1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
2.植物の世界
(5)裸子植物のなかま
(10)あら不思議? 植物マジックの世界
6.その他
(1)動画で楽しむ世界
(4)実験・観察・調査から
(555)シラビソ・オオシラビソのひみつ
「花ちゃん,オー君。上の写真は何か分かるかな。」
「なんだろう。白っぽいですね。それに,横にすじのようなものがありますね。」
「緑色の点々もたくさんあります。何だろう。ちんぷんかんぷんです。」
「では,次の写真を見てごらん。何か分かるかな。」
「分かった! 何かの木だ。でも,何だろう。花ちゃん! 分かる?」
「何かの木は分かるけど・・・あまり見かけない木ですね。」
「それでは,次の写真ではどうかな。」
「分かった。これは,どこかの山の木ですね。」
「木は木だけど,広い葉ではないし,落葉樹でもなさそうですね。あ! 分かった。針葉樹ですね。針葉樹の森でとった写真ですね。」
「そうだよ。上の写真は,東北の高い山でとったものなんだ。シラビソやオオシラビソなどだね。」
「シラビソ? オオシラビソ? あまり聞かない名前ですね。」
「亜高山の森には,シラビソやオオシラビソなどの針葉樹が多いのですね。」
「さすがは花ちゃん。くわしいね。ところで,今日はある発見と,ある実験をお知らせしようと思っているんだよ。」
「ある発見? ある実験? 何だろう。わくわくドキドキしますね。」
「まず,もう一度,写真を見てほしいんだ。」
「さっきの写真ですね。」
「
の
部分をよく
見てほしいのさ。
何か
気がつかないかな。」
「何か横にふくらんだようなものがありますね。」
「いぼみたいな感じですね。さわったらどうなるのかな。」
「そうだよね。さわりたくなるよね。そこで,モンタ博士は,ある時,手でさわってみたのさ。そしたらね,少し弾力がある感じでね,思いっきり爪で押したら・・・,そしたらね,何と! 何と!」
「どうしたのですか。もったいぶらないで教えてください。」
「そしたらね,プニュっと透明な『なぞの液体』が出てきたからおどろいたんだ。そして,においをかいだら,松ヤニのようないいにおいがしてね,それから,勇気を出して,なめてみたんだ。そしたらね,何と! 何と!」
「どうしたんですか。またまたもったいぶらないで教えてください。」
「めちゃくちゃあまかった。といいたいけど,味はまったくなかったね。」
「なーんだ。つまんないですね。」
「ところがどっこい,そうではないんだよ。これは,シラビソやオオシラビソの油だろうと考えて,綿棒にその『なぞの液体』をつけて,おうちに持って帰ってから,火をつけて実験したんだよ。そしたらね。」
「そしたら・・・どうなったのですか。」
「下の写真にあるように,見てもらえば分かるように,黒いけむりを出しながら,ものすごい勢いで燃え上がったのさ。」
「うわー! すごい。なぞの液体をつけると,すごく燃えるんですね。」
「燃え方のちがいがはっきりとしていますね。なぞの液体ってすごいですね。」
「そうなんだ。そこで,図書館に行っていろいろと調べたらね,そしたらね。」
「そしたら・・・どうなったのですか。」
「いろいろなことが分かったんだ。」
「いろいろなことって,どんなことですか。」
「まず,シラビソもオオシラビソもどちらもマツ科の植物で,樹皮は灰白色で平らで,樹脂の『ふきでもの』がよく見られると書いてあったよ。」
「ふきでもの・・・なるほど,そういえばそのように見えますね。」
「それから,ある本には,樹皮に細長い楕円形の『樹皮だまり』があるとも書いてあったんだ。さらに,同じマツ科のカラ松などからは,テレピン油などを取り,アカマツ,クロマツからは,松根油を取るとも記されていたね。」
「いろいろと分かったり,おどろいたり,ほんとうに楽しいですね。」
「そうだね。『松ヤニ』といっても,すぐに見られるものではないけど,高い山のシラビソやオオシラビソならば,すぐに分かるし,それに,『たいまつ』という意味がよく分かったよ。」
「たいまつの意味・・・どういうことですか。」
「たいまつを漢字でどう書くかというと,『松明』と書くんだ。つまり,松の明かりなんだね。ひょっとして,昔の人は,こうやって油を集めて生活に生かしていたのかもしれないね。」
松明について
英語では,torchともいい,古くから明かりとして使用してきたものである。手で持てるように改良したり,様々な植物を用いて試行錯誤しながら,より良いもの使いやすいものへと開発・工夫してきたことだろう。また,神聖な火を運ぶという古くからの神事や火祭りは,世界のあちこちで行われてきて現在に至るようである。日本では,夏などにたいまつで田畑の上を飛ぶ害虫を焼く「虫送り」「虫追い」なども行われていたそうだ。日本語の「たいまつ」の語源は,「焚き松」や「手火松」などいろいろな説がある。『日本書紀』や『万葉集』等にも松明についての記載は様々ある。