2.植物の世界
(14)不思議な植物シリーズ
(635)サボテン
「いいだろう。この前おうちの人と植物園に行った時に写真の『キンシャチ』(金鯱)のミニを買ってきたんだ。ぼくのお気に入りのサボテンです。モンタ博士と花ちゃんに見せたくて、持ってきました。」
「いいなあ。わたしもいっしょに行きたかったな。それにしても、サボテンって、不思議な植物ね。」
「そうなんだ。見れば見るほどおもしろい形をしているし、見ていて本当にあきないね。」
「サボテンも植物の仲間だけど、どんなところがおもしろいかな。不思議かな。」
「まず、ふつう植物というのは、根と茎と葉からできているんでしょ。ところが、サボテンは茎も葉もないようだし、トゲばっかだよ。」
「それから、形がまん丸もあるし、背の高いノッポのようなサボテンもあるわ。」
「まん丸やノッポのところがサボテンの茎になるんだよ。」
「えっ! 変わった茎ですね。でも、茎はあるけど、葉はないのですか。」
「でも、注意してみると、体の表面にトゲや細かい毛のようなものがあるだろう。それらが、葉が変化したものだと考えられているんだよ。」
「えっ! でも、なんでそんな形になったんだろう。不思議だなあ。」
「トゲはね、動物などに食べられないためとか、太陽の強い光から表面を守っているとも言われているんだよ。」
「でも、どうしてふつうの植物とちがう形になる必要があったのかな。」
「それはね、サボテンがどんな場所で生きているかを考えるといいよ。」
「サボテンというと、砂漠とか、水の少ないところですね。」
「そうなんだ。つまり、サボテンはとてもきびしい環境で生きているということでね、とても強い植物なんだよ。」
「ねえねえ、モンタ博士! 植物には水が必要ですね。でも、サボテンは、水がなくても生きていけるのかな。」
「砂漠などは、ほとんど雨がふらないかわいた環境にあり、水なしで2~3年も生きると言われているよ。」
「きびしい環境や温度の変化がはげしい場所で、サボテンも苦労しているということですね。」
「サボテンがまん丸だったり、平べったかったり、おもしろい形なのは、水分や養分をためておくためなんだよ。サボテンの一部を切ってみると、中から水があふれてくるよ。」
「へえー。そうなんですか。それで体の中にためた水で、砂漠でも生きていけるんですね。」
「では、下の絵をよく見てごらん。」
「これは、サボテンの断面図ですね。」
「1は、サボテンが2年間、水を一滴もすえなかったサボテンで、ためた水を使いはたしてやせ細った状態なんだ。そして、2は、雨がふり、すい上げた水を茎にたくさんためてふくらんだ状態だよ。」
「へえー。すごいんですね。おどろきです。」
「ところで、サボテンの根というのは見たことがあるかな。」
「砂漠に生きるから、きっと根は深くて何メートルもあるのでしょうね。」
「そう思うよね。」
「分かった。それじゃ、10m以上もあるのですか。」
「ところがそうではないんだね。まったく逆で、地下数センチの深さしかないんだ。」
「それじゃ、水を吸えないのではないですか。」
「深さはすごくないけどね、とても広くあちこちにはっていて、たまにふる雨をしっかりと吸いこんで、茎にたくさんためているんだよ。」
「ぼくのサボテンはこの後、どうなるのでしょうか。どのくらい大きくなるのでしょうか。」
「サボテンの成長というのはね、とてもおそいんだ。これも植物にとってきびしい環境で生きるためにはよいことなんだよ。」
「よーし。あわてずあせらずじっくりしっかりと、観察していくぞ。そして、花がさくまで大切に育てます。」
「そうだね。なかなか花は咲かないと思うけど、花が咲いたらみんなでまた観察しよう。」
⋯⋯ということで、モンタ博士があちこちテクテクしていると、あるおうちの庭にきれいなサボテンのお花がさいていたとさ⋯⋯。
サボテンは特別な光合成:CAM植物
サボテンは暑くて乾燥した気候に適した光合成を行うCAM植物である。普通、一般の植物は昼間に気孔を開いて光合成を行うが、蒸散により水分が失われやすい。そこで、サボテンなどのCAM植物は、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取りこみ、リンゴ酸に変えて細胞に貯え、昼間は気孔を閉じてリンゴ酸を分解することで二酸化炭素を発生させて炭水化物を作る。CAM植物は光合成の効率は低く成長は遅いが、水の損失は最小限に抑制されて乾燥に強いのである。