1.身近な自然の観察
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(613)鳥のおしっこ・ウンチのひみつ
「ふーむ。これは何だろうなあ。」
「どうしたの、オー君。そんなにむずかしい顔をして?」
「あのね、ぼくがよく行く児童館前の道路に、何だかわけの分からない白い点々がたくさんあるんだよ。写真に撮っておいたんだけど、花ちゃん分かる?」
「あっ! これはね、鳥のウンチとおしっこよ。」
「えっ! 鳥のウンチとおしっこ。」
「はい、そうよ。たぶんまちがいはないと思うよ。」
「どうしてそんなことが分かるの。」
「それはね、けっこう前だけど、私も道で見たことあるの。その時、モンタ博士が教えてくれたわ。そして、上を見上げてごらんと言われたの。」
「上を見上げる? それって、どういうことなのかな。」
「上を見ると、電線がたくさんあったのよ。その電線に鳥がいっぱい止まっていて、その鳥たちがウンチとおしっこをいっしょに、下の道路に落としたということなのよ。」
「へえー! そうなのか。でも、ぼくが上の写真を撮った所の近くには、電線なんか1本もなかったし、まわりにもあまり電線は見られなかったよ。」
「ふーん、そうなの。それは不思議ね。」
「それにね、さっきから鳥のウンチとおしっこと言っているけど、白いペンキみたいなものに混じって黒い点々みたいなものが少しあるだけだよ。鳥のウンチとおしっこって、どうなっているのかな。」
「ウンチとおしっこについては、わたしもくわしくは分からないわ。それから、電線がないのに、鳥のウンチとおしっこがあったんでしょ。なんかとってもミステリアスな感じね。困ったわね。どうしようか。あっ! モンタ博士があっちからてくてくと歩いてくるわ。お聞きしましょう。」
「どうしたの。二人とも困ったような顔をしてさ。」
「あのですね。道路に鳥のウンチとおしっこがあったのですが、近くに電線もなかったんです。」
「それに、鳥のウンチとおしっこについて、分からないことがあるんです。」
「ほほー。そういうことか。そうだね。お話や写真だけでは分からないから、その場所に行って、現場検証をした方がいいかもしれないよ。」
「現場検証? 何だか刑事ドラマみたいになってきましたね。」
「そうね、何だかワクワクドキドキしてきたね。それではレッツ・ゴーね。」
⋯⋯ということで、現場を見れば謎が解けるということで、児童館前の道路に行ったとさ⋯⋯。
「ふーむ。そうか、分かった。謎はすべて解けたよ。」
「えっ! どういうことですか。」
「まわりをよく見てみよう。たしかに電信柱も電線もないけど、近くに何があるかな。」
「近くと言っても、児童館のお庭に木が3本ほど立っているだけですが。」
「その木が謎を解くカギになるんだ。3本の木というのは、ドングリのなるクヌギだね。これは知っているよね。それからそのとなりがカツラという木で、そのとなりが謎を解くナンキンハゼという木だよ。」
「ナンキンハゼ? 聞いたことがありませんが。」
「そうだね。ナンキンハゼというのは、もともとは中国の木で、公園などに植えられているんだ。」
「そのナンキンハゼと鳥のウンチとおしっことどう関係があるのですか。」
「つまりね、ナンキンハゼの実には、ハゼノキという木の実と同じようにたくさんの脂肪分(油のこと)があってね、かんたんに言うと、鳥たちにとって栄養になるものがあるんだよ。それで、鳥たちがナンキンハゼの実をついばむためにたくさん集まって、そして、飛び立つ時にウンチとおしっこを落として、写真のような白のペンキのようなものがあるというわけなんだよ。」
「なるほど、そういうことですか。」
「ウンチとおしっこについては、どうなんですか。」
「そうだったね。鳥は空を飛ぶために体が軽くないとだめだね。ほ乳類のようにおしっこをためる膀胱というものがあると重くなるね。だから、ウンチとおしっこをいっしょに出すということなんだ。むずかしいお話だけど、人間は尿素というものをおしっこで出すけど、鳥は、尿酸というものに変えて出すんだ。もう少し大きくなったら自分で勉強してごらん。」
「どうもありがとうございました。よくわかりました。よかったね。オー君。」
「そうか、秋になり実ができるころに鳥が来るんだ。そして、ナンキンハゼの近くにいれば、鳥たちがウンチとおしっこのごちゃまぜの、白いけどちょっと黒点のあるものを出すんですね。よし! ぼくは、ナンキンハゼの番人として、現場でその様子を観察するぞ!」
「えらいね。立派な心がまえだね。感心だね。そういう気持ち、探究心と言うけど、それが大切だね。がんばれ! オー君!」
哺乳類と鳥の排泄の違い(尿素と尿酸のお話)
植物は光合成によりエネルギーを自らのものにできますが、動物は、食べ物を食べて体の中に取り入れ消化・吸収しエネルギーとして生きています。その際、栄養分を摂取した後の要らないものや体にとって有害な物を便や尿として体の外に出します。人や犬などの動物は体内にある不要なものや害のあるものを水に溶かし尿にし、また、溶けにくいものは、糞と一緒に体の外に出します。しかし、鳥は空を飛ぶために、なるべく体を軽くする必要があり、食べた後はすぐに排泄するような仕組みができています。
タンパク質を取り入れて分解するとアンモニアというものができます。このアンモニアは体にとって害があり体にためておくことはできません。魚は水と一緒に出してしまうので問題はありませんが、陸上の動物がアンモニアを水と一緒に出していては水分が奪われて干からびてしまいます。そこで、哺乳類はアンモニアを害のない尿素という形に変え水に溶かし膀胱でためて出すようにしています。鳥の場合には水と一緒なので、アンモニアを尿酸という水に溶けにくいものを結晶とした形に変えています。
鳥の糞はよく見ると、茶や黒い部分と白い部分がありますが、茶黒がウンチで白がおしっこということです。なお、鳥には哺乳類と違い、総排泄腔という穴があり、糞も尿も一緒に出しているのです。また、鳥は、糞とは別に胃で消化できなかったものを「ペリット」として、口から吐き出しています。そのペリットを崩してみると、その鳥がどんなものを食べていたかがよく分かります。