2.植物の世界
(13)植物で健康シリーズ! 薬の世界
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(637)植物の香り・ききめ実験その1 虫実験
「どうだろうかな。うまくいくかな。ぜひ、試してみたいな。」
「どうしたのですか。さっきから独り言ばかりですが⋯⋯。」
「あのね、節分の時に、ヒイラギの葉とイワシの頭とを軒下などにぶら下げると言うよね。」
「でも、今ではそのようなおうちは少ないそうですが⋯⋯。」
「今ではあまり見かけなくても、昔からの言い伝えとかは、うそではないみたいですね。」
「ヒイラギの葉やイワシの頭などは、オニが来ないようにトゲトゲや悪臭で、オニを退治するためとかですよね。」
「それでね、ある本には、節分だけでなくニンニクをつるしておくと、病人がでないという言い伝えがあるそうなんだ。」
「そうですね。吸血鬼ドラキュラもニンニクには弱かったらしいですね。」
「それでね、迷信のように思えることにも、本当はちゃんとした理由があることを確かめるために、ある実験をしだんだよ。」
「どんな実験なんですか?」
「ビンの中に、ニンニクを入れたものと入れないものを用意して、それにセイヨウミツバチを入れたんだよ。」
「その結果はどうだったのですか。」
「そうだね。入れてからずうっと見ていたんだけど、数分したら、ニンニクを入れたものでは、セイヨウミツバチの動きがゆっくりとにぶくなったんだ。何も入れないビンでは、そのまま元気にセイヨウミツバチは動き回っていたよ。」
「ニンニクには、すごいパワーがあるということですね。」
「それでね、香りやにおいのある食べ物って、ニンニクだけじゃないでしょ。長ネギ、タマネギ、ノビル、ショウガ、それにワサビもあるよね。それらを入れた時にどんな変化があるかを調べてみたらどうかなと思ってね。」
「それって、すごい実験ですね。モンタ博士」
「わたしたちもいっしょにやりたいです。お手伝いします。」
「それはうれしいよ。ところで、実験というのはね、なるべく同じ条件でないと正確な結果がでないこともあるんだ。」
「そうですね。入れる物の量とかがバラバラだといけないですね。」
「でも、大学での研究とかとはちがって、その傾向というか、だいたいのようすが知りたいです。ともかくやってみたいです。」
「そうだね。この実験を行いそのデータをもとにして、科学論文を書くわけではないから、まあいいか。それよりも、花ちゃんやオー君たちが、興味・関心をもってもらいたいんだ。それでは始めよう!」
「まずは、たくさんのセイヨウミツバチを採ってきましょう。」
「その必要はないよ。きのうね、もう採集してあるんだ。」
「うわあー。本当ですか。準備いいですね。」
「入れ物はどうしますか。」
「それも心配ないよ。よく食べるジャムがあって、そのビンが6こあるよ。」
「それも準備できているんですね。さあ! 始めましょう。」
「セイヨウミツバチの動きがどうなるかをよく見よう。まったく動かなくなるまでやるとかわいそうだから、動かなくなったところで放してやろう。」
⋯⋯そして、数十分がたちました、さて、どうなったでしょう⋯⋯。
「それでは、セイヨウミツバチと植物の香り・におい実験の結果発表をします。」
ネギ類やその他の香り・匂いの強い植物とセイヨウミツバチの関係
- |
5分後 |
10分後 |
15分後 |
20分後 |
25分後 |
30分後 |
40分後 |
ニンニク |
〇 |
△ |
△ |
△ |
× |
× |
× |
ショウガ |
◎ |
〇 |
〇 |
△ |
△ |
× |
× |
玉ネギ |
〇 |
〇 |
△ |
△ |
△ |
× |
× |
ノビル |
◎ |
◎ |
◎ |
〇 |
〇 |
〇 |
× |
ワサビ |
◎ |
〇 |
△ |
△ |
△ |
△ |
× |
長ネギ |
〇 |
△ |
△ |
△ |
× |
× |
× |
◎:とても活発 〇:上下移動の動きあり △:上下運動止まる ×:ほとんど動かない
「うーむ。どうだったのかな。はたして正しい実験だったかな。心配だ。一応終わったけど、以下、反省点をまとめたので読んでほしいなあ。」
実験後のモンタ博士の失敗のつぶやきいろいろ
たくさんの反省があるので、以下箇条書きに記す。①それぞれの量が目分量であり重さや塊が同一ではなかった。②セイヨウミツバチの強弱や大きさなど個体差もかなりあった。③1匹ずつ入れたので正確さに課題あり。データが少なすぎる。④ネギ類のアリシンの量や質などを測定できず考慮していなかった。⑤昆虫の呼吸量の少なさから小瓶にしたが、もう少し大きい方が良かった。⑦1回だけの実験結果であり、やや統計的に危険度が多いと感じた。⑧ワサビは生の天然物でなくチューブ入りを使用した。⑨表のまとめ方は良かったのか等々、たくさんの反省点があり、さらに精密な実験が必要であると感じた。
迷信ではなく、科学的な根拠あり!
古より言い伝えられている事には、古くからの人々による連綿とした試行錯誤があり、それが科学を発達させてきたとも言える。匂いについて、殺傷力をもつということは、虫などに対する様々な植物の自衛手段であると思われる。私たちの先祖は、それらの事を体験的に知っていて、ニンニクを使い、ユズ湯やショウブ湯等、日常生活の工夫をしてきたのである。また、美味しいマグロの刺身を食べるのに、ワサビおろしやシソの葉を添える知恵を身につけていったと思われる。このように、植物の香り・においが人間生活に役立っている例は、これらの他にいくらでもあるように考えられる。今後も香り・においの研究がさらに進み、より健康に過ごせるようになってほしいと思う。