2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(490)アジサイ
ガクアジサイ
「あ! これは,学校のうら庭に咲いている花だ。ガクアジサイというんだ。」
「うわー! オー君。よく知ってるわね。私もガクアジサイ大好き。」
「モンタ博士も大好きだ。でも,このごろ梅雨入りしたといっても,なかなか雨がふらないね。雨にぬれて咲くのもすてきなんだけどな・・・。」
「ところで,モンタ博士! どうしてアジサイという名前がついたのですか。」
「いい質問だね。アジサイは昔は「アズサイ」とよばれていたんだよ。」
「アズサイって,なんですか,そりゃ。」
「アズとは集まるということ。サとは真と書いて本当ということ。イとは藍と書いて青いということ。ようするに,『集まり咲く真のあい色』ということなのさ。」
「モンタ博士,アジサイのほかのよび方は何かあるのですか。」
「よく聞いてくれたね。アジサイは咲き始めから終わるまでの間,花の色が変わっていくので七変化ともいうのさ。」
「ねえ,ちょっと待って,アジサイって,下の写真のようなものがアジサイなんでしょ。ガクアジサイとはちがうんだ!」
「そのとおりだ。ガクアジサイは原種なんだ。原種というのは,いろいろな種類のアジサイを改良して栽培するもととなるものなんだ。改良・栽培したものは,栽培種とか品種とかいうのさ。」
「ガクアジサイは,もともと日本にあったアジサイということなんですね。」
「そうだね。ふつうよく植えられている玉のようなアジサイを品種名でセイヨウアジサイと呼んだり,学名そのままでハイドランジアとかいうのさ。」
「うーん。原種とか品種とか,学名とか・・・おいら,分かんなくなったよ。」
「ほかにも変種と亜種とかもあるけど,ちょいとむずかしいお話になってごめん。そのうち,やさしく説明してあげるよ。」
「ところで,栽培されているものではなくて,山にはどんなアジサイがあるの。」
「そうだね。おととい,モンタ博士がおうちの近くの雑木林に行ったら,コアジサイというアジサイがきれいだったね。山のアジサイには,他にもヤマアジサイ・ツルアジサイ・ガクウツギなどがあるんだ。モンタ博士が一番のお気に入りのアジサイは,タマアジサイだ。山で一番おそく咲くアジサイさ。」
アジサイというお花
アジサイは
土壌の
性質によって,
花の
色が
変わることが
知られています。
一般に,
酸性の
土壌では
青色はいっそう
冴えて
美しくなります。これは,
土の
中のアルミニウムや
鉄が
酸に
溶解して
吸収されるからです。すなわち,鉄やアルミニウムが
可溶性の
状態で
存在することを
示すものと
言われています。花の色を
決めるのは,アントシアンやアルミニウム,さらに
別の
有機化合物がお
互いに
作用し
合うのではないかと
考えられています。しかし,
薬品で
極端に土壌の
酸度を
変えると,
枯れる
原因にもなります。
日本の土壌は酸性ですから,一般に青色のものが
多く
見られます。しかし,ベニガクというアジサイは酸性土壌でも美しい
赤になります。それは,
品種の
特徴です。
日本のアジサイを
世界に
紹介したのは,日本の
西洋医学の
目を
開かせたシーボルトという
人です。
彼は『日本
植物誌』という
本の
中に,
自分の
愛した
日本人女性「お
滝さん」の
名を
学名に
入れて,「ハイドランジア・オタクサ」と
発表しました。オタクサというのは,
今やアジサイの
世界共通語となっています。
ほのあけの 光のさむき 岩の間の タマアジサイは 皆蕾なり(鹿児島寿蔵:人形作家・歌人・人間国宝)