3.動物の世界
(1)動物の生殖
(425)秋鳴く虫のひみつ
「モンタ博士,このごろ夜になると,秋の虫の鳴き声が聞こえて,とってもいいですね。でも,どうして虫は鳴くのかな。」
「そうだね。虫の音とともに秋を感じることが大切だね。国立七小の校庭のコスモスも少し咲き始めたね。ところで,秋の虫が鳴くわけは,オスが羽をこすり合わせて,メスにラブコールを送っているからなんだよ。」
「モンタ博士,オスは羽と羽をこすり合わせて鳴くというけど,そんなにかんたんに音が出るのですか。」
「羽のうらに太い脈があって,その脈にヤスリのようなものがついているんだ。そして,もう一方の羽のまさつ片をこするというわけさ。バイオリンにちょっと似ている感じかな。」
「ところで,花ちゃんは,秋の鳴く虫でどんな虫が好きだい。」
「やっぱり,私はスズムシが一番好き。それから,コオロギもすてきな鳴き声を聞かしてくれるわね。」
「ねえ,花ちゃん。コオロギといっても,いろいろな種類がいて,鳴き声がみんなちがうの知っていた。」
「コオロギって,みんな鳴き声が同じじゃないの?」
「ちがうよ。ぼくは,鳴く虫の音を録音したんだ。花ちゃんにも聞かせてあげるよ。」
ということで,みんなで『秋の虫の音コンサート』を聞くことになったとさ・・・。
「まずは,エンマコオロギだ。こいつはきれいな声なんだ。」
「コロコロリー。コロコロリー。」
「次は,オカメコオロギだ。4,5音ずつくぎって鳴くよ。」
「リッリッリッリッ,リッリッリッリッ。」
「最後は,ツヅレサセコオロギだ。長く鳴き続けるよ。」
「リ・リ・リ・リ,リ・リ・リ・リ。リ・リ・リ・リ,リ・リ・リ・リ。」
「なーるほどね。ところで,私は小さい時からピアノを習っているから,耳には自信があるんだけど,さっきから,かん高い声で,チリチリチリっていうか,ジリジリジリっていうか,リィーリィーリィーって感じかな。何だかうるさい感じで鳴いている虫がいるように聞こえるんだけど・・・。」
「そうなんだ。このごろ,アオマツムシというやつが,ものすごく増えているんだ。明るい外灯にもよく集まるんだ。」
「そのアオマツムシって,コンビニの明かりにもよく来る虫かな。」
「そのとおり,このアオマツムシというのは,もともと日本にはいなかった虫でね,帰化昆虫(外国から来た虫)というのさ。日本の虫の鳴き声がかき消されてしまう感じで残念だね。」
「歌にある ♪あれマツムシが鳴いているチンチロ・チンチロ・チンチロリン♪ というマツムシとはちがうんですか。」
「形はよく似ているけど,色がちがうんだ。それに,マツムシは草はらや林のふちで鳴くんだ。でも,アオマツムシは木の上さ。」
「外国から来た虫が,どうしてそんなに増えたのかな。」
「日本の鳴く虫はほとんど土の中にタマゴを産むんだけど,アオマツムシは,木にタマゴを産むそうだよ。それで,同じような所に生活する虫が日本にはいないので,たくさんはびこってしまったというわけさ。」
生態的地位(ニッチ)の空間に侵略されつつある日本!
すだく虫の音は何処へ!
生態系の中で個々の動物や植物の種類がその存在を占める相互関係を生態的地位(ニッチ)という。日本の生態系にはアオマツムシのように木に卵を産むバッタ類は存在しなかった。そこで,その生態的地位の空間をねらってはびこっているわけである。道を歩いていて,草むらから聞こえてくる虫の音は日本産である。なお,「すだく」という言葉は草むらなどに虫たちが集まり鳴く様子を言うのである。もし,木の上の方で鳴いていたら,まずアオマツムシに間違いない。日本の秋の風情を静かに楽しみたいのになあ…。残念無念だ!