3.動物の世界
(1)動物の生殖
(464)アオムシコマユバチ
「モンタ博士! たいへん,たいへんです。」
「どうかしたの?」
「あのね,ぼくたちアオムシをね,つまり,モンシロチョウの幼虫を一生懸命に育てていたんです。」
「なるほど,なるほど。それで・・・。」
「そしたらね,なんと,小さな虫が出てきて,いつのまにか写真のようなまゆになってしまったの。」
「なーるほど。それはアオムシコマユバチという寄生蜂だ。」
「アオムシコマユバチ? 初めて名前を聞くハチですね。」
「寄生蜂? どんなハチなんですか。」
「アオムシコマユバチのメス蜂がモンシロチョウの幼虫にたまごを産みつけて,モンシロチョウの幼虫に寄生(生物がほかの生物から養分をうばって生活すること)するから寄生蜂というんだよ。」
「産みつけられたたまごは,その後どうなるのですか。」
「たまごからかえったハチの幼虫は,モンシロチョウの幼虫の体を食べながら,つまり,養分を取りながら大きくなっていくんだ。」
「モンシロチョウの幼虫は死なないのですか。」
「モンシロチョウが死んでしまったら,ハチの幼虫も死んでしまうだろう。そこで,ハチの幼虫は死なない程度にモンシロチョウの幼虫を生かしながら養分をとっていき,大きくなるんだ。」
「寄生されたモンシロチョウは,もうさなぎになったり,成虫になったりできないのですか。チョウにはなれないのですか。」
「そのとおりだ。チョウにはなれない。」
「そんなの,ちょっとずるい感じがしますが・・・。」
「そうともいえないんだ。食う・食われるのが生物界のすがたなんだよ。ヘビとカエルの時と同じで,生物はみんな,生き物どうしでそのようにつながっているんだ。もし寄生蜂が寄生しなかったら,モンシロチョウだらけになってしまうんだ。」
「そうか,ハチが寄生することで,生物界のバランスをとっているということですね。ヘビとカエルの関係も同じなのですね。」
「モンシロチョウは,どのくらい寄生されているのですか。」
「いろいろな研究者が調べた結果,100匹の幼虫のうち,成虫までなるのは数匹なんだ。ある本には2パーセント,つまり100匹のうち2匹という報告もあるよ。」
「そうなんだ。それじゃ,ほとんどの青虫はモンシロチョウになれないの。」
「それじゃ,どうすればいいんですか。モンタ博士!」
「幼虫には,寄生蜂がたまごを産んでしまうけど,たまごには寄生できない。だから,たまごの時から育てれば,絶対にうまくいくよ。まちがいなしだ。」