1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(4)自然のめぐみ
(550)植物観察ツールいろいろ
「モンタ博士! 植物を観察するときに,五感を使い体全体で観察することの大切さは,とてもよく分かりました。ところで,その五感の中で,一番大切なものは何なのですか。」
「ふーむ。なかなかむずかしい質問だね。どれもこれも大切なものだね。一番というのはよく分からないけど,観察の中心となるもの,または観察の基本となる感覚というのは,やっぱり『目』で見ることではないかな。」
「目で見るって,ただ見ればいいというわけではないんですね。例えば,どんな見方があるのですか。」
「そうだね。まず,大きく広く見る方法だね。」
「大きく見るというと・・・例えば・・・どういうことですか。」
「ウルトラマンやガリバーみたいに,大きくなって見る見方だね。また,大空を飛ぶワシやタカのように,高い所からながめるような見方でもあるね。」
「具体的にどんなものを観察すればいいのですか。」
「そうだね。山全体の風景や形や色,落葉樹や常緑樹のしめる割合や,尾根と谷の森のようすなども高い所から見ると,そのちがいが分かるね。」
「山や森の中を歩いているときには,どんな見方があるのですか。」
「そうだね。道の左右を比較してみたり,尾根と沢のちがいを見たりすることもいいね。」
「大きく見ると,いろいろなことが分かるんですね。」
「そうだね。次に,肉眼で40~50cm離して見る普通の観察方法もあるね。」
「つまり,対象物の正確な大きさや色,形を知るのに適していますね。」
「例えば,1枚の葉のつき方や縁の様子,さらに葉脈の走り方なども分かるし,いくつかの葉を比較し,その共通点や相違点を見つけるのもいいね。」
「しかし,それでも人間の目では見えるものに限界がありますね。」
「そうだね。そんなときのために『観察器具』というツールが必要になってくるんだよ。」
「分かった。ルーペなどの拡大して見るための虫メガネですね。」
「1枚の葉を細かく観察するときには,ルーペが必要だね。ルーペという『科学の目』は,今までに見たこともないようすや姿などの発見があり,大きな喜びにもなるね。4~5倍のかんたんなものもいいけど,さらに15~20倍程度のものもあると,さらにいろいろなものが見ることができて楽しいだろうね。」
「どんなものが見えるのですか。」
「そうだね。いろいろな植物の葉の表面の毛や葉脈のようす,それから,ミカン科の植物などは,油点と呼ばれる点までも見ることができるよ。」
「楽しそうですね。ルーペを使いこなしていけば,観察がより充実しますね。」
「それから,双眼鏡も大切なツールだね。1つあれば,遠くの山や木の枝のようすもよく分かるね。それから,モンタ博士は,高い木の枝先の葉を見て,植物名を知るためにも双眼鏡は絶対に必要だね。」
「鳥を見たりするにも,双眼鏡はとても役に立ちますね。」
「そうだね。ここで,鳥を見るときのコツだけど,対象の鳥をじっと見つめたまま,そのまま双眼鏡を目に当てるといいんだ。対象物がぶれないんだよ。」
「もっともっと細かくていねいに見たいときは,どうするのですか。」
「そんな時には,顕微鏡があるね。葉の気孔や細胞の姿を見るのもいいし,いろいろな植物の花粉のようすも見ていて楽しいものさ。」
観察の重要性について
理科は自然の事物・現象を対象とする学習であり,事物・現象がなければ学習は成立しない。そして,その事物・現象をよく注意して詳しく見極めることが観察ということである。実験とは一定の条件で期待する現象を起こさせることであり,広い意味で実験も観察の範疇に入る。
自然の事物・現象を上記のように考えると,認識する手段としては,子供自身の感覚以外にないことになる。つまり,観察や実験を行うということは,感覚器官を十分に働かせて事物・現象を調べ,問題追及していくということである。発達段階に応じてその観察の程度には差があるが,小さい頃より観察に親しんだり,また,その観察の場を多く設定したりすることにより,観察能力は少しずつ高まり,それが習慣化され,態度が培われるといえる。地道にこの能力と態度を高めることが,自然の事物や現象の理解に通じ,自然を愛する心情を育てていくのである。さらに,感性の育成という観点からも,五感を活用した直接体験的な活動が重要であるといえる。