3.動物の世界
(5)ハチのなかま
(265)ハチのひみつの世界 15 「スズメバチ(1)」
「ねえ,花ちゃん。今までいろいろな狩りバチのお話を聞いてきたね。」
「そうですね。今までハチなんてこわくて大きらいでしたが,いろいろとお話を聞いているうちに,ハチの世界って,おもしろいなと感じるようになりました。」
「さあ,今日はいよいよスズメバチの登場だよ。」
「モンタ博士,スズメバチはアシナガバチによく似ているそうですね。」
「そうだね。ふつうハチというと,みんなスズメバチやアシナガバチを思いうかべるし,生活のしかたも似ていて,4月か5月に親になるメスバチが冬眠からさめるんだ。」
「そして,木や草の繊維をつばといっしょにこねこねして巣を作るんですね。」
「スズメバチは,アシナガバチと同じように,昆虫を狩ったり花の蜜に来たりするけど,その他にクモやコガネムシ,カミキリムシなどの小さな動物をおそったり,樹液なども集めたりするんだ。」
「巣のつくりや大きさもずいぶんとちがうんでしょ。」
「そうだよ。写真をよく見てごらん。何か気がつくかな。」
「スズメバチは大きな巣になるんですね。」
「スズメバチは数千この大集団になるそうだよ。シダクロスズメバチでは,18000この部屋のものもあったそうなんだ。」
「どうしてそんなに大きくなるんだろう。」
「まず,アシナガバチのように一つの段では足りないんだ。」
「それで,下側につぎ足して何段もつなぎ合わせるということですね。」
「そうだよ。5段6段,多いものでは10段以上も重ねた巣を作るんだ。」
「それだけではないんだ。それらの
全体をすっぽりとつつむようなおおいを
外側に
作るのさ。」
「なーるほど。それで,まったくちがった巣に見えるのですね。」
「でもね,その巣の作り方は,前にお話ししたようにどちらも同じなんだよ。」
「ところで,私はモンタ博士の『ハチのひみつシリーズ』を聞いてから,少しはハチが好きになりましたが,みんなスズメバチのことはこわがっていますね。そして,とっても悪いやつで,いないほうがいいと思っている人がいますが,そういう人にはどうやって説明してあげればいいのですか。」
「なるほど,とてもいい質問だね。モンタ博士がハチのお話を始めるときに何と言ったかおぼえているかな。」
「モンタ博士は,ハチ弁護人になるって,言ってましたね。」
「そうだね。スズメバチというと,とても凶暴で,こわくて,悪者あつかいされてしまうよね。」
「スズメバチを見たら,すぐに殺してしまえという人もいますね。」
「モンタ博士も,何年か前にひざのところをスズメバチにさされたことがあるんだ。とてもいたく青くはれあがって,足が曲がらなくなったこともあったね。でも,すぐにやっつけてしまったり,全滅させたりしていいのかな。」
「こわいからって,やっつけてしまったら,自然のバランスをくずしてしまうんでしょ。」
「自然のバランス,なるほど,いい言葉を知っているね。つまり,むずかしい言葉でいうと,生態系をたもつということだね。それに,農業や林業に被害を出す害虫をたくさん食べてくれるなど,とても大切な役割も持っているんだ。」
「つまり,スズメバチだけではありませんが,正しい知識を持つことが大切ということですね。」
「ところで,モンタ博士。下の写真はハチの巣ですね。」
「そうだよ。左がオオスズメバチ,右がキイロスズメバチさ。」
「うわあー大きい。オオスズメバチの巣は,直径2cmくらいありますね。」
なぜ人を刺すのだろう?
スズメバチを見ると,すぐに刺されると思い,パニックになる人が多いのですが,スズメバチが人を刺すのは,危険を感じて自分たちの巣を守るためです。刺されないようにと人間も必死ですが,刺すスズメバチも敵から自分たちの家族を守るために命がけなのです。ですから,食べものを探しに1匹・2匹と飛んでいる時などは,こちらから手を出さないかぎり襲ってくることはまずありません。もしも,巣の近くに行ってしまった場合には,大騒ぎしないで,静かにその場から離れるようにしましょう。