1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
(382)サンゴってなんだ?
「え! うそっー! ちがうでしょ。」
「うそじゃないよ。本当だよ。」
「おやおや,二人ともどうしたの?」
「ぼくがサンゴのことを動物だっていったら,花ちゃんがちがうって。」
「だって,サンゴって宝石にもなるし,石なんじゃないの?」
「サンゴは,どう見ても生き物の骨みたいじゃないか。だから動物だよ。」
「なるほどね。正解は『動物』だけど,それは骨じゃないんだな。今からみんなで図鑑で調べてみよう。」
ということで,みんなで図書室に行ったとさ・・・。
「まぁ,きれい! いろいろなサンゴがあるわ。でも,珊瑚礁ってどう見ても石じゃないのかな?」
「あれっ,あれあれ! イソギンチャクやクラゲの親戚なんだぁ。それじゃ,骨はないよね・・・。」
「つまりね,小さいイソギンチャクが,自分たちで団地やマンションを建てて一部屋ごとに暮らしているイメージかな。その建物が硬くて石みたいなんだね。珊瑚礁を形作るような大きくなる種類は造礁サンゴというよ。」
「自分の体は柔らかいのに不思議ですね。」
「それはね,ちょっとむずかしいお話になるけど,海水から必要な炭素やカルシウムを取り入れて合成するんだ。サンゴは不思議がいっぱいだよ。体に藻類をすまわせて,光から栄養をつくらせる種類もいる。植物みたいだね。」
「わたし,こんな珊瑚礁のきれいな南の海で泳ぎたいな・・・。でも,北の寒い地方にはないのかしら?」
「サンゴは,海が暖かく浅い所が好きで,珊瑚礁を「海の中の熱帯雨林」とも呼ぶよ。そして,たくさんの生き物が暮らす場所になっているんだ。造礁サンゴの北限は,日本では千葉県や神奈川県あたりらしいね。」
「図鑑にはオニヒトデが天敵って出ています。見るからに悪そうなヤツだ。」
「こっちの写真ではサンゴが枯れてしまっているわ。」
「サンゴは自由に動けないから,天敵や環境の変化にとても弱いんだ。例えば,山の木を切りすぎて,大雨で山の泥が川に入る。それが海に流れてくると泥水をかぶって死んでしまう。」
「そうなったら,そこで暮らしていた生き物たちはどうするのかしら・・・。」
「せっかくだから,これも見て。大昔のサンゴの化石だよ。東北の宮城県の山で見つけたんだ。」
「えっ,さっき“暖かくて浅い海が好きで”“北限は千葉県・神奈川県”っていいませんでしたか?」
「昔は,日本も暖かった証拠じゃないの?」
「そうだね。昔,海の底だった所が長い間に陸になり,山の中でサンゴが見つかるわけなんだ。当時の気候など環境が分かる化石を『示相化石』というよ。」
※珊瑚礁とは,大きな岩や島みたいになったものをいう。