東書キッズ

３．動物（どうぶつ）の世界（せかい）
　（4）鳥（とり）のなかま

（479）ノスリ

「うわあー！とてもこわそうな鳥（とり）だね。」

「それはそうよ。この鳥（とり）はノスリといってね，ワシやタカなどのなかまなのよ。小（ちい）さな動物（どうぶつ）や小鳥（ことり）などをおそって食（た）べてしまうの。」

「へえー。そうなんだ。とても強（つよ）そうだね。ワシやタカって，他（ほか）にどんな種類（しゅるい）がいるのかな。」

「そうね，いろいろといるけど，ちょっと山（やま）のほうへ行（い）けば，オオタカとかもいるし，トンビなどもそのなかまだと思（おも）うわ。」

「お！トンビ，つまり正（ただ）しくは『トビ』というけど，モンタ博士（はかせ）にもお話（はな）しさせてよ。『悲劇（ひげき）･･･モンタ博士やきそばパンゲットされ事件（じけん）』というのがあるんだ。」

「『やきそばパンゲットされ事件（じけん）』？何（なん）ですかそれは？」

「聞（き）くも涙（なみだ），語（かた）るも涙のお話（はなし）だよ。」

「へえー。どんなことがあったのですか。」

「今（いま）から十数年前（すうねんまえ）のある日（ひ），モンタ博士（はかせ）と小（しょう）学（がっ）校（こう）２年（ねん）生（せい）のむすめと三浦（みうら）半島（はんとう）に行（い）って，お昼（ひる）にしようと，やきそばパンを食（た）べようとした時（とき）に，とつぜんトビにパンを持（も）っていかれたんだ。一瞬（いっしゅん）何（なに）がおこったか分（わ）からなかったけど，足（あし）でパンを持（も）ったトビが遠（とお）くへ飛（と）び去（さ）っていく時（とき）には，本当（ほんとう）に涙（なみだ）が出（で）そうだったね。」

「本当（ほんとう）のお話（はなし）ですか。」

「もちろんさ。モンタ博士（はかせ）だけではなく，他（ほか）にも被害（ひがい）にあった人（ひと）もいるそうだ。それからモンタ博士は，とてもくやしいから，どうしてあんな高（たか）い所（ところ）にいるトビがやきそばパンが分（わ）かるのか不思議（ふしぎ）に思（おも）ってね，いろいろと調（しら）べたんだ。」

「それで，どんなことが分（わ）かったのですか。」

「鳥（とり）という生（い）き物（もの）は，めちゃくちゃ目（め）がいいということさ。例（たと）えば，タカなどは人（ひと）の視力（しりょく）の８倍（ばい）もあるそうだ。つまり，人が100ｍ（メートル）先（さき）のものを認識（にんしき）できる時（とき），タカは800ｍ先から同（おな）じものが認識できるということさ。」

「つまり，下（した）の絵（え）のように，私（わたし）は100ｍ（メートル）はなれた所（ところ）からオー君（くん）が分（わ）かるように，タカは800ｍはなれた所からオー君が分（わ）かるのね。」

「なーるほど。だから，地上（ちじょう）の小（ちい）さな動物（どうぶつ）や，枝（えだ）に止（と）まっている小鳥（ことり），それから，モンタ博士（はかせ）の食（た）べようとした『やきそばパン』も見分（みわ）けられるというわけですね。」

鳥（とり）の視覚（しかく）

　鳥（とり）は視覚（しかく）の動物（どうぶつ）。高速（こうそく）で空（そら）を飛（と）ぶためには，優（すぐ）れた視力（しりょく）がなければ生（い）きていけません。例（たと）えば，人（ひと）は１分（ぷん）間（かん）に80ｍ（メートル）で歩（ある）き，１ｋｍ（キロメートル）進（すす）むのに12分（ふん）30秒（びょう）かかります。一方（いっぽう），鳥の平均（へいきん）速度（そくど）を60ｋｍとすると，１分間に1000ｍのスピードで飛ぶことになります。80ｍ進むのに4.8秒しかかかりません。わずかな時間（じかん）に前方（ぜんぽう）の物体（ぶったい）に目（め）を留（と）め，安全（あんぜん）か危険（きけん）かを判断（はんだん）し，行動（こうどう）しなければなりません。
　鳥（とり）は大（おお）きな目（め）玉（だま）（優（すぐ）れたズームレンズ），優れた視（し）力（りょく），俊（しゅん）敏（びん）な反（はん）射（しゃ）機（き）能（のう）を持（も）ち合（あ）わせています。また，眼球（がんきゅう）が大きいだけではなく，網膜（もうまく）の最（もっと）も感（かん）じやすい部分（ぶぶん）にある細胞（さいぼう）が，単位（たんい）面積（めんせき）あたり，人（ひと）が20万個（まんこ）あるのに対（たい）し，鳥は120万個もあるそうです。そんなわけで，人の視力は鳥にはかなうはずがありません。さらに，フクロウのような夜行性（やこうせい）の鳥は，ほんのわずか星（ほし）明（あ）かり程（てい）度（ど）の明（あか）るさでも，鋭敏（えいびん）に感（かん）じる特別（とくべつ）に発達（はったつ）した細胞（さいぼう）組織（そしき）をたくさん持ち，これでとらえた映像（えいぞう）を櫛状体（くしじょうたい）というもので増幅（ぞうふく）するそうです。