2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(398)カラスノエンドウ
「あ! この花は見たことあるよ。」
「そうね。あちこちで見られるわ。校舎の北の畑のあちこちに生えているわ。」
「よく見ると,きれいな花だね。」
「そうね。ピンク色していて,チョウチョのような形ね。」
「オー君。この花をよく見てごらん。何か気がつくことはないかな。」
「ふーむ。花がピンと上に立ち上がっている・・・。そうか,謎はとけた! この立っている花は虫たちに蜜のありかを知らせるためにあるんだ。」
「そのとおり。目じるしなんだね。ハナバチなどがやってきて,足で下の花びらを押し下げると,おしべやめしべが出てきて,花の奥にある蜜をもらう代わりに,ハナバチのおなかに花粉をつけて運んでもらうのさ。」
「小さな花なのに,いろいろとひみつがあるんですね。感心します。」
「それからね,次の写真は何かな。葉のつけ根に黒いものがあるよ。」
「何だろう? まったくちんぷんかんぷんです。」
「この黒いのは,蜜を出す『蜜腺』というものなんだ。」(正しくは花外蜜腺)
「蜜は,虫を呼びよせるために花の中にあるのでは・・・?」
「ところがどっこい。カラスノエンドウは,花の外で蜜を出しているのさ。」
「なぜ,そんなことをするのですか。」
「それはね,アリを呼びよせるためなのさ。」
「そうか! アリは甘い蜜を求めてカラスノエンドウにやってきて,そのアリがカラスノエンドウの茎や葉を食べようとする害虫を,追っぱらってくれるんですね。」
「そのとおりだ。アリは蜜をもらったお礼に,カラスノエンドウのガードマン・用心棒になっているということなのさ。」
「小さな花なのに,いろいろとひみつがあるんですね。感心ですね。」
ところが,このお話まだまだ続編があります!
このガードマン・用心棒を寝返らせる害虫としてアブラムシが登場するのである。アブラムシはアリマキと言われるくらいアリとは仲良しで,アブラムシはお尻から甘い蜜を出し,アリはその蜜を吸う代わりにアブラムシを天敵から守るのである。しかし,ここでよく考えると,この甘い蜜というのは,もともとはカラスノエンドウという植物が葉で作った糖分である。最強のアリ軍団を誘い,守備隊にしようともくろんだように見えるが,さにあらず・・・。このアリたちが守っているのは,カラスノエンドウではなく,そのカラスノエンドウに寄生して栄養である糖分を掠め取っている大量のアブラムシたちなのだ。本当にまあ,生き物の世界は摩訶不思議!