3.動物の世界
(5)ハチのなかま
(256)ハチのひみつの世界 6 「ベッコウバチ」
「モンタ博士,上の絵は何というハチですか。ひげの先が丸まっているわ。」
「これはね,ベッコウバチという種類だよ。このなかまは,クモをつかまえるんだ。」
「つまり,クモハンターというわけですね。」
「すごいですね。でも,クモってねばる糸や毒のあるきばで,昆虫をとらえて食べる虫でしょ。そんなクモをつかまえるんだから,ベッコウバチってすごいんですね。」
「ねえ,花ちゃん。クモはね,昆虫とはいえないんだ。クモと昆虫のちがいを表にまとめてみたよ。何かの参考になるといいけどね。」
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体のつくり |
体の節 |
足の数 |
羽 |
糸 |
触角 |
目 |
クモ |
頭・胸・腹 |
節なし |
8本 |
ない |
糸を出さず |
触肢あり |
複眼なし・個眼8個 |
昆虫 |
頭・胸・腹 |
節あり |
6本 |
ある |
幼虫で出す 場合もある |
触角あり |
複眼2個・個眼3個 |
「うわあー,オー君。すごーい! えらーい!」
「ところで,モンタ博士。ベッコウバチって,どうしてその名前がついたの。」
「そうだね。それはね,羽の色がべっ甲色をしているからなんだ。」
「べっこうって,何ですか。」
「べっ甲というのはね,ウミガメのタイマイというカメのこうらで作ったもので,くしやめがねなどのふちを作ったりするもんだよ。」
「ところで,モンタ博士,ベッコウバチはどうやってクモをやっつけるのかな。」
「例えばね,キオビベッコウというハチは,コガネグモの巣を見つけると,体当たりして地面に落としてしまうんだ。」
「へえー,すごいね。一度見てみたいな。そして,それから・・・。」
「それから,クモの背中に馬乗りになって,毒針をクモの足のつけ根の胸元にブスリとさすんだよ。」
「麻酔して,動けなくするんですね。ジガバチと同じですね。」
「そうだね。幼虫の食べ物として長く使用するためで,仮死状態にして,いつも新鮮なえさとすることができるんだ。」
「それから・・・。」
「それから,自分のお気に入りの場所をえらび,ジガバチと同じように土の中に巣を作るんだ。そして,えもののクモを運びこみ,たまごを1こ産みつけるのさ。それでおしまいさ。」
「それで,終わりなんですか。他に気をつけることはないの。」
「そうだね。ベッコウバチはとてもきちょうめんで,おなかをハンマーのようにして何度も地面に打ち付けてかためて,元のように平らにするそうだよ。」
「そうか。穴がどこにあるか分からなくするのは,敵からのがれるためですね。」
「よく見ないと,どこに巣穴があったか分からないくらいだそうだ。」
環境のバロメーター
ベッコウバチなどの狩りバチが生きていくためには,そのえさとなるクモなどが豊富に存在することが条件です。また,狩りバチは地面に巣を作ることが多いので,巣を作る環境も豊富になくてはなりません。狩りバチの生息環境には,クモの他にガやチョウの幼虫や,キリギリスのなかまなどが生きていることも必要です。狩りバチの種類や個体数が多い場所というのは,生き物が豊富で,多様な環境が存在するということです。みなさんのおうちの近くには,どんな狩りバチがいるでしょうか。調べてみると楽しいでしょう。