2.植物の世界
(4)被子植物(単子葉類)のなかま
(11)おいしい植物の世界
(593)コメ・米・こめ
「あ! これは,お米,つまりぼくたちが育てた稲ですね。」
「春に種をまき,苗を育て,田植えをしたのは初夏のころですね。こんなに大きくなって,私たち日本人の大切な主食となるのですね。」
「そして,稲がお米となり,ごはんになり,ぼくたちのエネルギーになるんだ。」
「そうだね。それでは,今日はお米・稲についてみんなで考えてみよう。ところで,みんなは稲の種を見たことがあるかな。」
「そういえば,お米は毎日食べているけど,種をじっくりと観察したことはありませんね。田植えの時に苗は植えましたが・・・。」
「毎日食べているお米をまいても,芽は出てこないか・・・。」
「そうだね。いつも食べているお米は,イネの種子そのものではないんだよ。」
「つまり,どういうことですか。」
「次の(1)の写真を見てごらん。収穫したばかりのイネの種子だよ。どんな感じかな。」
「何かお米とはまったくちがうぞ。硬い殻で守られている感じだよ。」
「そうだね。この殻を取り除き,中の種子を取り出したものが『玄米』というものなんだよ。これが写真(2)だね。」
「健康食品として,今人気のある『玄米』ですね。」
「そうだよ。だから,お米屋さんで精米する前の玄米を少し分けてもらい,浅く水を張ったお皿につけておくと発芽するんだよ。」
「玄米というものは,あまりふだんでは見かけないものですね。玄米を精米したものを,ぼくたちは食べているということなんですね。それが写真の(3)ですね。」
「そうだよ。正しくは精白米というのさ。それからね,(2)と(3)の間のものがあってね,それを分(ぶ)づき精米というんだよ。」
「分づき精米というのは,あまり聞いたことがありませんが。」
「そうだね。分づき精米というのはね,ぬか層と胚芽を約3割,5割,7割と取り除いたものがあるんだ。写真の(4)は約5割取り除いたもので,5分づき米だね。
モンタ博士も初めて食べたけど,なかなかおいしいお米だよ。」
「へえー,そうなんですか。ぼくも
食べてみたいです。よく
見ると,
精白米とはずいぶんとちがいますね。それから,お
米のはじっこ
何か
付いているみたいな
感じですね。」[写真(4)の
参照]
「よく気がついたね。小さなグリコのおまけみたいなものは,『胚』というもので,植物の芽になる部分なんだよ。それ以外の部分を『胚乳』といって,『胚』が大きくなるための栄養がいっぱい入っているんだよ。」
「ふーん。『胚』とか『胚乳』とか,何だかむずかしい言葉ですね。」
「ごめんごめん。それではもう少し簡単に言うとね,つまり,胚は植物の芽生えになる『赤ちゃん』で,胚乳は,赤ちゃんのための『ミルク』なのさ。」
「つまり,私たちは,毎日,イネの赤ちゃんのミルクをもらっているということですね。」
「そうだね。イネ,つまり,お米があってよかったね。それでは,今からみんなでお米を炊いてごはんにして,『たまごかけごはん』を食べようか。」
文明と栽培植物
文明の発達について,植物学的見地から考察すると,文明発祥の地と植物,特に栽培植物が大きく関係していることがうかがえるのである。まず,上記にもあるコメは,古くはインドの河川や湿地近くに繁茂していた稲があり,その起源地として,インダス文明が考えられる。同じようにエジプト文明やメソポタミア文明の発祥地は,ムギ類の起源地である。また,中国文明の発祥地は,ダイズの起源地だ。さらに,中米のマヤ文明やアステカ文明にはトウモロコシがあり,南米のインカ文明には,ジャガイモが関係している。
つまり,栽培植物がそこに存在したからこそ,文明が発達したということが言えるし,文明が発達したから,そこに栽培植物があったということになり,人間の文明の発達には,大きく栽培植物が関係しているという結論になるのである。