2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(618)ロウバイのタコウインナー
「あれあれ? タコさんウインナーの絵があるぞ。それから、ちょっと似たような感じの実があるぞ。」
「なんだろうね。わたしも何の実だか分からないわ。」
「そうだ。この実は、タコウインナーの実ということにしよう。」
「そうね。そう言えば、そのようにも見えるね。でも、本当の名前は何というのかな。」
「本当の名前は、ロウバイだね。オレンジ色は今年の実だね。少しよごれたような茶色っぽいのは、去年の実だろうね。」
「あっ! そうか。ロウバイでしたね。」
「ロウバイの実であることにまちがいないけどね、でもね⋯⋯。」
「でもねって、どうしたんですか。モンタ博士。」
「正式な名前は、もちろんロウバイでいいけどね、オー君のように、ある植物を見て、その特徴をつかんで、楽しい名前をつけることも悪くはないね。いや、どちらかと言えば、むしろ小学生などにとっては、とてもいい観察方法だと思うよ。」
「いやー。ほめられちゃうと、植物が好きになっちゃうな。」
「小学生にとって身近なものに例えて、〇〇みたいだとか、△△のようだとか、とても意味のあることだと思うよ。大切なことは、植物を観察することを楽しむということなんだよ。」
「いやー、ほめられちゃうと、なんかうれしくなっちゃうな。」
「なるほど、言われてみればそのとおりですね。」
「つまり、あだなをつけるというか、ニックネームみたいなものですね。」
「そうだね。植物には、いろいろな別名というものがあるんだ。それに、地域によっていろいろな名前で呼ばれているものもあるんだよ。」
「あっ! わたし思い出しました。ヒガンバナというのは、いろいろな呼び名があるんですよね。モンタ博士!」
「そうだね。花ちゃんはヒガンバナの別名で、何か知っているものがあるかな。」
「えーっと、マンジュシャゲ、ハミズハナミズ、ユウレイバナとか。」
「そうだね。その他では、アカハナ、イカリバナ、ウマノベロ、オイランバナ、オマンジュウバナ、カジバナ、シビトバナ、シビレバナ、ソーシキバナ、チンチロリンなどなど、まだまだたくさんあるんだよ。」
「へえー。すごいな。ぜんぶでいくつあるんですか。」
「ある本によると、1,000を超えると書いてあったよ。」
「ひえー。すごーい。覚えきれないな。」
「覚える必要なんてないさ。たくさんの名前があるということは、それだけ、人とのつながりがあるということだし、それだけ、ヒガンバナが身近で親しみのあるものだったということだね。」
「つまり、大切なことは、自然や動・植物などの生き物に対して、興味・関心を持ち続けるということですね。」
「そのとおりだね。それからね、何事にもどうしてかなとか、なぜかなとか、好奇心を持つことが大切だと思うよ。」
「でも、また考えるのですが、正式な名前というのも重要ですよね。」
「そうだね。あの花、あんなこんな花では分かりにくいけど、正式な名前など、みんながすぐに理解できるということでもあるからね。」
「よく分かりました。その植物のあだ名・ニックネームを考えて親しみを持って観察するとともに、正式名もなるべく知っておくことですね。」
「そうだね。それじゃ、今からふつうに『ロウバイ』と言われているものが2種類あるんだけど、そのちがいを見つけてみよう。」
「ちょっと待って。今、モンタ博士は『ロウバイ』と言ったでしょ。それって、『ろう細工』みたいということ、それから、バイは、ひょっとして『梅』ということですか。」
「そのとおりだ。正しい名前にもきちんとした理由があるんだね。正式名もいっしょに覚えちゃえばいいんだよ。オー君。」
「分かりました。ますますやる気が出てきちゃいました。がんばります。」
「それは、すばらしいね。ところで、上の2種類のロウバイだけど、ふつう、お庭や公園に植えてあるのは、ほとんどがソシンロウバイという種でね、全ての花が同じ色をしているね。」
「でも、ロウバイというのは、真ん中の色がちがって赤くなっていますね。」
「そうだね。くらべてみると、いろいろと分かるね。ついでだけど、この2種類のロウバイは、どちらも元々は中国の木なんだよ。」
「えっ! 日本にある木なのに、中国生まれなの。」
「帰化植物ともちがうんですね。どういうことかな。」
「日本生まれ、中国生まれ、などなど、そのお話はまた今度ね。」
ロウバイの独り言
私はロウバイといいます。中国原産で江戸時代のはじめ頃に日本にやってきました。漢字で書くと蠟梅となりますが、それは、オー君も発見してくれたように、花の色が蜜蠟に似ていて梅の花のようだからです。花の時期は1月から2月の一番寒い時です。学名ではChimonanthus praecoxといいます。Chimonanthus は冬の花という意味で、praecoxは早咲きのという意味なんです。私はとても香りがあり内側の花は暗褐色です。私の友達のソシンロウバイも中国原産ですが、少し花が大きくて内側の花弁は外側と同じなんです。遠い所にいる友達でアメリカロウバイというのもありますが、花の時期が5~6月なんです。あまり見かけないかもしれませんね。花弁が赤褐色なので、ちょっと雰囲気が違います。
さて、オー君が言っていたタコさんウインナーですが、なかなかいいネーミングで、うれしくなっちゃいます。花が終わると花床というところが大きくなって長い卵形の偽果というものになります。偽果のまわりは木質化して中にそう果という果実になります。種子ではありません。なお、このそう果はゴキブリの卵塊にそっくりなんですよ。でもね、オー君。ゴキブリの木なんて言わないでね。お願いね!