2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(636)ツバキの花の解剖報告(私失敗しないので)
「これはツバキの花ですね。赤くてとてもきれいなお花ですね。」
「ツバキについては、ぼくも知っているよ。モンタ博士に教えてもらったもん。」
「ほほー。そうだったかね。それでどんなお話をしたかな。」
「まず、漢字で『椿』つまり、木へんのとなりに春は、花の咲く季節を表しているんですね。ツバキの語源は、てかてかと『つや』があるからとか、『つやき』(艶木)とか、厚い葉っぱなので、『あつばき』(厚葉木)と言うんですね。」
「うわあー。すごいね! オー君。よく覚えているわね。」
「それから、ツバキは葉っぱの表面にクチクラ層というワックス層があり、乾燥や寒さから守ってくれるんだ。クチクラ(Cuticula)というのはラテン語で、英語読みすると、『キューティクル』といって、シャンプーやリンスのCMでも使われているんだ。」
「すばらしい。ブラボー。そんなにしっかりと覚えていてくれて、モンタ博士は涙がでるくらい感激・感動だよ。」
「それから、ツバキは虫媒花(虫が花粉を運ぶ)でも風媒花(風が花粉を運ぶ)でもなく、『鳥媒花』(鳥が花粉を運ぶ)と言うんですよね。ところで、そこで疑問というか、分からないというか、困ったというか、『鳥媒花』はその作りががんじょうというか、しっかりしているそうですが、どんな感じなのか、どのくらいがんじょうなのか分からないんです。」
「そうか、いい質問というか、いい疑問だね。がんじょうというけど、本当かどうか。見たことあるじゃなくて、さわったこと、それから、花をくわしく手にとってみたことがないかもしれないね。そうだ。今日は、みんなでツバキの花の解剖をしてみよう。」
「花びら、おしべ、めしべなど、1つ1つていねいに見ていくんですね。」
「そうだよ。二人にはお手伝いしてもらうよ。助手になってほしいね。」
「はい。分かりました。モンタ博士は解剖の先生。ドクターモンタに変身ですね。」
「では、ツバキの解剖を始めよう。では、助手さん! メス!」
「はい! メスではなかった。カッターをどうぞ。」
「解剖、だいじょうぶでしょうか。」
「だいじょうぶ。わたし、失敗しないので! ドクターモンタの登場です。」
「テレビの『ドクターX』みたいですね。」
「まず、カッターを入れる前に、花の裏側を観察しよう。何かあるね。」
「これは、ガクですか。花びらより少し小さいようで、何枚もあります。」
「1・2・3⋯⋯全部で10枚近くあります。」
「たくさんあるということは、がんじょうで強い感じだね。では、次に花びらを一枚一枚取っていこう。」
「花びらは、ちょっと厚い感じがします。」
「それに花の下の部分はくっついてます。」
「バラバラにならないんだね。これも強くがんじょうな感じだね。次に、その花を全部取りのぞいてみよう。」
「花がスポッと取れました。花びらといっしょにおしべも筒のように取れました。次はどうするのですか。」
「ゆっくりとていねいに赤い花びらだけを取ることにしよう。」
「残ったのはおしべですね。いっぱいついていますね。いくつあるんでしょうか。」
「それじゃ、数えてみよう。1・2・3⋯⋯うわあー。150本もあるぞ。」
「たくさんあるね。それから、このおしべって、ちょっと変わっています。」
「どんなふうに変わっているの。」
「花びらのように上はバラバラですが、下がくっついています。」
「それから、下のほうは何だか固い感じがします。中はどうなっているのかな。」
「それでは、おしべのかたまりがどうなっているか。開いてみよう。」
「けっこう固い感じです。あっ! そうか。この固さがあるからがんじょうなんですね。強いんですね。おしべの下の方は上よりも厚いみたいですね。」
「それでは、輪切りにしてみるぞ。」
「解剖してみて、かなりしっかりしていることが分かったね。」
「ガクもいっぱいあるし、花びらも厚くて下がくっついていて、おしべも下ががっちりしている。だから、鳥が口ばしを入れたくらいなら、びくともしない。がんじょうなんですね。」
観察力を高めるために、ツバキ・サザンカの比較にチャレンジしよう!
似たもの同士をよく見て観察することにより、観察力が高まることは知られている。ツバキやサザンカは花以外でもよく似ていて、形状も大きく扱いやすい。このような材料には、ムラサキシキブとヤブムラサキ、エノキとケヤキ、ツルマメとヤブマメ、ツユクサとムラサキツユクサ、スズメノエンドウとカラスノエンドウ(カスマグサは個体数がやや少ない)、アカマツとクロマツなどがある。
なお、ツバキとサザンカの違いは以下の通りである。
- |
葉 |
葉枝 |
花弁 |
子房 |
落下様子 |
芳香 |
開花 |
ツバキ |
大型 |
細毛あり |
下部結合 |
毛なし |
雄蕊同時 |
有る多い |
2-4月 |
サザンカ |
小型 |
無毛 |
完全離生 |
毛あり |
雄蕊残る |
有る少し |
10-12月 |