうね。でも、ちょっと時間がかかるんじゃないかな。」
「まあ、いいよ。ゆっくりていねいにやっていこうよ。」
⋯⋯ということで、以下のように結果がでたとさ⋯⋯。
ネギ類やその他の香り匂いの強い植物とパンのカビとの関係
- |
6日後 |
8日後 |
11日後 |
13日後 |
15日後 |
30日後 |
ニンニク |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
ショウガ |
◎ |
〇 |
△ |
× |
× |
× |
玉ネギ |
〇 |
〇 |
△ |
× |
× |
× |
ノビル |
◎ |
〇 |
〇 |
△ |
× |
× |
ワサビ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
長ネギ |
◎ |
〇 |
△ |
× |
× |
× |
◎:ほとんど発生しない 〇:カビを確認 △:カビが半分ぐらい ×:カビがほどんと
「モンタ博士、わたしたち実験をしたんです。」
「どんな実験なのかな。」
「この前のミツバチの実験からヒントをもらったんです。」
「いろいろな香り・においをもつ植物は、カビやバイキンなどに影響をおよぼすということが分かったんです。ニンニクとワサビを入れたパンは、まったくカビが生えませんでした。特に、ニンニクを入れたパンは、なんと! 1カ月ずうっと、ふわふわ状で、本当に驚きでした。」
「それはすごいね。自分たちでやったことがすばらしいね。前の実験から次の課題を見つけて調べてみようとしたことが立派だ。ミツバチの実験を生かしたんだね。いろいろと失敗や反省がたくさんあって、それらを次に生かすことが大切だね。それでは、ゆっくりと二人のお話を聞くことにしよう。」
植物の香り-匂いは⋯⋯つまり!
今回の実験で明らかになったように、植物の香り・匂いには、細菌や菌類へも影響を及ぼし、さらに前回のセイヨウミツバチの実験とも合わせて、想像以上の力をもっていることが判明しました。また、ゴキブリやイモリ、ネズミなどでさえも、これらの植物のにおいの中におくと死んでしまうことが実験的に確かめられています。さらに、タマネギやニンニクのにおいには、チャの花粉に独特な傷害を与えます。その傷害の仕方が200キロレントゲン(窓ガラスを褐色に変えてしまうほどの超高線量)のガンマ線(放射線の一種)の影響と同じであることも知られています。
様々な実験から植物の香り・匂いは、それらが長い進化の過程で自ら身につけた、自己防衛のためのツールであると考えられます。なお、花の匂いは昆虫を誘引して受粉をし、種子を作る事に効果があり、果実の匂いは、動物に食べてもらって、種子(子孫)をまき散らすのにも役立っています。