1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
2.植物の世界
(8)植物の名前・分類・特性について
(530)お寿司と植物
「うわあー! お寿司だ! うまそうだ!」
「うわあー! お寿司,私も大好き。中トロ最高。イクラもサーモンも好き!」
「モンタ博士も大好きだよ。回転寿司ではいつも食べ過ぎちゃいますね。ところで,みんなが大好きなお寿司だけど,いろいろな植物のおかげで今のお寿司があるんだけど,知っているかな。」
「え! 植物のおかげ? どういうことですか。」
「日本は高温多湿といって,暑くて湿度が高いだろう。そうすると,食べ物がいたんだりくさったりしてしまうんだ。そこで,抗菌作用のあるいろいろな植物を利用してきたというわけなんだよ。」
「具体的にどういうことなんですか。もっと分かりやすく教えてください。」
「それじゃ,みんなでお寿司屋さんに行ったとしよう。回転寿司ではなく,本格的なお寿司屋さんだよ。カウンターにすわると,木の板が出されるけど,みんなは見たことがあるかな。」
「絵のような台ですね。それがどうかしたのですか。」
「この台に使われるのがヒノキやサワラの板で,抗菌作用をもつテルペン類が含まれているし,寿司ネタの並んだケースにはヒノキの葉があったりするね。」
「うん。そういえば,ぼく見たことあります。」
「そうだろう。それから,板の上にガリという酢づけのショウガを置くんだ。」
「ガリって,とてもおいしいですね。わたし大好きです。」
「このショウガのガリも抗菌作用があり,口の中がさっぱりするね。」
「だんだんおなかがへってきました。お寿司を早く食べたいです。」
「それでは,イカとアジを注文したとするよ。イカの上にはシソの葉がまかれ,アジにはきざんだネギがある。これは抗菌作用のある植物なんだ。」
「ふーん,なるほど。次はマグロも食べたいですね。」
「そうだね。マグロはモンタ博士も大好きだ。中トロ,大トロ最高だよね。ところで,みんなは子供だから『さびぬき』で,ワサビは入れないのかな。」
「いいえ,ワサビがあるから,お寿司がまたおいしくなると思いますが。」
「そのとおり,ワサビも抗菌作用がとてもあり,お寿司の味を引き立ててくれるし,腐敗をふせぐために利用されているんだよ。」
「なるほど,うまくできているんですね。」
「そして,次は何をたのもうかと,お茶を飲むけど,このお茶もいいんだ。」
「お寿司屋さんでは『あがり』とよばれていますね。」
「これまたお茶にも,抗菌力のあるタンニンやカテキンというものがあるんだ。そして,最後にお土産に寿司折でも持って帰るとしよう。この寿司折の箱もスギやヒノキをうすくけずったものだ。駅弁の箱もそうだけど,もともとは食べ物の腐敗をふせぐためということなんだね。」
「どれもこれも,お寿司を守るためにいろいろな植物があるんですね。」
お寿司と発酵技術
今ではいつでもどこでも簡単に食べられるお寿司であるが,冷凍技術の無かった昔は,生の魚を食べることは容易なことではなかった。江戸前という言葉があるが,近海の江戸湾の魚しか食べられなかったのだ。寿司のルーツは,もともとは魚の保存食であり,食べ物が傷むのは,雑菌が繁殖して腐敗させるためである。そこで,無害な発酵菌をあらかじめはびこらせることで,雑菌をよせつけないのが発酵技術だ。納豆,醤油,味噌,糠漬けなど,日本の食卓を支える保存食は発酵技術の賜物なのである。やがて,江戸時代になると,米を発酵させた酢が普及されると,ご飯に酢を加えて寿司を作るようになったのだ。日本人のたゆまぬ食文化創造には頭を垂れるのみである。ああ! 日本に生まれてよかったなあと思う今日このごろだ。