2.植物の世界
(14)不思議な植物シリーズ
(369)ライオンゴロシとは?
「ねえ,花ちゃん。校長室前に変なものがあるんだけど,もう見た?」
「変なもの? 何だろう。わたしはまだ見てないわ。」
「それでは見に行こう。ともかく変なものなんだ。」
ということで,二人で変なものが置いてある校長室前に行ったとさ・・・。
「ほら,見てごらん。変なかっこうしているだろう。」
「へえー。本当に変なかっこうしているわね。何だろう。」
「ほほー。よく気がついてくれたね。校長室前には,みんなが見たりさわったり,ためしてみたり,わくわくドキドキするようなものをいっぱい集めておくからね。だから,いろいろと楽しんでくださいね。」
「ところで,この変なものは何ですか。」
「これはね,ライオンゴロシというんだよ。」
「ライオンゴロシ?」
「変な形だし,変な名前ですね。」
「ライオンというのは,百獣の王の『ライオン』さ。ゴロシとは,あまりよい言葉ではないけど,『ころし』(殺し)ということさ。」
「へえー。変な名前だけど,どうしてそんな名前になってしまったのですか。」
「その前に,これはゴマ科の植物で,アフリカなどの砂漠に生えているものなんだ。悪魔の実なんていわれているけど,花はとってもきれいなんだってさ。」
「え! これは,植物なんですか。」
「そうだよ。ライオンゴロシという名前の植物の実なんだよ。」
「ところで,この植物の名前の由来は,名前のわけはどうなってるんですか?」
「その前に,この植物の実をじいっとよく見てごらん。何か気がつかないかな。」
「先につめのようなものがついていますね。」
「つめがあれば,この前,紹介されたオナモミに似てますね。」
「あ! そうか。分かったぞ!」
「え! オー君。何が分かったの。」
「これは,ひょっとして・・・このライオンゴロシという実は,オナモミと同じように,ほかのものにくっつくんだ。」
「つまり,この実が何かについて,あちこちに運ばれるということですか。」
「そのとおりさ。曲がりくねったトゲの実をうっかりとふんだら,さあたいへん。ライオンがふんだりすると,とれなくなる。また,口で取ろうともがくと,口のまわりについてしまい,食事をとることもできなくなり,やがて死んでしまうのさ。それで,ライオンゴロシという名前がついたというわけなんだよ。」
「へえー。そうなんですか。変わった植物もあるものですね。」
「これからも,いろいろな植物の不思議を勉強していきたいでーす。」
ライオンゴロシのつぶやき・・・おいらは人間生かしなのだ!
いやあー。嬉しいね。日本にはたくさんの小学校があると聞いていたけど,おいらライオンゴロシのことをきちんと説明してくれたのは,国立第七小学校が初めてではないかな。心から感謝申し上げます。ところで,変な植物だし,変な名前だろう。おいらを嫌がるのはライオンだけど,ところがどっこい,人間様の世界では結構モテモテの人気者なんだよ。利用価値が多いということなんだ。具体的にどういうことかというとね,つまり,おいらは薬になる存在なんだな。詳しくいうと,ライオンゴロシは,アフリカの砂漠に住む住民にとっては,数世紀にわたり医薬品として,消化器系の病気から伝染病の幅広い病気や傷の治療に利用されてきたんだ。難しくいうと,塊茎の抽出物には,イントリド配糖体,フィトステロイド,フラボノイドなどが含まれていて,それらは,変性の慢性関節リュウマチ,骨関節症,腱炎,心臓病の治療に効果があると言われているんだ。この塊茎は,地元の住民によって収穫され,収入源にもなっているという話なんだね。現在,その効能は,西洋医学でも利用されて錠剤としても処方されているということなんだってさ。つまり,「ライオン殺し」というよりも「人間生かし」という植物なんだね。