2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(2)外来種
(616)カタバミいろいろ
「えーっと。カタバミのめじるしは、3つのハートの葉っぱだったな。それから、すっぱい味がするんだ。うん。これはカタバミだ。まちがいない。」
「あれ、オー君! 何しているの。さっきからしゃがみこんで、何を見ているの。」
「いいものを探しているんだよ。」
「いいものって、何かな。それは、カタバミという植物でしょ。」
「さすが、植物についてはよく知っているね。このカタバミの葉をていねいに見ていくとね、必ず見つかるものがあるんだよ。」
「何だろうなあ。教えてよ! オー君。」
「それはね、ヤマトシジミというチョウの卵だよ。カタバミの葉をよく見ると、かじられた跡みたいなものが葉っぱにあるんだ。それは、ヤマトシジミの成虫がいたということで、卵も産んでいる可能性があるんだ。」
「見つかるといいね。ところで、カタバミという植物は、これまでにも『てくてく自然散歩』にいろいろと登場したね。」
「そうだったね。カタバミの葉で10円玉をピカピカにしたこともあったね。」
「それから、カタバミの実から種がよく飛んだね。あれも楽しかったわ。」
「モンタ博士は、カタバミの種がどのくらい飛んでいくかを調べていたね。」
「カタバミの種子飛散距離実験ね、失敗編と成功編があったのを覚えているわ。」
「最高で3mくらい飛んだといって、モンタ博士はとても大喜びしていたね。」
「あれあれ? ぼくを呼んだのはだれかな。」
「あっ! モンタ博士!」
「あっ! モンタ博士! お会いできてうれしいです。私たちのいるのがよく分かりましたね。」
「もちろんだよ。花ちゃんとオー君のいるところに、引き寄せられちゃうんだよ。ところで、二人で何をやっているの。」
「オー君といっしょにヤマトシジミの卵さがしをしているんです。」
「ほほー。それは感心だね。あれこれと観察することは楽しいことだね。」
「それで、カタバミについて、10円磨きができるとか、種をたくさん飛ばすとか、そんなお話をしていたんです。」
「あっ! 今、何て言ったかな。」
「10円磨きと、種飛ばしのこと。」
「その、種を飛ばすということなんだけど、まだ、二人にはお話していなかったかな。カタバミの仲間には、種を作らずに株や鱗片というもので増えるものもあるんだよ。」
「そういえば、何か図鑑にのっていたのを見たことがあります。」
「そのとおりだね。もっともよく見かけるのは、イモカタバミというんだ。また、ムラサキカタバミという種類もあってね、ふつうのカタバミは黄色の花だけど、どちらもピンクの花を咲かせるんだよ。」
「へえー。そんなのがあるんだ。日本のものではなくて、帰化植物ですか。」
「そのとおり。始めは園芸用に輸入していたものが、そのうち野生化したというか、今では雑草あつかいされているようだけど、よく見るときれいな花だよ。根っこの様子がよく分かる写真を用意したから見てごらん。」
「ふつうのカタバミの根っこって、どうなっているのかな。」
「そうだ。ちょっと待ってて。今、引っこ抜いてくるね。」
⋯⋯ということで、オー君はすっ飛んでいき、その後⋯⋯。
「ぜんぜんちがうね。ふつうのカタバミは、ふつうによくある植物のふつうの根みたいですよ。」
「そうだね。それにしてもオー君はえらいね。すぐに動いてすぐ確かめて、とても立派です。とても感心です。」
「そんなにほめられちゃうと、はずかしいなあー。⋯⋯う、あ、うーむ。」
「どうしたの。たくさんほめられたり、急にうなったりして⋯⋯。」
「さっき、ヤマトシジミはカタバミの葉に卵を産むというお話をしてたよね、それじゃ、このイモカタバミやムラサキカタバミにも卵を産むのかな。どうなんですか。モンタ博士!」
「どうだろう。モンタ博士もやったことないよ。それじゃ、みんなで実際に実験観察してみようか。」
「大賛成です。わくわくドキドキしてきました。」
「よしやるぞ! 『イモカタバミ・ムラサキカタバミとヤマトシジミ育てのプロジェクト大作戦の始まり、始まりだ。』
カタバミの野生種・帰化種・園芸種いろいろ
カタバミの仲間は世界に850種以上あると言われています。日本に自生する野生のカタバミは、カタバミ、エゾタチカタバミ(北海道と本州中北部)、アマミカタバミ(奄美大島特産)、コミヤマカタバミ(亜高山針葉樹林下)、ミヤマカタバミ(本州の東北南部から中国地方と四国地方)、カントウミヤマカタバミ(関東地方南西部・東海地方東部及び伊豆半島)の6種です。
また、カタバミの園芸種を一般的にオキザリスといいますが、これは、学名からきており、古代ギリシャ語のOxalis(すっぱいという意味)がその由来です。園芸種の花の色は白、黄色、オレンジ、ピンク、紫色などとても多く、大きさもいろいろですが、どれもきれいな花を咲かせます。オキザリス(トリアングラリス種)、シボリカタバミ、モンカタバミなど、その他多種あります。なお、イモカタバミ、ムラサキカタバミ、オッタチカタバミ、フヨウカタバミ、ハナカタバミ、オオキバナカタバミ(キイロハナカタバミ)などは、帰化植物です。