1.身近な自然の観察
(7)気象現象
(302)台風の特異日
「はい,みなさん。今日9月26日は何の日でしょうか?」
「え? だれかのお誕生日かしら?」
「うん,ちょっと惜しいかな。マリー,アイダ,ヴェラの三人に関係あるんだけど・・・,“台風のとくい日”なんだよ。」
「ますます分かりませんよ! どうして女の人たちが台風を得意なんですか???」
「それは台風が日本を襲う『特異日』ですね。あることが前後の日よりも偶然とは思えない高い確率で起こる日をそう呼ぶんですよ。」
「今年はおだやかでよかったわ。」
「昔はアメリカのグアム観測所で,台風に女性の名前を付けていたんだね。ここに調べたものがあるから見てみよう。ただし,ショックが大きいかも・・・。」
「まずマリー(Marie)。これは昭和29 (1954)年15号の『洞爺丸台風』で,青森と函館を結ぶ青函連絡船が5隻沈没,他も合わせ1761名の犠牲者が出た。」
「9月26日に鹿児島に上陸して,その日のうちに北海道まで行っているわ! 日本海を時速100kmですって!」
「戦争を除くと,あの『タイタニック号』の次の次,世界で3番目の海難事故だって。でも,それが青函トンネルの実現を早めたってさ。」
「アイダ(Ida)は昭和33(1958)年22号の『狩野川台風』で,伊豆半島中心に犠牲者1269名。大雨で東京も大変だったそうだ。」
「地図を見るとよく分かります。伊豆の雨は真ん中の狩野川に集中するんだ。それで放水路を造ったんですね。」
「ヴェラ(Vera)は昭和34 (1959)年15号の『伊勢湾台風』,犠牲者5098名。豪雨と高潮で堤防が壊れて,日本のあちこちも水害になったんだ。秋田県沖で一度中心が消え,青森に再び現れるジャンプ現象を起こしたそうだよ。」
「高潮が川を逆流したり,貯木場の大きな材木が流されて次々に家を壊したりしたって書いてあるわ。経済的被害は東日本大震災に並ぶかもって。」
「まわりには高台がない,停電でラジオは使えない・・・,昔は避難するための情報が少な過ぎたんですね。このあと乾電池のラジオが広まったって。」
「国立つながりでいくと,山口百恵さんのTVドラマ『赤い運命』が伊勢湾台風に関係しているよ。」
「ふつうは『台風〇号』って数字で呼ぶけど,大きな被害が出ると特別な名前がつくんですね。」
「今はアジアの『台風委員会』で14の国や地域が10個ずつ名前を出してリストを作っている。発生順に名付けていき,翌シーズンはその続きから始めるんだ。このあいだの台風18号は『タリム(鋭い刃先)』だった。」
「神様とか伝説の勇者とかはパワーがありそう。日本は星座の名前なんですね。でも『こぐま台風』じゃちょっと・・・。日本では地震に関係する『ナマズ』もありますね。あれ,『プリン』に『タンポポ』だって!」
「『バラ』は3か国が付けているのね。花の形が台風に似ているのかな? それとも危ないとげがあるからかしら?」