4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(5)地質や地形の世界
(619)星の砂の小島
「花ちゃん、オー君、お元気ですか。」
「あっ! モンタ博士! ぼくたち、超元気です。」
「今日も何か楽しいお話をしてくれるんですか。」
「いや、今日はね、二人にぜひ見てもらいたいものを持ってきたんだよ。」
「どんなものですか?」
「それはね、これだよ! どうかな? 芸術作品に見えないかな。題して『南の小島』なんてどうかな?」
「南の小島!? ですか。ふーん。砂浜のような感じですね。それに、ヤシの木ではないけど、何か植物の葉っぱがありますね。」
「ふーむ。よく見るとこの葉っぱ、どこかで見たようだな。」
「あれ! バレちゃったかな。」
「あっ! 分かった。この葉っぱはニンジンですね。キアゲハの幼虫がよく食べるものですね。」
「あーあ。やっぱり分かってしまったか。さすがはオー君だね。」
「ところで、これは何なんですか。」
「あのね、この
前ね、ニンジンの
切れはし、つまり
食べないところをシャーレに
入れて、
葉の
出てくる
様子を
観察しようと
思っていたわけだよ。」
「あっ! 思い出しました。以前モンタ博士の『てくてく自然散歩』でも紹介してくれましたね。」
「さすがは花ちゃん! よく覚えていてくれたね。モンタ博士は、うれしくて涙が出てしまうくらいだよ。」
「それと、南の小島とどういう関係があるの。」
「つまりね。砂をしきつめる前の状態を写真で撮っておいたんだ。こんな感じだね。そこで、葉っぱをヤシの木に見立てたら、南のはなれ小島に見えないかなと思って作ったんだよ。ミニチュアの海の家、それからパラソルなんかも作ればよかったかな。あー。失敗かな。」
「そんなに落ちこむことはありませんよ。一生懸命に作ってあって、とてもいい作品だと思います。そうだよね。オー君。」
「そうだね。それから、この砂だけど、色がとてもきれいで、ふつうの砂とちがう感じでいいですね。」
「そうだよ。これは、以前にもお話ししたことがあったかどうか分からないけど、『星の砂』を使ったんだ。」
「えっ! 『星の砂?』。何ですか、それ? オー君! 聞いたことある?」
「星の砂⋯⋯ぼくも初めて聞く名前です。」
「そうだったかな。二人にはいろいろなお話をしてきているから、モンタ博士の頭の中もこんがらがっちゃったんだ。そうか! 星の砂は初めてか?」
「星の砂って、何かとてもロマンチックな感じですね。」
「星の砂って、いったい何者なんですか?」
「それじゃ、ご説明しよう。よしよし、元気が出てきたぞ。まず、砂と言うとね、砂場にあるのを思いうかべるね。あれは、石や岩が小さくなり風化したものなんだよ。これは分かるね。」
「とても小さいつぶつぶと思えばいいのですね。」
「くわしく言うとね、大きさとか、土とのちがいとかあるけど、今日はかんたんに言うと、小さなつぶつぶだね。」
「それで、問題の星の砂は何なんですか?」
「有孔虫という原生生物がいてね、その生き物のじょうぶな『カラ』だけが残ったもので、海に積もっているものなのさ。今でも生きている生き物なんだよ。つまり、『カラ』が星の形をしているというわけなんだ。それで、星の砂と呼ばれているんだよ。」
「どんな星型なんですか。見てみたいです。」
「いろいろと拡大した写真があるからね、見てごらん。」
「モンタ博士! 私も星の砂を採集してみたいです。どこに行けばあるのですか?」
「そうだね。沖縄の西表島とかが有名だけど、南西諸島ならどこの海岸でも、ふつうに見ることができるそうだよ。」
「よーし! そのうち、沖縄の砂浜で探すぞ!」
「今日はね、モンタ博士の芸術作品の紹介のつもりだったけど、星の砂のお話になってしまったね。最後に、これも見てほしいな。題して『南の島のダイコンとタマネギ小島』どうかな? いいでしょ? 写真を見ての感想はいかが?」
「⋯⋯。」
「⋯⋯。」
星砂の独り言
私は星砂といいます。とてもいい名前でしょ。英語ではStar sandです。難しく言うと、星の形状の粒子よりなる砂状の海洋性堆積物といったところかしら。または、その成因となった生物の名称といったところね。星砂をほしずなと濁点で読む場合もあるらしいけど、どうも濁点で読むと美しさがぼける感じで私は気に入っていないので、今後は絶対に「星砂」(ほしすな)と呼んでね。砂と名前がついていますが、死んだ有孔虫の殻であり、岩石風化による通常の砂とは全く異なるものなのよ。私が生きている時には、殻内は原形質で満たされているんだけど、死んでしまうと有機質である原形質が分解されて、丈夫で頑丈な殻のみが残り、堆積していくというわけなんです。殻の形が星や太陽などを連想させるでしょ。幾何学形状であるので、鑑賞の対象となり好感を持たれているのね。それで人気者になった訳ね。
でも、沖縄県などで、小瓶に詰めてお土産として販売しているんだけど、近年、数が減少してしまっているの。その原因として、乱獲や日焼け止めオイルによる海水汚染の影響なども指摘されているのね。ちょっと困っちゃうんですね。でも、私の可愛さをこれからも愛してくださいね。