2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(628)大豆の変身!
「オニは外! 福は内! コロナなんか飛んで行け!」
「オニは外! 福は内! マスクなんかもいらないよ!」
「いやなことは外だ、あっちへ行け! 楽しいこと・うれしいことは内だから、こっちにおいで!」
「モンタ博士のは、ちょっと変わっていますね。さあ! オニ退治をしたので、みんなで今から節分の福豆を食べましょう。」
「自分の年の数だけは、食べるんですね。」
「まあ、そうだけど、あんまり食べ過ぎないようにね。」
「節分の豆は、大豆ですよね。それから、エダマメも大豆ですが、モンタ博士、どうちがうのですか。」
「エダマメというのは、大豆の種が熟さないわかい状態、つまり未熟なものだよ。モンタ博士の大好物さ。ビールにぴったしだ。」
「ビールのお話はおいといて、大豆もエダマメも同じということですね。ところで、オー君! ダイズって、初めは丸いのよ。知ってた?」
「えっ! 本当。知らなかったなあ。でも、ちょっと待って。この福豆は丸くないよ。それに、納豆も丸くなくて、ちょっと楕円形みたいだよ。」
「疑問に思ったこと、分からないことは、すぐに実験で確かめればいいんだよ。オー君。」
「大豆は、スーパーなんかに売っているわ。そうだ。オー君。福豆をいっしょに作ってみようよ。レシピはわたしにまかせてね。」
「よーし! 大豆のマメの不思議を調べるぞ!」
⋯⋯そして、次の日⋯⋯。
「大豆を買って来たよ。本当に丸いね。でも、まん丸ではないみたいだな。そうだ。何cmあるか、定規で測ってみよう。」
「1つじゃなくて、何個も測ればだいたいの平均が出るわね。」
「そうだね。数値に表すということは、科学的でとてもいいことだね。」
⋯⋯ということで、オー君と花ちゃんは、大豆のマメ1つぶ1つぶの、たてと横(立てた時の高さと幅)を数えたそうな⋯⋯。
「それでは発表します。大豆ぜんぶで30個の大きさ平均は、たてが0.87cmと横が0.80cmとなりました。つまり、まん丸ではないんですね。」
「すばらしい。それだけ分かっただけでも、立派なことだよ。」
「何だかおもしろくなってきたね。オー君。」
「次はどうしようか。花ちゃん!」
「えーっと。次は水を吸収させよう。ふつう一晩水につけるというから、今から12時間後を楽しみにしましょう。」
⋯⋯ということで、12時間後⋯⋯。
「うわあー、すごい! 大きくなっているよ。形が変化したぞ。」
「さあ、また大きさを測りましょう。定規! 定規!」
「それでは発表します。大豆を12時間水につけた結果は、たて1.51cmと横1.04cmとなりました。」
「すごいね、はっきりと目で見て分かるし、数値にもちがいが出たね。よかったね。よかったね。」
「丸かった大豆が、楕円形になったのはうれしいけれど、でも、どうして?」
「それは、レシピにも書いていないわ。どうしてなのですか。モンタ博士!」
「これはちょっとむずかしいね、大豆のたての伸び率の方が、横の伸び率よりも大きいということなんだよ。」
「分かったみたい、でも分かんない感じです。」
「つまり、ちょうちんみたいな感じかな。」
「そうか。うまいたとえだね。むずかしく言えば言えるけど、今回はそのくらいでいいんじゃないかな。最後に大人向けのコラムがあるけど、大きくなったらそれを読んでごらんよ。」
「まあ、なぞが解けたところで、さあ、福豆を作ろうよ。次はどうするの。」
「少し乾燥させてから、フライパンで火にかければいいのよ。」
「さあ! 作ろう! 作ろう!」
⋯⋯その後、花ちゃん・オー君・モンタ博士でおいしく福豆を食べたそうな⋯⋯。
大豆の球体が楕円球体への変化の不思議
給水することによりその形状の変化の様子や数値は上記のようである。吸水すると種子の幅(Wとする)方向や厚さ(Tとする)と比較して、長さ(Lとする)方向への膨張が著しく、その形状は楕円球体となった。しかし、アズキやインゲンマメは乾燥時からL方向に長い形をしていて、吸水・膨張しても形状は元のままだった。乾燥大豆の子葉細胞はL方向に収縮しているが、吸水・膨張するとL方向に特に大きく膨張し細胞間隔が広がることが認められた。乾燥大豆の子葉細胞の細胞壁には、種子のL方向と垂直なしわが存在し、子葉細胞はL方向に折りたたまれていることが明らかであり、上記のオー君の『提灯』の例えは間違いとは言えないと思う。