4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(3)自然環境の保全
(4)自然のめぐみ
(5)地質や地形の世界
(609)真鶴の森(MAP付き)
「うわあー! 大きな木ですね。モンタ博士。」
「また、どっかにお出かけしたのですか。いいな、いいな。私も行きたかったな。」
「まあまあ、また、そのうちね。ところで、すごく大きな木でしょ。」
「モンタ博士が小さく見えますね。これはどこですか。」
「よく聞いてくれたね。この森はモンタ博士が大好きな森でね。神奈川県の真鶴半島にある森だよ。」
「真鶴半島? どこかな? どんな森なんですか。」
「ともかく太く高く立派な木があちこちにあり、それはそれは、迫力満点ですごい森だね。」
「この森は大昔からあったのですか。」
「そうだね。まずは歴史からお話ししようね。ここは昔は木などまったくなくて、ただのススキの原っぱだったそうだよ。」
「へえー、そうなんですか。その昔というのは、いつごろなんですか。」
「江戸時代だ。1660年ころだね。当時の小田原藩が150,000本(15万本)のマツの苗を植林したのが始まりなんだ。」
「150,000本って、すごいですね。」
「その後、明治維新があり皇室御料林となり、戦後は、真鶴町のものになったんだよ。真鶴の町の人々にとっては、とても親しみがあり『お林』とよんで大切にしてきたんだよ。」
「『お林』っていうんですか。ちょっと聞いたことがないですね。」
「お林は、真鶴の人々のくらしを支え、人々はお林を守ってきたんだ。その関係性は、人と自然とが共生、つまり、共に生きてきたというものなんだ。」
「すごい森なんですね。大切な森なんですね。」
「あのね、それからね、真鶴の海というのはね、いろいろなたくさんの種類のお魚がいるということで有名なんだよ。」
「どうして、そんなにいろいろな魚がいるんですか。」
「豊かな海なんだよ。そして、それを支えているのが、この『お林』なんだ。それでね、『魚つき保安林』ともいわれているんだよ。」
「『魚つき保安林』? またまた聞いたことのない名前ですね。」
「それはね、下の写真のように、海の近くの森だろう。こういう所はね、昔から『魚を集める森』として、守られてきたんだね。」
「どうして、そんなに魚が集まるのですか?」
「木がたくさんあるとね、海面に暗がりを作ってくれるでしょ。そうするとね、それを好んで卵を産んだり、生育の場としてとてもいいので、魚が集まるわけなんだよ。」
「そういうわけですか。魚の産卵と成長にいいのですね。」
「それからね、海に落ちた枯れ葉があり、虫などがいるので、プランクトンが増えて、それを食べようと魚があちこちから集まるんだ。」
「栄養たっぷりな場所になるということですね。」
「それからね、森林を通ってしみ出したミネラルいっぱいの地下水も、魚にとってはいいんだよ。」
「とてもいい水というわけですね。」
「それから、雨が降って、その水が一度森林に吸収されてから海に流れるために、海水温の変化が少ないのも魚が住むのにいいんだよ。」
「へえー。ぜんぶ魚のためになっているんですね。すごいですね、魚つき保安林。それで、どんな木があるんですか。」
「マツはもちろん、スダジイ、クスノキなどの木が林立している混合林なんだ。高さ30m、木のまわり(円周)が5m以上のものもあちこちに見られるんだよ。」
「ということは、巨木の森ということですか。」
「そうだね。森の中のいろいろな植物はもちろん、海岸には海浜植物という特徴的な植物もあるし、それはそれはいい所だよ。おまけに岬には町立の遠藤貝類博物館もあって、一度は行ってみる価値のある所だよ。」
「行きたいな、行きたいな。」
「そうだ。行く前にインターネットで情報をたくさん集めましょうね。オー君!」
「そうしよう、そうしよう。」
「花ちゃんとオー君のために、おまけマップを作ったから、ぜひ見てね。」
真鶴半島の照葉樹林について
真鶴半島のお林・魚つき保安林は、クスノキやスダジイなどの照葉樹林と、クロマツ・アカマツのマツ林で構成されている。林床部には様々な種類の植物が生育しており、多様性が高いといえる。神奈川県を代表する照葉樹林でこれほどの群落は大変貴重であり、2009年2月に県指定の天然記念物に指定されている。