2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(10)あら、不思議? 植物マジックの世界
(574)ムクロジ
「この前の,オー君のキュウリのシャボン玉遊びは,よかったね。最高だね。」
「そんなにほめられちゃうと,ちょっと恥ずかしい感じです。」
「その謙虚な姿勢がまたいいね。ほんとうに感心したね。」
「すごいね,よかったね。オー君,さすがだね。」
「そこでね,とても楽しいことを教えてもらったお礼にね,モンタ博士からも,シャボン玉のできる植物のお話をプレゼントしようと思ってね。」
「え! まだ,あるのですか。何という植物ですか。」
「それはね,下の絵を見てごらん。何という植物か分かるかな。」
「ぼくにはちんぷんかんぷんですが・・・。」
「私にも分からないわ。葉っぱは,小さな葉が集まった複葉ですね。羽状複葉のなかまですね。それに,下には実の絵もありますね。」
「さすがは,花ちゃん。羽状複葉なんていう言葉を知っているなんてすごいよ。」
「いえ,それほどもありませんが・・・。何という植物ですか。」
「これはね,ムクロジという植物だよ。どこにでもある木ではなくてね,中部地方以西に自生しているんだ。個体数はそれほど多くないね。お寺や公園などで目にすることもたまにあるよ。直径が50cmで高さが20mにもなる落葉高木だね。」
「ムクロジって,聞いたことないな。変な名前だな。」
「漢字でね,『無患子』と書いてね,薬としての効果もあったそうで,子供が患うことの無いように,つまりはね,子供が病気にならないようにという意味があるそうなんだ。」
「ひょっとして,ムクロジというのは,お正月の羽子板の羽根の玉にするものですか。」
「ピンポーン。そのとおりだね。あの黒い玉はムクロジの種子だね。シャボン玉遊びに使うのは,果皮と呼ばれるところなんだけど,写真のように,実を取ってきてペットボトルに入れて,シャカシャカすればいいんだよ。」
「かんたんにシャボン玉ができるんでしょうか。」
「そうだね。市販されているシャボン玉のようにうまくいくとは限らないけど,自分で採った植物でシャボン玉を作るなんて,とても楽しいお話でしょ。」
「そうですね。苦労した分,喜びや感動も大きいということですね。」
「シャボン玉が丸くならず,うまくいかないときにはどうすればいいですか。」
「そうだね。泡がもくもく出てくるだけでも楽しいだろう。そんなときにはね,半円のシャボン玉づくりでもいいね。」
「それにしても,昔の人はすごいね。今ならスーパーに行けば,すぐに洗剤なんか買えるけど,いろいろとある植物の中から,石けんのようなものを見つけちゃうんだ。」
「この泡の正体は,サポニンというものだけど,いろいろな植物に含まれているそうなんだ。身近な雑草から野菜やマメなどにもあるみたいでね,ある本には,サイカチという木でもシャボン玉遊びができると書いてあったよ。また,これらの植物は,自然に優しいエコ素材としても,注目されてきて,開発や研究を進めているそうなんだ。持続可能な社会のために,植物の果たす役割は大きいね。」
ムクロジについて
全国的に神社などに植えられているが,本来の自生は中部地方以西,四国,九州である。樹皮はなめらかであるが,古くなると大きくはがれ落ちることもある。花は6月頃,枝先に長さ20~30cmの円錐花序を出し,黄緑色の小さな花を多数つける。実は10~11月頃に熟し,果皮は袋状で半透明なあめ色が特徴的である。果皮にサポニンを含みよく泡立つことから,昔は洗剤や洗髪に広く使われた。核は羽根つきの玉や数珠に使用された。
サイカチについて
北海道以外,全国に分布しており,川岸や水辺に多いが寺社などにも植栽される。樹皮が大変特徴的で,枝の変形した鋭い棘が分枝している。5~6月に長さ10数cmの穂状花序を出し淡い黄緑色の花をつける。実は扁平でねじれ,10~11月頃に熟すと濃い紫色になる。実は振ると種子が中で移動し音がするので,楽器などとしても楽しむことができる。