2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(14)不思議な植物シリーズ
(598)ヤドリギのひみつ
「あれあれ? 木の枝のところに何か見えるね。」
「そうね。これはケヤキの木だけど,枝のところに黒というか,緑色っぽいかたまりがありますね。何なのかな。」
「そうだ。写真をとって,モンタ博士に報告しよう。」
「そうしましょう。そうしましょう。」
ということで,モンタ博士に写真を見せに行ったそうな・・・。
「モンタ博士,この写真のかたまりは何ですが・・・。」
「シダ植物やコケなどが,木の幹に生えているのは見たことがありますが,これは,ちょっとちがうような感じなんですが・・・,何なのですか。」
「なるほど,花ちゃんはよいところに気がついたね。シダやコケなどは木に生えることがあるけど,あれは,着生といってね,地面の代わりに生えただけなんだよ。」
「これは,その着生というやつではないんですね。それでは,何なのですか。」
「結論から言うとね,これはヤドリギというものなんだ。寄生木と漢字で書くけど,つまり,ある生物(寄生者・パラサイト)がある生物(寄主・ホスト)の体内に入りこんで,一方的に養分を奪い取ってしまうんだよ。」
「何だかこわくてむずかしいお話のようですね。」
「何だかヤドリギという植物は,悪い生き物みたいな感じですね。」
「そんなことないよ。寄生は共生の一種ということでもあるんだ。ヤドリギは,他の方法では生きていくことができずに,このような生き方を選んだ植物ということだね。」
「モンタ博士,でも,ヤドリギって,緑色をしていましたよ。緑色をしていれば,太陽の光でデンプンなどの養分を自分で作り出せるのではないですか。」
「それをむずかしい言葉で,光合成というのですね。オー君が言うとおり,ヤドリギも他の生物から,養分を奪わなくてもいいんじゃないですか。」
「そのとおり,ヤドリギは,自分でも養分を作り出せるので,半寄生植物というんだよ。」
「そういうことですか。納得しました。」
「でも,何だかおかしいよ。植物は種が発芽してから成長するんでしょ。では,どうやって,ヤドリギはあんな高い木の上にあるの。だれかが,種をまいたのかな。ヤドリギの初めの一歩はどうなっているのかな。」
「それはね,ヤドリギの種子を見ると答えが分かるよ。つまり,種の色は赤っぽく,鳥が好む色なので,よく食べられのさ。この実は,とても粘り気があってね,鳥が排泄するときに,木の幹などに種が張り付きやすいんだ。それで,発芽するというわけなんだよ。」
「そうか,ヤドリギの実を食べた鳥が,木の枝の上にウンチオシッコといっしょに種を落とすというわけですね。」
「へえー,すごいんですね。それにしても,生き物同士があれこれと,それぞれの特徴を発揮して,関係しながら,生きているんですね。偶然にあるのではないのですね。とってもおどろくと同時に感心もしました。」
「それからね,鳥にくわしい人に聞いたら,ヒヨドリやキレンジャク,ヒレンジャクなどがジューシーな実を喜んで食べるそうだよ。たぶん,それらの鳥がヤドリギの種を運んだ犯人なのかもしれないね。」
ヤドリギのつぶやき
ヤドリギの
木の
下で
出会ったらキスなんてね・・・。
ずいぶんと
持ち
上げられたものでやんすね。
欧米のクリスマスの
風習でも
知られるロマンチックな
植物と
人はいうのでやんすが・・・。
実をいうと
筋金入りのパラサイト
族でやんすよ。
生命力あふれる
世渡り
上手なケチなヤツでやんす。