3.動物の世界
(2)動物の体のつくりとはたらき
(319)シカの角
「うわあー! 何だこれ? がいこつと角があるぞ!」
「キャー! こわい!」
「ごめんごめん。こわいと思う人は,もう見ないでください。ごめんなさい。」
「モンタ博士! これは何ですか。」
「これはね,モンタ博士の宝物なんだ。シカの頭の骨と角だよ。」
「モンタ博士! 本物ですか。」
「もちろん本物だよ。すごいだろう。」
「モンタ博士! シカって,山にいるシカですね。でも,どうしてモンタ博士が持っているのですか。教えてください。」
「よく聞いてくれたね。このシカは,伊豆半島に植物採集に行った時に,見つけて拾ってきたのさ。」
「見つけた? 拾ってきた?」
「そうだよ。モンタ博士はね,あちこちに植物採集に行くけど,道のない藪のような所でもどんどん行くんだよ。その時,このシカを見つけたのさ。」
「シカってそんなにいるんですか。」
「シカはね,あちこちの山でたくさん増えていて,山の木や草をどんどん食べてしまって,困っているそうなんだ。このシカも駆逐されたものだろうね。」
「シカって,どういう動物なんですか。どうしてシカには角があるのですか。」
「いい質問だね。どうしてか? なぜか? と興味や関心をもつことはとても大切だね。オー君は,動物について物知りだから知っているかな。」
「図書室の本に書いてあったけど,シカの角って毎年生え変わるそうなんだ。」
「さすがオー君。よく知っているね。それからそれから・・・。」
「まず,シカの角はオスだけのものなんだ。季節によってどう伸びるかというと,シカの角は,大きな角でも4月にはみんな落ちてしまうんだ。」
「そのあとはどうなるの。」
「すぐ新しい角が生え,生きた角には血が通っててどんどん大きくなるのさ。」
「へえー。そんなにどんどん大きくなるんだ。おどろきですね。それから・・・。」
「8月には血が止まり,硬いりっぱな角になるんだ。」
「ふーん。どうやって大きくなるかは分かったけど,なぜ角が必要なの。」
「秋になると,オスはメスを独り占めしようとするけど,他にもメスを求めてやってくるオスがいるでしょ。そうすると,オスたちは角を使って戦うんだ。」
「つまり,戦うための武器というわけですね。」
「そうだね。負けると逃げないといけないし,メスはりっぱな角をもったオスを選ぶというわけさ。男はつらいよ。」
「なるほど。オスも角や体の大きさを見てみて,自分より強いかどうかをみきわめるということですね。」
「りっぱな角をもつオスほど強く,たくさんの子供を残すことができるわけさ。」
「オスのシカにとって,角はとても大切なものなんですね。」
「つまり,メスにモテるためのものなんだよ。ライオンのたてがみ,クジャクのきれいな羽,セイウチの牙などは,生きていくうえでむだになることもある。でも,メスにモテるために必要なものなんだ。どんな形,大きさ,長さなのかを動物園で確かめてみるのも楽しいよ。」
「そのとおりですね。初めはこわいと思ってていましたが,じっくりと見たり考
えたりすることが大切なんですね。もっといろいろと知りたくなりました。」
「ぼくももっともっと知りたくなりました。何か他にはもっていないのですか。」
「よく聞いてくれたね。それでは,モンタ博士のもう一つの宝物である『カモシカ』も見せてあげよう。それではまた今度ね。お楽しみに!」