3.動物の世界
(7)ハチ・チョウ・ガ以外の昆虫のなかま
(333)オトシブミのお話 その2
「オトシブミの仲間にはいろいろとあってね,『ゆりかご』の木の種類や作り方,形にはちがいがあるけど,葉っぱを巻いて子育ての『ゆりかご』を作る習性はみんな同じなんだよ。」
「どうやって,『ゆりかご』を作るのですか。」
「次の絵はフッタ博士がかいてくれたもので,とても分かりやすく,この絵を見ただけで分かると思うけど説明するね。」
「なんだかわくわくドキドキしてきたね。」
「まず,メスのオトシブミは,若葉の両側から葉の主脈(まん中にあるたて線のようなもの)に向かって葉を切るんだ。」
「それから,それから・・・。」
「葉の下から足でたれ下がった葉を少しずつ巻いていくんだ。」
「それから,それから・・・。」
「オトシブミの種類によって巻き方はいろいろあるけど,巻いた葉っぱの中に卵を産むというわけさ。」
「それから最後まで巻いて,ポトンッ! と落とすのですね。」
「そのとおりだね。今日,モンタ博士が持ってきたエゴツルクビオトシブミは,『ゆりかご』を落とさずに,そのままつけているんだよ。まあ,いろいろとあるのさ。」
「一匹のオトシブミが,『ゆりかご』を作るのには時間がかかるのでしょうね。」
「よいところに気がついたね。どのくらい時間がかかると思う。」
「ふーむ。分かんない。5分や10分では終わりそうもありませんね。」
「残念ながら見たことないけど,1時間~1時間半かかるそうだよ。」
「へえー。それを一匹のメスがぜんぶやるなんてすごいな。」
「小さな虫の大きな仕事というわけですね。」
「『ゆりかご』の中の卵から幼虫が生まれると,まわりは全部『ごはん』だらけというわけさ。また,敵からは何枚もある葉っぱで守られているんだ。」
「安心して幼虫が大きくなれるから,『ゆりかご』というわけですね。」
「『お弁当箱つきおうち』という意味も分かりました。」
「モンタ博士! オトシブミはお母さんの作ってくれた『ゆりかご』の中で葉っぱを食べてからどのくらいで変化するのですか。」
「卵から孵化した幼虫は,2週間くらいでさなぎになるそうなんだ。」
「それから,成虫になるのですね。」
「そうだね。さなぎから10日ほどで成虫になるというわけさ。『ゆりかご』が腐る前に成育が完了するというわけで,とってもうまくできているんだ。」
「へえー。すごい虫ですね。」
「幼虫が一匹育つのに十分なエサがあり,敵から卵や幼虫を隠すための『おうち』なんですね。オトシブミって,本当にすごい虫ですね。」
「さっき説明不足だったけど,葉っぱの両側から切っていくと言ったけど,この時,葉っぱをふにゃふにゃさせて巻きやすくするために,主脈にも傷を入れて水分の通りを止めるそうなんだ。また,乾燥から守るために,『ゆりかご』を何重にも巻いてあるというのもすごいね。さらに,他の虫によって,ゆりかご』にちょっとでも穴を開けられたら,幼虫はその穴を自分のウンチでふたをしてしまうというから,ますますすごい虫だね。」
「小さな虫が大きな仕事をするんですね。本物を見てみたいです。」
「自分でもオトシブミが大きくなるのを観察してみたいです。」
「モンタ博士も成虫まで育てたことがないんだ。それで,校長室前に置いとくから見てごらん。『ゆりかご』のあまりもあるから,ほしい人にあげるね。どんどん取りにおいで。待ってまーす。」