3.動物の世界
(4)鳥のなかま
(629)鳥講座1(鳥の羽)
「いいなあ! 気持ちいいだろうな。」
「どうしたの? オー君。空を見上げて⋯⋯。」
「見てごらんよ。とてもゆうゆうと飛んでいるよ。あんなふうに自由にあちこちへ飛べたらいいよな。でも、どうして鳥は空が飛べるんだろうな。」
「それはかんたんです。鳥にあって、オー君にないものは何でしょう。」
「えっ! とつぜんクイズですか。まいったなあー。分かりません。」
「鳥がなぜ飛べるか、かんたんです。鳥には羽があるからです。」
「まあ、そうだろうけど、鳥の羽って、どうやってできているのかな。」
「そうね、どうやってできているか、どのようになっているか、考えれば分からないことばかりかも、困ったわ。そうだ。鳥の先生を呼ぼう。」
「鳥の先生? そんな人いるの。」
「わたしの住んでいるところに、『カワセミ会』という野鳥を観察調査している会があって、その会に親戚のおじさんが入っているから聞きに行こう!」
「えっ! そんな人いるの。それじゃ行こう、行こう!」
⋯⋯ということで、『カワセミ会』のおじさんのところに行ったそうな⋯⋯。
「おじさん、こんにちは! 鳥について教えてもらいたいことがあるんですが、今でもおじさんは、『カワセミ会』で活動をされているんですか。」
「もちろんだよ。会報も年に2回は出しているし、あちこちで定点観察会もやっているんだよ。それからね、日本野鳥の会という全国組織があるんだけど、それにも入会していてね、毎日それはそれは大忙しだよ。」
「わたしの友達のオー君といっしょに、鳥がなぜ空を飛べるかを知りたくて来たんです。」
「そういうことだね。鳥が空を飛ぶ、それはね、羽があるからだね、そして、その羽にはいろいろな役割があるんだよ。それでは、今日は『鳥の羽のはたらき講座』をしてあげよう。」
「わーい、わーい。ヤッター!」
「よかったね、オー君。ところで、本題の鳥の羽についてですが⋯⋯。」
「そうだね。その前に、この写真の鳥は何だか分かるかな。」
「あっ! 親鳥がこどもにエサをあげているところですね。すてきな写真ですね。なんか見ていて、心がほっこりしてきます。」
「いやー、ほめられちゃうとうれしいね。この鳥はみんなもよく見かけるツバメだよ。ところで、このツバメの体重はどのくらいだと思う。」
「うーん、⋯⋯分かりません。」
「このツバメはね、20gくらいしかないんだよ。20gと言ったら分かりにくいけど、ちょうどイチゴ1個分くらいだよ。」
「イチゴ1個分! そんなにツバメって軽いんですか。」
「他の鳥も、見た目のわりにはとても軽いんだよ。まず、空を飛ぶためには、体重の軽さがポイントだね。それから、羽というのはね、いろいろあってね。しっかりとした羽軸のある『正羽』と、やわらかくフワフワした『綿羽』があるんだ。」
「羽といってもいろいろあるんですね。」
「綿羽は、羽毛布団につまっているものだね。ふつうダウンというね。羽の軸がほとんど無いんだ。軽いのにとても暖かいよ。保温の役目もあるけど、皮膚を守ったり、防水の役目もあったりするすぐれものなのさ。つまり、軽いのにいろいろな役目をする綿羽のおかげで、鳥は体重を軽くできているんだよ。」
「へえー。すごいんですね。」
「それからね、空を飛ぶときに必要なのは、何といっても翼だね。」
「翼って、鳥が羽を広げた時のものですね。」
「まあそうだね。翼に生えている羽を『風切羽』というんだけど、これがとても大切な役目をしているんだ。」
「大切な役目って、何ですか。」
「下の絵を見てごらん。風切羽は、外側から初列風切羽、次列風切羽、三列風切羽と分かれているんだ。」
「それぞれ分かれている意味はあるのですか?」
「もちろんだよ。初列風切羽は、鳥が羽ばたいた時に前に進む力を生み出していてね、飛行機で言えばプロペラのようなものさ。推力というんだ。」
「なるほど、そういうものですか。」
「次列風切羽は、鳥が空に浮かぶ力を生み、三列風切羽は空気抵抗を少なくして浮くための力を増やしているんだよ。これを揚力と呼ぶんだ。」
「へえー、すごいんですね。風切羽って!」
「それから、小翼羽と、尾羽というのもあるんだ。」
「それって、どんな働きをするのですか。」
「小翼羽は、着陸の時の失速を防ぐためさ。飛行機の前縁間隙フラップの役目と同じだし、尾羽とは、飛んでいる時の安定性や、方向転換の役目もあるんだよ。」
「へえー。すごいんですね。」
「よかったね。オー君。いろいろと勉強になったね。」
「ありがとうございました。また、お話を聞きに来ていいですか。」
「もちろんだよ。また、おいで。おじさんも楽しみに待っているからね。」
いろいろな翼を比べてみよう!
空を飛ぶ名人の鳥、コウモリ、昆虫を見ると、いずれも翼を使って飛んでいます。しかし、それらはすべて同じというわけではないようです。コウモリと昆虫の翼は薄い膜のようになっていますが、コウモリはゴムのように柔らかであり、昆虫はポリプロピレンのような膜で、コウモリよりもかたく透明か半透明です。これに比べると、鳥の翼というものはだいぶ違うようです。たくさんの数の羽とそれぞれが違った形や羽が集まってできています。その仕組みもいろいろと少しずつ違うようです。