2.植物の世界
(2)葉・茎・根のつくりとはたらき
(13)植物で健康シリーズ! 薬の世界
(523)クズの茎と根
「モンタ博士! この前はクズの葉と虫のお話,どうもありがとうございました。」
「クズの葉といろいろな虫の関係がとてもよく分かりました。」
「クズのお話は,もう終わりですか。」
「クズの花,クズの葉,と書いたので,今日は,クズの茎と根についてお話ししよう。まず,クズの茎(つる)というのは,それはそれはよく伸びるんだ。」
「どのくらい伸びるのですか。」
「モンタ博士がおうちの近くで,一日にどのくらい伸びるかを観察したことがあったけど,その時は,一日に50センチも茎(つる)が伸びたんだ。」
「へえー。すごく伸びるんですね。」
「とても
太い
茎になるし,
葉っぱを
取って『なわとびのなわ』にして
遊ぶこともできるんだよ。これはおもしろいからぜひやってごらん。それから,たくさん
伸びすぎて,こまってしまうこともあるけど,
昔はこの
茎から
繊維をとり,『
葛布』という
布を
作っていたんだよ。」
「クズって役にたっていたんですね。」
「クズは,根もとても大切なんだ。」
「根っこをどうするのですか。」
「でんぷんを取るためさ。モンタ博士はね,今から20年くらい前に自分でクズの根を掘ったことがあるんだ。」
「どこで掘ったのですか。」
「モンタ博士のおうちの近くの川で,一人で掘ったのさ。直径2m,深さ1mくらい掘ったね。そして,写真くらいの根っこを掘り出したんだ。」
「クズの根っこから,でんぷんが取れるんですね。」
「そのとおり。クズの根っこから取ったでんぷんは『くず粉』といわれるもので,いろいろなでんぷんの中でも特に質のいいものといわれているのさ。」
「『くず湯』というのは,この『くず粉』をお湯にとかしたものですか。」
「そのとおり。『くず粉』から作った『くず湯』を『葛根湯』といい,冬のかぜ薬としても用いられてきたんだよ。発汗や解熱の作用があるんだよ。」
「へえー。クズってすごい植物なんですね。」
「それだけじゃないよ。クズはお菓子にもなるんだよ。」
「え! お菓子? どんなお菓子があるのですか。」
「そうだね。モンタ博士が好きなクズを使ったお菓子といえば・・・いろいろあってこまってしまうけど・・・まず,くずきり。それからくずまんじゅう。さらに,くずようかんなんていうのもおいしいね。それから,くずもちなんかも好きだね。」
「くずきり,くずまんじゅう,くずようかん,くずもち・・・食べたいな!」
「クズって,きれいなお花を咲かせ,虫たちにミツを与え,葉はいろいろな虫の食べ物になったり,茎で布を作ったり,根っこはかぜ薬になったり,お菓子になったり,すごいんですね。クズを見直しました。」
「そうだね。日本人は,昔から植物と仲良くくらしてきたというわけだね。」
おまけのクズのお話
秋の七草の1つにも数えられるクズは,野山に自生するつる性の多年草です。古くから薬用や飢饉の時の救荒食とし,茎の繊維で布を織るなど,生活に密着した身近な植物でした。ところが最近は全く顧みられず放棄され,害草として嫌われています。
かつてアメリカの大統領が土壌緑化保全や水源確保のための植物として,日本のクズに目をつけました。成長が早くやせ地でもよく育ち,堤防の崩壊などを防ぐなど,当初はその威力を発揮しましたが,あまりの猛烈な繁殖力で森林に大被害を与え,今では世界中に緑の恐怖を与えています。ところが,近年また,中国奥地やアフリカの砂漠の緑化に用いられ,植物の全く生えない裸地では大いに認められています。また,クズは,栄養価に富み,アメリカでは家畜の肥料として高く評価されてきています。日本でも昔は家畜の飼料としていましたが,まったく利用されていません。